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北朝鮮軍事挑発縮小の背景

北朝鮮研究室

2015.4.13

 米韓合同軍事演習に対抗する北朝鮮の軍事挑発が、2013年の狂乱的挑発以降年々縮小している。今年は、過激な「口撃」も少なくなっているようだ。この状況は、解放70周年と党創建70周年の大イベントの準備に追われていることや、対外関係改善の思惑のためとの見方もできるが、金正恩体制の疲弊がもたらしたものと見るのが妥当であろう。
 北朝鮮は4月9日、最高人民会議第13期第3回会議を開いたが、金第1書記は昨年9月の前回会議に続き今回も欠席した。経済改革での前進がなかったからである。経済再生の「起爆剤」と騒がれた「経済管理改革」も様々な矛盾を抱えて迷走しているようだ。今回会議での「内閣報告書」にも「経済管理改革」についての言及はなかった。北朝鮮経済は映像で見せている姿とは裏腹に相当厳しい状況に置かれているようだ。

1、米韓軍事演習に対抗するロケット・ミサイル発射比較(2014年と2015年)

 軍事挑発の縮小傾向は、韓米軍事演習「キーリゾルフ」と「フォールイーグル」に対抗するミサイル・ロケット発射数の減少傾向に端的に示されている。2月と3月の発射数を比べると、昨年の90発から今年は26発に激減している。
 昨年と今年を比較した発射数は以下の通り。

2014年
2月
2月21日:300ミリの新型ロケット砲4発発射 
2月27日:スカッド系列と推定される短距離弾道ミサイル4発発射
3月
3月3日:「スカッドB」か「スカッドER」と推定される弾道ミサイル2発発射
3月4日:300ミリ新型ロケット砲とみられる短距離発射体4発、240ミリロケット砲と推定される短距離発射体3発発射
3月16日:地対地ロケット「フロッグ」と推定される発射体25発発射
3月22日:「フロッグ」と推定される発射体30発発射
3月23日:「フロッグ」と推定される発射体16発発射
3月26日:「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイル2発発射
計90発

2015年
2月
2月6日 射程距離100kmを超えるKNK型 4発
2月8日 射程距離200km 5発 東海向け発射
2月20日 射程距離80~95km シルクワーム 1発 南浦から西海へ
3月
3月2日 射程500kmスカッド 2発 南浦付近から東海に向けて発射
3月12日 地対空ミサイル 7発 咸鏡南道宣徳付近から東海へ
4月
4月2日 2日午前10時半ごろにも、同種の飛翔体1発を発射したというが、飛行距離や発射状況など詳細は不明。
4月3日 韓国軍の合同参謀本部は3日、北朝鮮が2、3両日に北西部東倉里(トンチャンリ)付近からミサイルとみられる飛翔体計5発を発射したと明らかにした。
4月7日、黄海側に向け地対空ミサイル「KN06」2発を発射。約100キロ飛行
計26発

2、軍事挑発縮小の背景1-電力不足の深刻化

軍事挑発縮小の背景としては、さまざまな要因が考えられるが、金正恩第1書記が打ち出した諸施策の矛盾が経済的困窮を加速させているからと思われる。特に深刻なのは昨年来の電力不足である。電力不足は住民生活と産業活動に打撃を与えている。

1)干ばつと施設の老朽化による深刻な電力不足

 北朝鮮内部からの情報では、昨年来の干ばつとこれまでのダム工事の手抜きによる水漏れによって、熙川発電所をはじめとした6ケ所の水力発電所が干上がっており、発電・送電設備の老朽化も重なり電力不足が深刻化している。
 北朝鮮の電力生産は、おおよそ水力が60%(約135万Kw/h)、火力が40%(約85万Kw/h)となっている。そのため水力発電による電力供給の悪化は、産業に決定的影響を与える。水力発電の減少を補うために火力発電をフル稼働しているが、電力不足によって燃料となる石炭の産出が低下し、火力発電もピンチに陥るという悪循環に見舞われている。それにも関わらず、金日成・金正日の三万数千ケ所の銅像とリニュアールされた平壌をライトアップするために莫大な電力が浪費されている。もちろん軍需工業分野にも優先的に電力が供給されている。
 現在、平壌のホテルですら1日10回以上停電が起こり、トロリーバスの運行だけでなく地方への鉄道の運行もままならなくなっている。当局は仕方なく戦時用のディーゼル機関車を臨時に投入しているが、貴重な戦略物資である石油資源を消費するために軍事力維持にも影響を及ぼしている。そればかりか毎年1月1日は「新年辞」の放送があるために昼夜に関係なく1日中電気が供給されていたが、今年1月1日の昼時間は、金正恩が演説する1時間だけ供給するという状況となった。

2)電力不足を認めた労働新聞

 電力不足については北朝鮮当局も認めている。 昨年11月7日の労働新聞は「国全体が立ち上がり水確保の戦いを力強く繰り広げよう」と題した社説で以下のように述べている。
 「ここ100年で今年ほど降水量の少なかった年はなかった」「その結果、水力発電所の発電量が減少。多くの農業用貯水池が干上がり、貯水量が少なく、来年の農業に使う水が絶対的に不足している状態だ」
 電力不足を認めているにも関わらず、首都・平壌ではイルミネーションなど見栄えを良くするために大量の電力が浪費されている。農場員の不平・不満の声が出てもおかしくはない。

3)「北の誇り」西海閘門も電力難で稼働停止

 朝鮮半島の西海岸は干満の差が激しい。大型船舶の停泊が難しく産業発展の阻害要因となっていた。この問題を解決し干拓地を広げるために、金日成は1981年から6年の歳月と莫大な費用と犠牲(10万人の軍人が犠牲になったと言われている)を払って西海閘門を完成させた。
 そんな西海閘門が深刻な電力難で稼働を停止したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が1月7日報道した。
 南浦に近い黄海北道(ファンヘブクト)松林(ソンリム)が故郷の華僑内部情報筋は、RFAに対して次のように述べた。
 「西海閘門が北朝鮮の深刻な電力難で10月下旬から稼働を停止したと、松林から中国にいる私を訪ねて来た親戚に聞いた」「閘門の内側の水が排水されずに腐って悪臭が漂っている」
 別の平安南道の内部情報筋は「西海閘門が動かないと、そこから大同江を少しさかのぼったところにある松林港も影響を受ける」と語った。
 昨年春の少雨で水力発電所の稼働率が低下したために深刻な電力難に陥っている北朝鮮。一般庶民の生活はもちろん、鉱山や鉄道といった国の基幹施設も稼働停止を余儀なくされているが、西海閘門の停止は電力難がいかに深刻であるかを物語っている。

3、軍事挑発縮小の背景2-農業分野に軍を大挙動員

 今年の北朝鮮は電力不足が重なることで例年より農業分野の人手不足は著しい。そうしたことから軍の大挙動員が必要となっている。このことも軍事挑発を縮小させる大きな要因となっている。

1)昨年の農作業は電力難でままならず

 干ばつの影響によって水力発電所が十分に稼働せず、昨年は農作業にも悪影響を及ぼした。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋は昨年秋「稲の収穫期を前にして協同農場に電気が優先供給されているが、電圧が低いためモーターがまともに回らない。稲の脱穀すら満足に出来ない状態」と伝えてきた。
 北朝鮮で一般的に使用される脱穀機用の電動機は220Vだが、供給されている電力は120〜130Vで故障するケースがある。修理には約1週間かかり、脱穀のタイミングを逃して稲が放置されて痛むなどの被害も出たという。
 農場員たちからは、「国からの電力はないのと同じだ」という不満の声が聞こえてくる(デイリーNK2014年11月11日)。

2)食糧を増産に向け軍を大挙動員

 北朝鮮は毎年金正日の誕生日を境に季節を「春」と決め(金正日の誕生日が冬ではサマにならないから)農作業の準備に入る。そして堆肥戦闘が始まり、苗作り戦闘、田植え戦闘、雑草取り戦闘へと続いていく。そこにまたその年の課題遂行の100日戦闘、200日戦闘などが入るので北朝鮮の農村は新年から1年中戦闘なのだが、4月、5月になると春窮期が重なるために特に厳しくなる。食べるものが途切れ、保存していた種モミまで食べつくす農家も出てくる。
 こうした状況でも今年は解放70周年、党創建70周年が重なるために、何としてでも食糧を増産しなければならない年である。そうしなければ地方の人たちにまで臨時の配給もできないからだ。いま北朝鮮当局は必死だ。食糧増産のために例年よりも多くの軍を動員している。戦争挑発どころではなくなっているのだ。

3)朝鮮総連にも緊急指令、電力・農業機器製造の資金送れ

 今年の3月、朝鮮総連は北朝鮮の金正恩第1書記の緊急指示を受け、北朝鮮向けの農業用揚水ポンプ1500台分の資金を集めた。北朝鮮への輸出入を全面禁止する日本政府独自の経済制裁に抵触するのを避け、北朝鮮に送金した上で現地での製造を行う。製造するのは、北朝鮮と総連傘下企業との合弁会社「金剛原動機」(元山市)だ。同社は、経済産業省から大量破壊兵器の開発懸念が払拭されない外国企業としてリストアップされている
 この資金徴収のために専従活動家一人当たり1万円が強制徴収され、各県本部に割り当て金が指示された。そのために内部では不満がくすぶっており、地方の商工会長の中には辞任をほのめかす人も出ている。

 北朝鮮が今年食糧の増産を図れなかった時、また昨年のように水不足が続き水力発電が正常に戻らなかった時、朝鮮労働党70周年イベントは思惑通り進まず、金正恩第1書記の権威は大きく傷付くであろう。そうなれば、またもや誰かに責任をかぶせなければならなくなり、第2の張成沢事件が起こる可能性もある。
 北朝鮮の運命は、ひとえに天候にかかっているといっても過言ではない。天が見放したその時が金正恩政権の転換点となる

以上

 
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