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太陽政策継続のための人事再構築
南北首脳会談を目指すのか

2006.11.25

 盧武鉉政権は2003年2月の発足当初から、韓米同盟を重視する外交通商省・国防省と、南北協調を優先する青瓦台・統一部の間で意見の違いがあったが、「コード人事」で韓米同盟重視派を次々と更迭してきた。そして青瓦台国家安全保障会議(NSC)事務次長、統一相を歴任した李鍾ソク(イ・ジョンソク)氏を中心に親北路線を推進した。
 しかし北朝鮮核実験を受け「太陽政策」に対する批判が高まる中で、李鍾ソク氏さえも物足りなくなり、一層反米的で親北的な人物を登用する必要に迫られ、宋旻淳(ソン・ミンスン)氏、李在禎(イ・ジェジョン)氏、金万福(キムマンボク)氏を外交通商部や統一部、そして国家情報院に配置した。

 まず外交通商部長官に任命された宋旻淳氏について見てみよう。
彼は、これまでの外交官生活の大半を韓米関係の業務に費やした。そんな宋氏の米国についての認識は「韓国にとって最も重要な国だが、国益をかけて交渉する際には、争うときは争うべきだ」というものだ。しかし、かつては「最も重要な国」という点を強調していたものだが、最近では「争うときは争うべきだ」という点を強調している。 出世のために「親米」から「反米」に転向したという評がもっぱらだ。
北朝鮮の核実験後、盧大統領が李統一相に引責辞任させる形で事態収拾を図ったのは、宋氏の外相昇格で李統一相更迭を穴埋めして余りあると判断したからとみられている。
ニューヨーク・タイムズは11月1日付けで、盧武鉉大統領による外交安保チームの改編は、北朝鮮による核実験とそれに伴う韓米のぎくしゃくした関係にも関わらず、対北包容政策を堅持する意志を示したと報じた。 特に今回の人事で最も特筆すべきは、宋旻淳大統領府安保室長を外交通商部長官に任命した点であると指摘した。同紙は宋内定者を、「米国が人類歴史上最も戦争を多く行った国」との反米発言により、韓米両国で反発を引き起こしている人物と紹介している。  ニューヨーク・タイムズはまた、宋室長の外交通商部長官指名により、北朝鮮に対する制裁と結束を強調しているブッシュ政権に盧大統領が反旗を翻したとも付け加えた。
ソウル大学国際大学院の白珍鉉(ペク・ジンヒョン)教授はニューヨーク・タイムズとのインタビューで「盧大統領が宋室長を外交部長官に指名したのは米国に反対する象徴と解釈できる。北朝鮮による核実験以後、盧大統領の北朝鮮政策の再考を望む声が多かった。しかし、今回の人事で盧大統領にはその考えがないことが明確になった」と語った。

 次が新たな統一部長官に指名された李在禎氏だ。
神学博士号を持ち国会議員も務めた李在禎(イ・ジェジョン)氏(62)は、大統領諮問機関「民主平和統一諮問会議」の首席副議長を務めてきたキリスト教団体幹部である。彼は、英国系「聖公会」(牧師)出身だが、筋金入りの「親金正日派」と目されている。盧大統領当選にも功績があった。
李在禎統一部長官内定者は長年対北朝鮮支援に関与し、北朝鮮核実験後にも支援を続けるべきだと主張してきた。また南北協力の2大看板事業である開城工業団地と金剛山観光の継続を主張している。保留中の肥料とコメ支援も再開するよう訴えてきた。
李氏は15日、ソウル中区奨忠洞(チュンク・チャンチュンドン)のタワーホテルで開かれた「2006年英語圏次世代フォーラム」に講師として出席し、「ブッシュ政府は、一方主義的な対北朝鮮政策から一歩退き、社会主義のベトナムを変化させたような真摯な交渉を通じて、変化を導かなければならない」と述べ、「米国のブッシュ政府は、『北朝鮮体制の崩壊(demolition of North Korean regime)』を追求する政策から脱しなければならない」と述べた。
英語で行われた講演で、李氏は、韓米同盟についても「緊密な両国間の協力は必要だが、それが韓国の国家的運命を決定するうえで、妨げになってはならない」と強調した。
李氏は講演後、東亜(トンア)日報の電話インタビューに応じ、「米国が6者協議で対話を選んだ以上、もっと積極的に解決策づくりのために努力してほしいという趣旨だった。講演は、民主平和統一首席副議長の資格で行なった」と述べた。
現在国会聴聞会で「適確性」を審査されているのだが、その答弁での「親金正日ぶり」が話題を集めている。
李氏は「金日成についてどう評価するか」という、ハンナラ党の高興吉(コ・フンギル)議員の質問に対し、「後世の歴史が評価するものであり、その歴史的評価はまだ定まっていない」と述べた。そして自らのこうした評価は「歴史学者らの一般的な見解を伝えたものだ」とした。また金正日(キム・ジョンイル)総書記に対する評価については「現在北朝鮮の指導者という地位にあるため、公の場で評価するのは適切ではない」と答えた。
続けて李氏は、「金日成は後世の歴史が評価するというが、では朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領についてはどう評価するのか」という質問に対し、約10秒間沈黙した後、「4・19革命以後に軍事クーデターで政権を掌握し、18年間在任する中で相当な経済発展に寄与した」と答えた。
また、鄭夢準(チョン・モンジュン)議員(無所属)からの「過去における韓国の軍事政権は統一の障害だと批判していたが、北朝鮮の軍事政権はなぜ批判しないのか」という質問に対し李氏は「北朝鮮は統一しなければならない相手だ。韓国内部の体制を批判することと、北朝鮮を批判することは違う」と述べた。
「北朝鮮の主体思想や先軍政治が、北朝鮮の国民や南北統一のために好ましくないと考えるか」という質問に対しては「それはそちら側の一つの統一理念だ。好ましいか否かを評価できるものではない」と答えた。これに対して議員らが「先軍政治を支持するということか」と問いただすや、「そういうことではない」と釈明した。
「6・25戦争(朝鮮戦争)は(北朝鮮の)南侵(によって起こった戦争)なのか、(韓国の)北侵なのか」という質問に対しても、「この場で定義して申し上げるのは適切ではない」と述べた。鄭夢準議員が再度質問に立ち、「数百万人の同胞が犠牲になった6・25戦争に対する歴史的判断を避けようというのか」と問い詰めると、「南侵というのは既に分かっている事実だ。否定するものではない」と答えた。
*李在禎氏に対する人事聴聞会での質疑と答弁
問 6・25戦争(朝鮮戦争)は北朝鮮の南侵(によって起こった戦争)なのか
答 この場で定義して発言するのは適切ではない→南侵という事実は否定しない
問 金日成をどう評価するか
答 後世の歴史が評価する
問 国連の北朝鮮に対する人権決議案に対する所信は
答 政府が賛成したのに、違った話をするわけにはいかないだろう→わたしも賛成する
問 金剛山観光・開城工業団地の事業中止についてどう思うか
答 政府が中止させることではない
問 北朝鮮に対する制裁の必要性は
答 対話のための一時的な手段にするべきだ
問 南北を結ぶホットラインは
答 構築を推進する」
問 「核の傘」の概念を知っているのか
答 正確な内容は知らない。マスコミを通じて見ている

 では次期国家情報院長に予定されている金万福氏はどうだろうか。
韓国のトップ人事のうち、最も話題になったのは金昇圭(キムスンギュ)国家情報院長の後任だ。金万福(キムマンボク)国情院第1次長の指名は韓国情報機関の歴史上初めての、生え抜きのトップ登用という意味を持つ。同時に、現在続いている北朝鮮スパイ(一心会)摘発の捜査が尻すぼみになるという懸念も指摘されている。
国情院が捜査中の事件では、北朝鮮による情報収集などに関与した疑いで逮捕された5容疑者に、80年代の民主化運動を担った元活動家らが含まれており、同様の人脈が布陣する与党・開かれたウリ党や政府機関にも累が及ぶ可能性が取りざたされている。
この事件の渦中で金院長が辞意表明したため青瓦台(大統領官邸)との摩擦説が浮上した。金院長が韓国紙とのインタビューで後任人事について「国情院内部からの抜てきは好ましくない」と語ったのは、青瓦台と親密な人物の登用へのけん制だという見方が出ていた。
しかし後任に指名された金万福氏は、国情院プロパーであった。彼は盧武鉉政権の前半期に青瓦台の国家安全保障会議(NSC)で情報管理室長を務めた経歴がある。対北融和路線を推進した李ジョンソク統一相とも親しいとされる。
野党・ハンナラ党や保守系の有力紙は、この人事の結果、捜査が進展しなくなる可能性を指摘。青瓦台は全面否定しているが、同党は他の人事も含めて現政権への忠誠重視に偏った人選だと強く反発している。

 最後に外交・安保ラインで残った部署は国防部だが、ここでは次期国防長官内定者である金章洙(キム・ジャンス)氏が、盧大統領とは異なった「安保観」を主張し、かろうじて国民を安心させている。
次期国防長官に内定している金章洙(キム・ジャンス)氏は16日の人事聴聞会で、「北朝鮮が核を保有したことにより、南北間の軍事力の均衡が崩れたのは確かだ。これは韓国戦争(朝鮮戦争)以来最大の安保上の危機」と語った。
金章洙氏はまた、盧武鉉大統領が先月「北朝鮮が核を保有しても南北の軍事均衡は崩れない」と発言したことについて「同意しない。大統領も米国の「核の傘」の中に入ってこそ戦力の均衡が維持されるという意味で発言されたのではないかと思う」と語った。
金章洙氏は前職の国防長官らが戦時作戦統制権の単独行使に反対したことについても、「すでに選択の段階は過ぎたが、彼らの心からの懸念を十分参考にすべきだ」と語った。この発言もやはり「過去に国防を担当された方々がまったく反対の話をされているのが歯がゆい」という大統領の認識とは異なっている。
金章洙氏はまた、米国・日本・北朝鮮のうちどの国が韓半島(朝鮮半島)情勢を脅かしているかという質問に対し、「北朝鮮」と答えた。金章洙氏のこうした認識は、大統領が北朝鮮のミサイル発射問題に関して語った「韓国に向けられたものではない」という認識とはまさに対照的だ。
さらに金章洙氏は韓国が大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への参加を見送ったことについて、「PSI参加国の失望を解消し、同盟関係の回復を図るべきだ」と語った。

  しかし、親北反米的人物で固められた現政権の外交・安保ラインで、果たして金章洙氏のような人物が正常に業務を行えるのかどうか心配なところだ。
 
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