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金正恩統治2014年の特徴

コリア国際研究所 朴斗鎮
2014.12.22

 自身が育成した人材も人脈も持たず準備期間もほとんどないまま権力を受け継いで2012年に最高指導者として登場した金正恩第1書記は、父である金正日によって育成され登用された既存の権力エリートに依拠した「後継人体制」で政権をスタートせざるを得なかった。
 こうしたことからこの体制は、3年以内に大きな転機を迎えると予想されていたが、早くも体制発足2年の昨年末に張成沢粛清という大事件を起こし大きく揺れ動いた。この背景には、一人独裁を急ぐ金正恩の焦りと張成沢勢力を後押しする中国への恐怖心、そして利権(外貨)を巡る勢力間の争いがあった。
 核とミサイル部門を除いた2014年の金正恩統治の特徴は、①恐怖統治を前面に出した張成沢勢力一掃による一人独裁(金正恩親政)体制の構築、②市場(いちば)経済に対抗できる「経済管理体制」の模索、③金正恩の権威を高めるための「展示物」強化にあったと言える。
 以下では③を省略し①と②についてみることにする。

1、張成沢派の粛清強化と金正恩「親政体制」の構築

 金正恩政権3年間の最大の事変は、何と言っても義理の叔父である張成沢の粛清処刑であった。2014年における金正恩統治の最大の特徴は、この勢力を早期に「根こそぎ」にするための恐怖統治であったと言える。しかしその作業は簡単ではなかった。そのために粛清作業は当初の計画通りには進まず今も続けられている。

1)簡単ではない張成沢影響の一掃

 粛清された張成沢は、金正日の最側近として、またロイヤルファミリー金慶喜の夫として40年にわたって権力中枢で活動した。金正日権力確立のための3大革命小組運動での核心的役割のほか、党中央の国際部、勤労団体部(青年同盟指導)、組織指導部、首都建設部、行政部と朝鮮労働党のほとんどの部署を渡り歩き、金正恩体制発足後は若い金正恩を支えた。国家運営でも国防委員会副委員長を歴任するなど多岐にわたる分野で指導的役割を果たしてきた。金日成以後金正日以外でこれほどの政治的経験を積んだ人物は北朝鮮には存在しない。従って濃淡はあっても北朝鮮幹部の多くは彼の影響を受けている。そこに金慶喜人脈を加えるとその数は膨大だ。
 金正恩がこの勢力を粛清できたのは、軍に対する張成沢の影響力が少なかったことと、何よりも「首領」の手足として北朝鮮権力の中枢でにらみを利かす組織指導部の強大な力が維持されていたからである。
 組織指導部は、一貫して張成沢監視の任務を担わされていたため張成沢の影響力は限定的だった。金正恩の最高指導者としての権限と組織指導部の人事権及び検閲・監督機能を駆使して軍の反張成沢派を引き付け、国家安全保衛部を動員して張成沢粛清は実行されたのである。しかしその根を断つ作業は簡単ではなかった。

2)張成沢の影響一掃が困難な理由

 張成沢粛清を通じて「後見人体制」を破壊した金正恩は、その後自分色を鮮明にする「親政体制」を構築することへと進み、その作業は今も続いている。しかしそれは容易な作業ではない。金正恩が張成沢とその側近を即刻処刑したといえども、長期にわたって形成されたこの勢力を一気に根こそぎにすることはとうてい無理である。
 それは何よりも父親金正日の業績が張成沢の活動と重なる部分があるからだ。金正日の唯一領導体系を確立する「3大革命小組運動」、核開発資金の調達、外資導入、平壌建設、中国との同盟強化など、金正日政治に張成沢が関係しなかった分野は少ない。
 金正恩が張成沢勢力を一気に一掃できないもう一つの理由は、金正恩にこれといった業績がなく、いまだにその出生の経緯すら明確にできないことにある。
 すでに筆者は内部から得た情報をもとに、①金日成主席に知られたくないために母親の高英姫は元山の金正日別荘で生活し、金正恩も平壌ではなくそこで生まれたこと、②したがって金日成主席は孫の金正恩の存在を知らなかったこと、などを伝えてきたが、最近、韓国国家安保戦略研究院の玄成日(ヒョン・ソンイル)首席研究委員もその事実を明らかにした
 ヒョン首席研究委員は12月1日、韓国プレスセンターで開かれた「金正恩政権3年評価と2015年南北関係の展望」セミナーで、「1994年7月に金日成主席が死去するまで金日成と金正恩は会ったことがない」とし「金日成の死去当時、金正恩は満10歳だったたため、一緒に撮った写真や動画があれば、これを偶像化に大々的に活用したはず」と語った。
 金正恩は1994年から2000年までスイス・ベルンで早期留学したとされているが、この外国留学もその存在を金日成に知られないための措置であった可能性が高い。
 ヒョン研究委員はまた「金正恩の生母・高英姫(コ・ヨンヒ)を偶像化した記録映画も、金日成主席の死後である1990年代半ばから高英姫の死去(2004年)前までの姿を撮影したものだ」とし「金正恩はもちろん、高英姫の存在も、金日成の生存時には北の内部で徹底的に秘密にされていたことが分かる」と述べた。「偉大な先軍朝鮮の母」という名のこの記録映画は、2008年に金正恩が後継者に内定した後、幹部に対してのみ上映されていたが、外部に流出したため回収された。
 ヒョン研究委員は続けて「高英姫とその実子は平壌(ピョンヤン)ではなく江原道元山の特閣(別荘)にいなければならなかった」とし「世襲の名分として家系の正統性を重視するが、今まで生母を前面に出すことができないほど脆弱な実情を見ると、父の政治的保護と後見人が消えた状況で、金正恩は祖父のカリスマとイメージ模倣に頼り、権力確立を進めているが、そこにはおのずと限界がある」と指摘した。
 金正恩と組織指導部幹部は、こうした金正恩権力の「脆弱さ」を勘案し、調査・粛清対象12万人を抽出した上で、この粛清を徹底的に執拗に進める計画を立てている。

3)組織指導部を前面立てた恐怖統治の登場

 金正恩第1書記は、義理の叔父張成沢国防委員会副委員長の粛清をキッカケに、一転して恐怖政治による統治を前面に出している。それは、夫人の李雪主と共にローキーの曲を奏でる牡丹峰楽団を絶賛し、ミーキーマウスのぬいぐるみに満足していたあの姿からは想像もできないものである。
 この恐怖政治を進める上で金正恩は今、朝鮮労働党組織指導部を自身の勢力で固めて前面に出しており、エレベーター人事を駆使して忠誠心を競い合わせ、軍をはじめとした各勢力を服従させようとしている。またこの間の失政の責任をすべて張成沢に押しかぶせ、張成沢派粛清を正当化して、粛清を今も執拗に進めている。

粛清第1段階で金正恩に消された主な人たち

 粛清第一段階での最初の犠牲者は、張成沢の家族と親族、側近たちであった。
 張成沢の姉とその夫の全英鎮キューバ前大使家族、甥の張勇哲マレーシア前大使家族、兄の張成禹(故人)、張成吉(故人)家族、平壌のタクシー会社を統括していた姪とその夫(自殺)の家族などが処刑された。
 側近では党中央行政部第1副部長だった李龍河、副部長だった張秀吉をはじめとするほとんどの行政部幹部が処刑され、行政部は組織指導部に吸収され54部は軍総政治局に戻された。行政部解体作業は中央機関だけでなく地方組織にまでおよび、今なお地方幹部の粛清は続いている。
 そればかりか、行政部の管轄下にあった人民保安部の幹部も粛清され、内務軍楽団は解散させられた。最近では5月のアパート崩壊の原因も「張成沢一派の責任」とされ、金正恩の側近だった崔冨日(7月に大将から上将に降格)までも姿を消している。そして内務軍政治局長のカン・ピルフンも上将から大佐に3階級降格させられた。
 また文景徳前書記(平壌市責任書記)をはじめとした張成沢につながる党幹部も次々に処刑・粛清された。金日成の伝令兵だった全文燮(チョン・ムンソブ)を義父に持つ金永日前国際書記、党勤労団体部長だった李英秀(リ・ヨンス)、党軽工業部長だった白ケリョン、そして彼の上司で白頭の血統を代表する叔母の金慶喜までも姿を消し、彼女の影響下にあった内閣の軽工業省は廃止された。
 その他、党副部長だった朴チュンホンと粱チョンソン、女性同盟委員長だった盧成実(ロ・ソンシル、2008年3月に委員長に選出)、前石炭工業相林ナムス、前スエーデン大使朴クヮンチョル、前北朝鮮ユネスコ代表洪ヨン、前人民奉仕総局長朴明仙(女性、副総理級)、前建設建材大学の学長、2重労力英雄の前錦城学院(英才教育を行なって少年宮殿に人材を送るところ)院長などが粛清された。モランボン楽団のバイオリニスト1名も粛清された。中国との合弁で一時話題をさらった高級飲食店ヘダンファ(ハマナス)舘の社長は強制収容所で死亡し、妻の副社長韓明姫は銃殺された。

粛清作業は8月から第2段階に突入した

 組織指導部の調査と検閲が深まる中で、張成沢の影響が地方幹部にまで深く浸透していたことが明らかとなった。またこの調査過程で、幹部の腐敗が深刻な状況となっていることも明らかになった。金正恩は引き続き粛清を進めながら、こうした腐敗の責任をも張成沢に押し付け、8月以降、粛清の第2段階を推進している。
 ヒョン・ソンイル韓国国家安保戦略研究首席研究委員は12月1日、「最近8月、金第1書記が労働党組織指導部へ『張成沢の”影”を徹底的に消せ』との指示を極秘で下した」と語った。金正恩が組織指導部を通じて「現代版宗派一味が執行していた問題を再調査し、幹部たちの忠実性を検証し、異色分子を探しだして排除せよ」との指示を下したというのだ。
 ヒョン氏によると、これを受け、反党宗派行為、賄賂、女性問題、麻薬の服用などの理由で、組織指導部副部長ほか宣伝扇動部幹部ら約20人が9月に銃殺されたという。10月には、中央や地方組織の党幹部約10人が「唯一的領導体系」に違反したとして姜建軍官学校で銃殺され、海州市党責任書記など地方幹部たちもまた、横領、韓国ドラマ視聴などを理由に処刑された。同じく10月に、党の財政経理部一部幹部たちが、カラオケ店で金正恩称賛の歌を替え歌で歌ったとして銃殺された。そのほか、公安機関幹部たちも飲酒禁止指示違反などの名目で降格、処刑された。
 また、金第1書記はことし5月に発生した平壌新築アパート崩壊事故についても「張成沢の”根”が残っているからだ」とし、人民保安部傘下の建設7総局の幹部およそ20名を銃殺、または奥地へ追放した。
 深刻化した「非社会主義現象」については、各機関ごとに講習会を開き摘発するよう周知徹底させている。
 毎日新聞が入手した2014年7月作成の朝鮮労働党の講演資料「最近、現われている非社会主義的現象を徹底的になくせ」によると、北朝鮮国内でまん延している「非社会主義的行動」としては次のようなものが指摘されている。
 ▽市民が無許可で、衛生状態の悪い「食堂」のような店を営業して、酒と食事を提供している。
 ▽人民に奉仕するため党や国家から技能を伝授されたはずの退職技術者が、その技能を使って自宅で金を稼いで自分の懐に入れている。
 ▽線路を固定する金具を盗み、列車運行の重大事故が起きる危険を作り出している。
 ▽国内で禁止されている「周波数が調節できる小型ラジオ」を販売・使用している。またそれをこっそりと聞いている。不純出版物を見るのと同じ行為である。
 ▽最近、一部職場で記念日や創立日などに体育競技や芸術サークル公演を準備し、異色で猟奇的な種目によって、人為的な笑いを作り上げている。群衆を鼓舞するわけでもなく、娯楽のみに執着している。
 3年が経過した金正恩体制は、表面上は安定したように見えるが、金正恩偶像化がいまだに確立せず、党や軍では金正恩式エレベーター人事が続けられ、幹部体制が定着していない。今後も外貨枯渇と経済苦境、対中関係の悪化、国際的孤立などが解決しない限り、ことあるごとに「張成沢の余毒」を名分にした粛清は続くであろう。粛清が第2段階で終わる保証はない。
 朝鮮中央通信は12月15日、金正日総書記死去から17日で3年となるのに先立ち、「先軍太陽の不滅の業績を民族万代の財宝として輝かせた3年」との報道文を発表し、張成沢粛清について「13年12月の労働党政治局拡大会議で、党の唯一的領導を去勢しようとした現代版宗派が断固として摘発、粉砕された」と説明し、金正恩第1書記の業績とした。しかし言及されたのは数行に過ぎなかった。北朝鮮の歴史上最大級の粛清であったことを考えるとあまりにも小さな扱いだ。そこにはこの問題で国民の疑心を蒸し返したくないとの意図と、現在進行形の事案であるからとの思惑が感じられる。

2、経済管理体制の改革と国民生活の二極化

 金正恩は恐怖政治を打ち出す一方で、経済再生のための「経済管理改革」での成果を急いでいる。
 金正恩政権は昨年3月「経済建設と核武力建設の並進路線」を総路線として打ち出し、核とミサイルを強化する一方で、経済再生にも力を注いできた。経済の再生なくして金正恩政権の安定がないからだ。
 経済再生の目的は、何よりも配給制を復活させ首領独裁の経済基盤を確立することにある。そのためには、市場(いちば)経済を統制経済(首領経済)に引き戻しつつ増産できるシステムが必要だった。ここ数年北朝鮮が「新経済管理体制」を模索してきたのはこのためであった。
 この動きは今年に入り拍車がかかった。2012年に「6・28方針」が出され、2013年にはそれを試験的に実施する「8月方針」が内部通達されていたが、今年5月には金正恩の『5・30労作』が発表され、本格的実施に向かおうとしている。

1)「5・30労作(措置)」の基本内容

 その内容は、試験的・段階的に導入されてきた「企業の独立採算制拡大及び責任経営」、「協同農場での圃田担当責任制の実施」、「13カ所の直轄市・道と220カ所の市・郡に対する開発権付与」、「合弁の権限付与」、「企業所と機関に外貨口座の開設を許可」などとなっている。
 ここでの「企業の独立採算制」とは、国家が決める国家計画以外の部分でのみ企業の自立権を認めるというものだ。すなわち国家のノルマを達成後の超過生産の計画権、生産組織権分配権、そして貿易または合弁する権限などが付与されたというものだ。従って、それらはすべて国家計画に従わなければならないとの条件が付いている。
 農業の圃田担当責任制も同じである。あくまでも国家計画遂行が前提となる。この前提の下で、従来の分組管理制(10~25人)を維持したうえで1~3人が責任をもって担当するというのが「圃田担当責任制」である。そしてそこで生産した農作物から国家に納める土地使用料や農機具使用料、肥料代金や農薬代金などの上納金を差し引いた残りの約30%は自由に処分することができる。以前には現金で分配したが、最近は現物での分配も可能になった。だから自己消費以外の農作物を市場価格で売ることもできるというものだ。
 ただ、企業の自主的開発権や、合弁権については外資の導入が前提となるので、北朝鮮が経済制裁の下に置かれている現時点では、ほとんど機能していない状況にある。北朝鮮に対する制裁が効いていないという人たちは、この部分を完全に見落としている。
 北朝鮮の経済管理方法改善内容を理解するうえで間違ってはならないのは、企業の独立採算制も農業の圃田担当責任制も、すべて生産手段の国家所有下での限られた裁量権であり、私的所有が認められているアメリカや日本の企業のように自由にすべを決められるものではないという点である。また一部私有化が認められている中国の管理システムとも異なる。
 このように、北朝鮮の経済改革案は、首領独裁の枠組みから外れることができない。そのためにいつも「絵にかいたモチ」となり、堂々巡りを繰り返してきた。それは首領独裁という「絶対服従のシステム」と自主的経済管理システムが求める「主人らしい態度」や「創造性の発揮」が相容れないためだ。

2)格差を促進する経済管理改革

 今このように北朝鮮は、限定的とはいえインセンティブを与えて労働意欲を引き出す経営管理を進めている。その一方でこれを金正恩の「業績」誇示に利用し「金正恩時代の変化」と結び付け宣伝している。
 管理システムの成果誇示のために取られている方法が「選択と集中」だ。地方を切り捨て、資金力のない企業や農村を切り捨て、平壌とその近郊に投資を集中しているのである。その結果、平壌では貿易関係者、軍需部門関係者、公安関係者など外貨に接することができる階層が冨を蓄積し、「富裕層」として出現している。
 また制約があるとはいえ、資金力のあるものに有利に働く「管理システム」が導入されたことで富の分配が偏りを見せている。中央経済と地方経済の2極化が進み、住民間の2極化も進んでいる。
 すでに北朝鮮では社会主義が目指す「平等」は影をひそめている。平壌と地方、富裕層と貧困層など二つの景色が混在する社会となっている。昨年配給制区分も新たに設定され、等級が12に分けられた。最高待遇は一人1日1000g、最低は1日250gだ。配給においても格差が4倍に広がった。

①平壌富裕層の暮らし

 いま平壌では食糧難に喘ぐ北朝鮮一般住民をしり目に、富裕層は各種娯楽施設で楽しんでいる。
 当研究所が内部から得た情報の一例によると、党高位幹部や外貨獲得の貿易会社社長などの妻たちは、ブランド品を買い求め、レストランやコーヒーショップなどで贅沢な生活を送り、フアッション、美容、娯楽を楽しんでいるという。例えば主に外国人が集まる大同江区域のクムヌン体育館では、一時間7ユーロもする「スカッシュ」を楽しんでいる。スカッシュ1時間の利用料7ユーロは、北朝鮮一般労動者の平均賃金(3000ウォン)の25倍で米15kg(1kg=5000ウォン)を買える金額だ。
 北朝鮮のメディアは、昨年末新しく完工した「文殊ウォーターランド」や「クムヌン体育館」を宣伝して「人民のための体育文化施設が素晴らしく出来上がった」などと大々的に宣伝しているが、実際は一部富裕層のための専有物に過ぎない。これら富裕層のほとんどが停電のない平壌中区域や牡丹峰区域の高層アパートなどに住んでいる。
 平壌の一部特権層がこうした「消費生活」を楽しんでいる一方、地方は疲弊したまま取り残されている。

②地方住民の暮らし

 茂山鉱山、給料引き上げも支払われず
 北朝鮮では独立採算制の強化によって労働者の給料が100倍に引き上げられたと宣伝しているが、実施されているのは、平壌の一部優良企業に限られている。
 咸境道消息筋はデイリーNKとの通話で「去年 9月茂山鉱山労動者の月給を30万ウォンと公布したが、実際受け取るお金は 3万ウォンにしかならない」と 嘆いている。「企業所が労動者たちに毎月支給している中国産商品の値段を差し引いて支給するからだ(デイリーNK2014-12-03 14:49)。また茂山鉱山は、停電多発で操業も安定していないという。

 両江道秋のジャガイモ配給昨年の半分
 今年は干ばつがひどかったが、両江道消息筋はデイリーNKとの通話で 「10月初旬から秋ジャガイモ配給が始まった」と語り「去年には世代あたり 6ヶ月分の配給を受けたが、今年は世帯主だけの2ヶ月分しか出ていない。扶養家族は1ヶ月分だけ供給された」と伝えた。住民たちはもう来年を心配しているという。ジャガイモは北朝鮮住民たちにとっては重要な主食だからだ(デイリーNK2014-10-27 11:24)。
 新たな管理制度については、「昨年から試験的に『分組管理制度』が導入された。家族や親しい農民3〜4人が一組になって3000坪の土地を与えられて農作業をしている。昨年は、干ばつもなく、肥料の供給も安定していたので、ノルマで決められた70%を上納しても、一年の食糧事情も解決し喜んでいた。しかし、今年は肥料の安定供給もなく、干ばつの影響によって坪あたりの収穫量は減った。それにも関わらず国に治めるノルマ(70%)は変わらない。収穫量が少なければ大きな負債(借金)を抱え込むことになる」(デイリーNK2014年12月04日)と伝えている。

 特区の羅津(ラジン)も一日3時間は停電
 地方で比較的優遇されている経済特区ですら例外ではない。
 北朝鮮と交易をしている中国事業家A氏は「経済活動が活発な羅津(ラジン)の場合も一日3時間は電気供給がストップする」とし「電力が必要な企業は各自小型発電機を購入せざるをえない」と伝えた。電力事情は地方都市に行けばはるかに深刻だ。夜に電灯をつけている家がほとんどないという。
 また生産性革新や新たな産業を興す企業群の規模の小ささ、企業家精神の不在も根本的な問題だと指摘する。永い腐敗に疲れた社会構造の中に自由と創意を命にする企業家精神が入り込む隙がないと指摘している(中央日報日本語版2014・12・04:15・06)。

③資金収奪のためまたもや新紙幣を発行

 韓国国家情報院(国情院)は7月31日の国会情報委員会で、北朝鮮が5000ウォンの新しい紙幣を発行し、7月から旧紙幣との交換作業を進行中であることを明らかにした。同委員会与党幹事の李チョル雨(イ・チョルウ)議員らが記者会見で伝えた。
 国情院は北朝鮮の新紙幣の発行について李議員は「旧紙幣を新紙幣に変えなければ使えないようにした。北の当局がタンス預金を引き出すために新紙幣を発行したとみられる」と見解を述べた。
 旧紙幣は表に故金日成(キム・イルソン)主席、裏には万景台の風景が描かれているが、新紙幣は表に万景台、裏には国際親善展覧館が描かれている(聯合ニュース2014/07/31 19:56 )。

3 、北朝鮮経済は再生に向かっているのか

 最近北朝鮮を訪れた日本の学者や評論家は、北朝鮮経済について歴史的・総体的検証もせず、北朝鮮当局から聞かされた「変化と豊かさ」の話をそのまま垂れ流している。
 例えば訪朝後のレポートなどで「化粧品に群がる平壌の女性たち」、「清潔な工場海外での技術研修も」、「為替レートはほぼ安定、高給を手にする労働者も増加」、「楽しそうに室内プールで泳ぐ平壌市民」との見出しで、北朝鮮の経済改革が大成功を収めているかのごとき宣伝を行っている。こうした美辞麗句は、50数年前に北朝鮮を「地上の楽園」と宣伝した頃のフレーズに酷似している。
 また平壌の展示物や一部富裕層の生活を見て「1998年にも訪朝経験がある筆者としては、「苦難の行軍」と呼ばれる厳しい経済事情にあり、市内を通る車はほとんどなく、平壌市民は誰もが険しい表情で歩いていたころを知っている。当時と比べると、雲泥の差だ」と北朝鮮経済がいかにも飛躍を遂げているかの如く述べている。
 しかし、北朝鮮経済は1989年を起点としてみても現在の回復水準は道半ばなのである。今年の穀物生産は、500万トン前後と発表され、「増産だ」などと言われているが、過去1984年の穀物生産高1000万トンに比べると話にならない水準である。1989年の社会主義陣営崩壊後停滞が顕著となった北朝鮮経済は、1990年代半には300万人の餓死者を出すほど破壊された。この後遺症は今も続いている。
 北朝鮮経済を1989年と2011年の対比で見ると次のようになる
 穀物生産は、1989年 457.2万t、2011年 466.0万t、回復率 101.9%
 石炭生産は、1989年 3,508.0万t、2011年 2,550.0万t、回復率 72.7%
 原油導入は、1989年 1,993.8万bbl、2011年 384.0万bbl、回復率 19.3%
 鋼鉄生産は、1989年 596.0万t、2011年 122.5万t、回復率 20.6%
 肥料生産は、1989年 351.4万t、2011年 47.1万t、回復率 13.5%
 注 : 穀物は精穀ベースで韓国農業振興庁とWFPの資料に基づく。
 出所:韓国統計庁「北韓の主要統計指標(2012)」2012 年12 月

 経済成長がマイナス基調から脱し、やっとプラスに転じたのは2011年からとの報告もあるが、それも1%そこそこの成長だ。2012、2013年の状態は2011年と大差ないと思われる。最悪状態から脱したとはいえ過去に比べて「雲泥の差」と言えるものではない。消費ブームなどと言っているが、それも一部の現象である。
 韓国の民間シンクタンク、現代経済研究院は3月16日に公表した報告書で、北朝鮮の昨年の1人当たり名目国内総生産(GDP)が854ドル(約8万6500円)で、前年比で39ドル増えたと明らかにした。昨年の韓国の同GDP(2万3838ドル)の3.6%に当たる。北朝鮮の1人当たりGDPはほかの社会主義圏諸国と比べても、中国(6569ドル)、ベトナム(1896ドル)、ラオス(1490ドル)を大きく下回っている。
 また韓国統計庁が12月16日刊行した北朝鮮の主要統計指標によると、昨年のセメント生産量は660万トンで、韓国の4729トンを大きく下回る。粗鋼生産量も北朝鮮が121万トンにとどまったのに対し、韓国は6606万1000トンだった。発電設備の容量は北朝鮮が724万3000Kw/h(注:実際の発電能力は300万Kw/h弱)、韓国が8697万9000Kw/hだ。北朝鮮のコメ生産量は210万1000トン、韓国は423万トンだった。人口は北朝鮮が2454万5000人、韓国が5022万人と集計された(聯合ニュース2014/12/16 11:42)
 こうしてみると北朝鮮の所得水準と産業構造は、韓国の1970年代と類似している。北朝鮮の1人当たりの農業生産性は韓国の1970年代水準で、総人口の3分の1以上が農業の従事者だ。セメントと化学肥料の生産量も韓国の1970年代の水準で、鉄鋼の生産量は韓国の1.8%、自動車は0.1%にすぎない。北朝鮮の貿易量は韓国の1970年代初めの水準で、慢性的な貿易赤字に陥っている。発電量は韓国の1975年水準、栄養摂取量は1970年水準にも届かない(聯合ニュース2014・3・16)。
 訪朝のためのリップサービスで北朝鮮の「変化」を誇張するのはある程度仕方がないにしても、誇張が過ぎると「曲学阿世」のそしりを受けその品性さえも疑われることになる。

*          *          *

 金正恩第1書記は張成沢の粛清で自己の権力が強化されたと錯覚している。すべての幹部が自分の前でペコペコするようになったからだ。しかし足元をよく見る必要がある。
 金正恩と北朝鮮民衆の間は過去の首領(金日成、金正日)のように強く結ばれていない。金日成時代のような「配給制」や「雇用」や「福祉」はすでになくなっている。「平等観」に基づく「千里馬運動」や「3大革命小組運動」などの「運動の一体感」もない。今あるのは「上意下達式速度戦」と「お金万能の処世術」と「貧富の格差」だけだ。これでは指導者と民衆との真実味ある連帯意識は生まれない。
 今は粛清の「恐怖」で「一体化」を作り出しているが、そうした一体感はいつまでも続くものではない。表面上は安定を得たように見える金正恩体制だが、来年の朝鮮労働党70周年を明確な経済的・外交的成果で迎えられなければ、まだまだ一波乱二波乱あるだろう。金正恩の前途は明るくない。それが3年間の総括から導きだされる結論である。

以上

 
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