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米国の北朝鮮圧迫本格化
金正日、‘通中用南’戦術で対抗か

2006.4.8

米国は北朝鮮の主要金融取引先だったマカオの銀行 ‘バンコデルタアジア’(Banco Delta Asia― BDA)を‘資金洗浄(マネ−ロンダリング)憂慮対象’と発表して取引を停止したが、それに次いで今度は北朝鮮という国家自体を‘資金洗浄憂慮対象’として発表しようとしている。
去年 9月米国の BDA 取り締まり発表は、枝葉を取り締まったに過ぎず、幹である北朝鮮政権に着手するのは時間の問題と見られていた。米政府当局者が BDA 取り締まりを通じて警告を発したにも関わらず、その間、北朝鮮政権が改善の動きを見せていないため、いよいよ北朝鮮国家への取り締まりが日程に上りつつある。
それでは、米国が北朝鮮を‘資金洗浄憂慮対象’と発表する法的根拠は何であり、それが実施されれば北朝鮮にいかなる影響が及ぶのか?

米国の対北朝鮮金融取り締まりの法的根拠

米国の対北朝鮮金融取り締まりの法的根拠は‘愛国法(Patriot Act) 311条 5項’によるものだ。
では米国の‘愛国法’とはいかなる法律か?
‘愛国法’はテロに対処するための総合対策を盛った法律であるが、1970年に制定され 2001年 9・11テロの後、40余日余りで改正された法律だ。当時は状況が状況であっただけに‘戦時特別法’と言えるほど強力な内容が盛り込まれている。
‘愛国法’は、テロを防止するため捜査・情報機関に広範な権限を与えている。テロ謀議と疑われる通話を盗聴することはもちろん、口座追跡や医療記録、はなはだしくは米国全域の図書館の貸し出し記録まで調査することができる。このために人権侵害論議と違憲論議まであった。
この法は4年效力の時限法で、昨年末に效力が終えるようになっていた。しかしホワイトハウスは “テロとの戦争がまだ終わっていない”との理由でこの法律の無期限延長を主張した。そして上下院で延長を骨子にした改正案の是非をピンポンゲームのように論議して来た。その結果やっと議会を通過したのだが、去る 3月 9日ブッシュ大統領が法案に署名することで愛国法一部条項が永久化された。

‘愛国法 311条’はテロリストの ‘資金源’遮断が目的

愛国法第3章は金融分野の対テロ戦略を盛っている。テロを防止のため、疑わしい金融取引を摘発、対処することでテロリストたちの‘金づる’を断とうというものだ。
第3章では “国際的な資金洗浄と金融テロリズムを防止、発見、起訴するために銀行秘密法(BSA)の資金洗浄防止条項を改正する”と明記している。これが最近対北朝鮮金融取り締まりの根拠となっていている‘愛国法 311条’だ。
この法によれば米財務部長官は、金融犯罪取り締まりネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network)を組織して、特定金融機関や国家を‘資金洗浄憂慮対象’として指定し、これを公布できることになっている。 その‘憂慮対象’として‘バンコデルタアジア(BDA)’が指定されているわけだ。BDAは北朝鮮の主要取引先だから BDA 取り締まりはすなわち対北朝鮮金融取り締まりの一環となる。

国家が‘憂慮対象’となれば国際金融取引は不可能

最近米国は BDAに続き北朝鮮という国家自体を愛国法による ‘資金洗浄憂慮対象’に指定しようとしている。特定国家が‘資金洗浄憂慮対象’に指定されると金融機関が指定された時とまったく同じような取締りを受ける。
実は‘愛国法 311条’には ▲憂慮対象を指定し、▲彼らの行為に対する情報を提供、▲資金洗浄が憂慮される対象から米国の金融機関を保護することができるとなっているのだ。しかし具体的にどのような措置を取るかは明らかにされていない。ただ第5項に “特別対策を講じることを要求する”となっているが、これは通常別途の行政命令によって提示される。
去年 9月米国政府は連邦官報を通じて‘愛国法 311条’を実行する大統領行政命令(Executive Order)の草案を公開した。行政命令草案は母法であるだけに強力で ▲米国のいかなる金融機関も財務部長官が指定した‘資金洗浄憂慮対象’との取引きを禁じ ▲‘資金洗浄憂慮対象’が第3の金融機関及びシステムを利用して米国の金融機関と取引きすることも規制するとなっている。
米国の金融機関が及ばす甚大な国際的影響力に照らした時、結果的に米財務部長官が指定した‘資金洗浄憂慮対象’は、米国のみならず国際的な金融取引をほとんど不可能にするものだ。米国が BDAを取り締まると世界各国の銀行が BDAとの取引を中止したし韓国の外換銀行、新韓銀行、水産協同組合もこれに追随した。
結局北朝鮮が国家として‘資金洗浄憂慮対象’となれば、米国と完全に関係を切るという国家・金融機関を除いては、今後国際社会で北朝鮮と金融取り引きをする相手はいなくなる。

◆ 北朝鮮、‘通中用南’で対抗できるか?

北朝鮮を‘資金洗浄憂慮対象と指定することは、米国があらかじめ決めた手順と思われる。
米国は 2005年 9月 20日付けで BDAを ‘資金洗浄憂慮金融機関’と発表して連邦官報を通じてその‘容疑’を公開した。官報には BDA 取り締まりの背景を @法律条項 Aバンコデルタアジア Bマカオ C北朝鮮など 4個項目に分けて説明したが、なかでも一番多い分量を占めたのが ‘北朝鮮’項目だった。
当時官報は‘北朝鮮’項目に “専門家たちは北朝鮮が犯罪活動で稼ぐ収益を年間 5億ドルくらいと推定している”としながら ▲2004年 12月トルコ警察が 7百万ドル相当の不法麻薬を所持した疑いで 2人の北朝鮮外交官を逮捕したこと ▲同じ年の初めエジプト政府が 15万ドル相当の禁止された船積み品目を運ぼうとしていた 2人の北朝鮮外交官を追放した事例などを提示した。また “1990年以来北朝鮮が 20余カ国で犯した 50余件の麻薬取引き逮捕事件と関連があり、北朝鮮が麻薬密売で稼いだ収益は年間 1~2億ドル程度”と推算した。
北朝鮮の偽札問題に対しても言及された。 官報は“去る30余年の間スーパーノート(Super Note)を流通させた疑いで多くの北朝鮮役人たちが逮捕された”と指摘したうえで“最近 10年間、米国は4,500万ドル以上の偽造紙幣を摘発した”と明らかにした。
この官報の内容をよく見ると、実は BDAは枝葉で北朝鮮が幹だということがたやすく読み取ることができる。すなわちBDA取り締まりは枝葉に過ぎず、いつか幹(北朝鮮)に手を付けるとということが示されている。
これまでの米国の対北朝鮮金融取締りは、北朝鮮の反応を見るための準備段階に過ぎないのであり、いよいよ本格的な‘北朝鮮取り締まり’に入って行くものと見られる。BDAは取締りを受けた後すぐさま米国と水面下の交渉に入り、米国の要求をほとんど受け入れたといわれている。
北朝鮮は、中国と通じ密着して韓国を利用・収奪する「通中用南」の戦略と内部緊縮財政などの方式で難局を打開しようとするはずだが、その‘低抗’作戦が成功するにはあまりにもハードルが高すぎる。

郭大中論説委員

 
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