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2015年金正恩新年辞の特徴

コリア国際研究所所長 朴斗鎮

2015.1.7

 北朝鮮の金正恩第1書記は1月1日、恒例の新年辞を発表した。
 いつものことではあるが、前年の成果についての具体的数字は何も示されなかった。成果の表現は「強固になった」、「強化された」、「しっかりと固められた」、「大きな前進を遂げた」、「展望を切り開いた」、「栄誉を輝かせた」などの修飾語のオンパレードであった。
 また今年の「課題」についても過去の政策との連続性を明かさないまま、「なければならない」の羅列に終始した。
 対韓国提案にしても、「最高位級会談も開催できない理由はない」と思わせぶりな表現で気を引こうとしているが、中身を見れば手前勝手な主張で一貫している。
 こうした内容のうすい金正恩「新年辞」であるが、昨年に比べればいくつかの特徴が目につく。
 特徴の第1は、党と軍の強化を経済問題よりも先に言及し強調していることだ。
 昨年は、経済課題の後に党と軍の問題が言及され、どちらかと言えば、経済課題の解決のために党の強化と軍の強化が強調された。
 今回党と軍の強化が先に言及された第1の理由は、今年10月が朝鮮労働党70周年であることと関係する。
 一部では1980年の第6回大会以降35年間開かれていなかった朝鮮労働党大会を開くためではないかとの分析もある。この場合、党大会開催は党の規約によって開催6カ月前に告知することになっているので、開催があるとすれば4月10日までに通知されるはずだ。しかし、現在の状況から見てその可能性はきわめて低いと思われる。
 第2の理由は、張成沢粛清の後遺症とのからみだ。
 一昨年12月に義理の叔父である張成沢を粛清し、昨年3月の最高人民会議代議員選挙とそれに続く4月の党政治局拡大会議および最高人民会議でこの問題で一応の決着をつけたが、組織指導部の調査・検閲が進む過程でその根が予想以上に深いことが判明した。そうしたことから金正恩は昨年8月に急きょ「張成沢残党狩り第2段階の極秘指令」を出した。内部からの情報によると「3年間で張成沢の”影”を徹底的に消せ」と指示したという。粛清作業は第3段階以降もありうる状況となっている。
 第3の理由は、検閲過程で党の腐敗が想像以上に進み、思想的緩みが明らかになったことだ。
 最近の情報によると、張成沢粛清の直前に金正恩に随行して「三池淵五人組」と騒がれた一人である国防委員会設計局長の馬元(園)春(中将)が11月に入って粛清されたという。昨年11月以降の金正恩随行からは姿を消している。今のところ理由は明らかにされていないが、建設がらみで何らかの不正があったものとみられる。
 こうしたことから、今年の新年辞では、「党の唯一的指導体系を確立する活動を絶えず深化させて、全党が党中央と思想も呼吸も歩みもともにするようにしなければなりません。すべての党組織は、党の路線と政策の貫徹を党活動の基本としてとらえ、党の政策をどれも取り落とすことなく無条件にあくまで貫徹しなければなりません」と党の唯一的領導体系確立が強調され、「思想活動を攻撃的に展開して、朝鮮革命の思想的陣地を鉄桶のように打ち固めていくべきです。偉大性教育と金正日的愛国主義教育、信念教育、反帝・階級教育、道徳教育を強化して、すべての党員と軍人、勤労者を先軍革命闘士に鍛えあげ、祖国防衛と強盛国家建設の各戦闘場で愛国衷情の炎が燃え上がり、創造と革新の熱風が巻き起こるようにすべきです」と思想教育が強調されている。
 特徴の第2は、今年の解放70周年に際して、南北関係を再び「6・15共同宣言」と「10・4首脳宣言」の状況に引き戻そうとしていることだ。
 2015年金正恩新年辞に対する内外の大方の評価は、「党と軍の強化問題」を飛ばして「南北関係に力を注いだ」ことに集中している。「統一」という単語を18回使い、分量も全体1万504字のうち2007字となる5分の1を南北問題に割いたからであろう。また「南北最高位級(首脳?)会談も開催できない理由はない」と言及されたことや「体制統一を追求してはならない」という文言が目新しく映ったからかもしれない。しかしこうした見方自体がすでに北朝鮮の宣伝戦に巻き込まれているものと言える。
 まず南北最高位級(首脳?)会談の言及についてであるが、この発言には前提条件がついている。それは、米韓合同軍事演習を中止することと、韓国の太陽政策時代に合意された「6・15共同宣言」(2000年)と「10・4首脳宣言」(2007年)に立ち戻れという条件だ。
 韓国と国際社会が最も関心を寄せる「核とミサイル問題」に対しては話し合おうとせず、また「金剛山での女性観光客の射殺」や「天安艦の撃沈」、「延坪島砲撃」などの犯罪行為に対する謝罪も行わず、やれ軍事演習をやめろ、やれ「6・15宣言」を実行しろと自分たちの都合のよい主張だけを行っている。こうした一方的主張を韓国側がそのまま受け入れられるはずがない。韓国側の「拒否」を誘うための「提案」ではないかと疑心暗鬼となるのは当然だ。
 その証拠に新年辞では南北関係が行き詰まった責任を韓国側に押しつけ、「昨年、私たちは南北関係の改善と祖国統一のための重大提案を出して、その実現のために誠意ある努力を尽くしたが、内外の反統一勢力の妨害策動で相応の結実を結ぶことができず、南北関係はかえって悪化の道へと突き進んだ。相手方の体制を冒とくし、あちこち尋ね歩いては同族を陥れる不純な頼み事のようなまねは止めなければならない」と主張している。
 また一部で騒がれている「体制統一を追求してはならない」との言及であるが、これも目新しいものではない。
 金正恩は「われわれは人民大衆中心の朝鮮式社会主義体制が最もすぐれたものであっても、決してそれを南朝鮮に強要せず、強要したこともありません」と主張しているが、金日成時代の「連邦制統一案」でもそう主張され、金正日時代の「6・15宣言」でもそのように主張して金大中と合意している。しかしこれが「北朝鮮による吸収統一」をカモフラージュする「主張」であることは、北朝鮮専門家であればすでに誰もが知るところとなっている。
 北朝鮮が心底から「南朝鮮に北朝鮮の体制を強要しない」というのであれば、朝鮮労働党の「南朝鮮革命と統一」に関する該当規約を削除すべきであり、また「(体制)を強要したこともありません」というのであれば、北朝鮮が引き起こしたことが明確となっている「朝鮮戦争」についての説明もなければならない。あまりにもとぼけた主張である。
 北朝鮮が何か目新しく映る表現で南北関係改善ポーズを示し、何としてでも「6・15宣言」状態に戻そうとしている背景には、昨年末の韓国統合進歩党の解散が関係している。韓国内「従北勢力」の立て直しには、ある程度の和解雰囲気と時間が必要であるからだ。新年辞ではこのことは一切言及されていないが、統合進歩党解散の衝撃は極めて大きかったといえる。
 こうしたことから、金正恩提案について韓国政府も一応は歓迎しつつも慎重な姿勢を見せている。韓国統一部の林丙哲(イム・ビョンチョル)報道官は1月2日の定例会見で、北朝鮮に対し、「南北関係改善の意志があるなら、条件を付けずに対話に応じるべきだ」と促した。
 朴槿恵大統領も2日大統領府で開催された新年会で、北朝鮮の金正恩第1書記が新年の辞で南北最高位級会談開催に前向きな姿勢を示したことに対し、北朝鮮が「当局者会談を通じ十分論議する過程も経ずに結果だけを得ようとしているようにみえる」と述べ慎重な姿勢を見せた。また6日行われた閣議でも「現時点で重要なのは北が南北関係発展に対する誠実さと実践の意志を行動で見せること」と述べた。
 米国の評価はもっと厳しい。ブルッキングス研究所のジョナサン・ポラック・シニアフェローは「金正恩第1書記の提案は、人権や北朝鮮の核問題に対する国際的関心をかわそうという狙いがある」と語り、デニス・ハルフィン元連邦議会下院外交委上級専門スタッフは「国際的孤立から抜け出すための提案」と語った。ジョンズ・ホプキンス大学米韓研究所のジョエル・ウィット訪問研究員は「朴槿恵大統領を圧迫して韓米を引き離そうとする狙いがある」と分析した。戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ・シニアアドバイザーは「具体的な提案がなく、まだ慎重に見守るべき」と語り、外交問題評議会(CFR)のスコット・スナイダー・シニアフェローは「北朝鮮が掲げる韓米合同軍事演習中止のような前提条件は、受け入れ難いレベル」と評価した(朝鮮日報日本語版2015/01/03 09:57)。
 特徴の第3は、国際社会の「人権圧迫」に危機感を抱いていることだ。
 金正恩は、国際社会が北朝鮮の人権問題で圧迫してくることに対する不満を強く表わした。彼は「米国とその追従勢力は、われわれの自衛的な核抑制力を破壊し、わが共和国を力で圧殺しようとする意図が実現できなくなると、卑劣な“人権”騒ぎに取りすがっている」と非難した。それと共に「米国は時代錯誤の対朝鮮敵視政策と無分別な侵略策動に固執せずに、大胆に政策転換をすべき」とも主張した。
 そして対抗策として核開発の威嚇を加えた。金正恩は「今日の現実は、われわれが先軍の旗を高く掲げて核抑止力を中軸とする自衛の国防力を強固に固め、国の生命である国権を揺るぎなく守ってきたことがいかに正当であったかを如実に示している」と語り、「われわれの社会主義制度を圧殺しようとする敵の策動が続く限り、先軍政治と並進路線を変わることなく堅持する」とした。
 北朝鮮では、金正日時代に核問題の次が「人権問題」だと想定していた。しかし国際社会は核問題解決とともに「北朝鮮人権問題」を強く推し進めている。それも金正恩の「人道に対する罪」を含めての追求である。これは北朝鮮にとって完全に想定外の事態と言える。

*          *          *

 北朝鮮は今、内も外も出口が見えない閉塞状態にある。張成沢の「残党狩り」で内部のごたごたは続いており、崩壊して久しい庶民経済は北朝鮮政権の統制から外れている。核問題に加えて人権問題も世界の懸案として浮上している。さらに中国との関係悪化による摩擦は日ごとに強まり国際社会での孤立もこれまでで最悪だ。北朝鮮は、突破口を日本やロシアにも求めているが先行きは不透明である。
 ただ追い込まれているとはいえ、北朝鮮による韓国への働きかけは善意に基づくものではない。あくまで北朝鮮主導の「朝鮮半島統一」を狙った働きかけだ。体制の立て直しと韓国内陣地の再構築を狙っている。
 この過程でうまくいけば韓国から支援を得て、その上で韓米中日を中心とした国際社会からの制裁にくさびを打ち込もうとしている。
 この狙いを逆利用して北朝鮮をいかにして非核化の道に誘導するかは韓国及び米国をはじめとした国際社会の力量にかかっている。

以上

 
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