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金正恩、国防委員会を改編し国務委員長に

コリア国際研究所 朴斗鎮
2016.7.4

 5月の朝鮮労働党第7回大会に続く6月29日、平壌万寿台議事堂で北朝鮮の最高人民会議第13期第4回会議が開催された。金正恩委員長は国家最高指導機関を国防委員会から国務委員会に改編し、国防委員会第1委員長から国務委員長へと肩書を変えた。これで後見人体制時代の「党第1書記」「国防委員会第1委員長」から「党委員長」「国務委員会委員長」へと肩書の変更を終えた。
 しかし、政策の中身で変わったものは何もない。金正恩の恐怖政治が体制化され「核武装と経済の並進路線」が恒久路線とされただけで、対外的孤立も経済の困窮も改善される兆しは見えない。むしろ悪化の兆しさえ見せている。
 何らかの肯定的変化を期待し、党と国家の一連のイベントを北朝鮮の新時代の到来と宣伝したかった人々にとっては肩透かしを食らった状況と言える。
 ただ変化しているものもある。それは核兵器の開発促進と過激な言動だ。「ムスダン発射成功」後米国を滅亡させるなどとする映像を流し挑発言動を一層過激化させている。
 せっかちで忍耐力に欠け、過激な金正恩委員長の性格は、いま北朝鮮の国家の性格となり、その指示で動く朝鮮総連までも過激化の様相を見せ始めている。

1、最高人民会議で金正恩を国務委員長に推戴

 最高人民会議は、北朝鮮の憲法上、最高の主権機関として憲法・法令の制定・改正及び法令承認権、今回改編された国務委員会、内閣などの人事権、経済発展計画・実行に関する報告・審議などの権限を持つ。ただし憲法上は「朝鮮民主主義人民共和国を領導」する朝鮮労働党が主要政策に関連した立法・統制権を持っており、最高人民会議の決定は「労働党決定」の範囲から外れことはない。
 朝鮮中央テレビは、今回会議で1、社会主義憲法修正補充 2、金正恩氏の最高ポスト推戴 3、国務委員会構成 4、国家経済発展5カ年戦略の徹底的な遂行 5、祖国平和統一委員会設立 6、組織問題――の6事案について議論したと伝えた。
 こうした議題の中での注目点は、党委員長となった金正恩の肩書の変化と国防委員会の改編にあった。党委員長の肩書に合わせて第一委員長の肩書をどのように変更するのか?(国防委員会委員長は金正日に付けられた永遠の肩書のために使えない)そのために国防委員会をどう改編するのかにあった。
 北朝鮮の朝鮮中央テレビは29日、今回会議で国防委員会が国務委員会に改編され、金正恩朝鮮労働党委員長を「国務委員長」に推戴されたと報じた。直近の2014年9月と15年4月の会議には欠席していた金正恩委員長は黒い人民服姿で会議に出席し、国務委員長推戴を受けた。
 推戴の演説で金永南(キム・ヨンナム)常任委員長は「全最高人民会議代議員と人民軍将兵、人民の一つの意志を込めて、敬愛なる金正恩同志を共和国の最高位である『朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長』として丁重に推戴する」と述べた。これに対し最高人民会議代議員は一斉に起立して「万歳」を叫びながら同意した。これを受け、金正恩の国家職責は従来の「国防委員会第1委員長」から「国務委員長」に変わった。
 5月の第7回党大会で最高ポストの党委員長に就任した金正恩は、第1書記、第1委員長という「不本意」な肩書をすべて「委員長」という肩書に変え、形式上父親の影と後見人の匂いを消し去った。
 国務委員会人事では副委員長に黄炳瑞(ファン・ビョンソ)人民軍総政治局長、崔竜海(チェ・リョンヘ)党政務局副委員長、朴奉珠(パク・ボンジュ)総理が任命された。国防委員会の副委員長であった李用茂(リ・ヨンム)と呉克烈(オ・グクリョル)は外された。これは党大会人事で予測されたことであった。
 国務委員会委員には、党宣伝担当の金己男(キム・ギナム)、朴永植(パク・ヨンシク)人民武力相(部長から相に肩書変更)、国際担当の李スヨン、軍需工業担当の李萬建(リ・マンゴン)、対南担当の金英徹(キム・ヨンチョル)の各党政務局副委員長が就き、そのほか金元弘(キム・ウォンホン)国家安全保衛部長、崔冨一(チェ・ブイル)人民保安部長、李容浩(リ・ヨンホ)外務相の8名が選ばれた。
 国務委員会の新設は 「先軍」という非常事態政治から党主導の先軍政治、すなわち「核武装と経済建設の並進路線」政治への転換を意味するといえる。これはまた党と政府内での軍の地位低下も意味する(核とミサイル部門は別)。それは新設された国務委員会が既存軍事中心の国防委員会よりもっと幅広く経済、外交までも含めた国政全般を扱うように拡がったという点をみても明らかだ。
 その他、対韓国窓口機関、祖国平和統一委員会の書記局を廃止するとともに同委員会を国家機関に昇格させた。このことについて、韓国統一部当局者は金正恩氏が提示した統一課業の実行のため同委員会を活用するとみられ、党中央委員会統一戦線部レベルでの韓国に対する融和攻勢を強化させる意図があるとした。
 会議の第4議題で朴奉珠総理は「国家経済発展5カ年戦略」の報告を行い、「戦略の目標は人民経済全般を活性化し、国の経済を持続的に発展させる土台をつくること」と言明し、「内閣は党の(核開発と経済発展の)並進路線を維持し、人民生活を決定的に向上させることを中心課題として進めていく」と強調した。その上で、「社会主義経済強国を目指す5カ年戦略目標を必ず実現する」とした。しかしここでも具体的数字は明らかにされなかった。韓国の政府当局者は北朝鮮が「国家経済発展5カ年戦略」で生産目標を提示しなかったことに言及し、「制裁で外部からの投資がないため成果を出すのは厳しいだろう」と語った。

2、組織改編と人事の特徴

 国務委員会(国務委)が軍事・対南・外交の関連幹部で構成されたことで金正日時代の国防委員会(国防委)よりは金日成時代の主席制の下での中央人民委員会に近い権力構図となった。
 金正日が作った国防委には最高国防指導機関という側面が強かったために、軍の元老及び軍の代表が副委員長に配置され、軍及び軍需産業関連主要責任者たちが委員となった。
 しかし新設された国務委には国家主権の最高指導機関という性格に合わせて、党-政-軍を代表する崔龍海党政治局常務委員、朴奉珠内閣総理、黄炳誓人民軍総政治局長が副委員長に任命された(序列は黄、朴、崔の順)。彼らは皆第7回党大会で党政治局常務委員に任命された人たちだ。
 この中で注目すべきは朴奉珠内閣総理が党政治局常務委員及び党中央軍事委委員と共に国務委副委員長を兼職するようになったことだ。この点が今回の国務委が国防委と区別される大きな特徴の一つである。これで党政務局と国務委と内閣のつながりが明確となり内閣責任制を強化して北朝鮮経済の再生を図ろうとする意図がはっきりと見えるようになった。第7回党大会で郭範基(クワク・ポンギ)、呉秀英(オ・スヨン)、盧斗哲(ロ・ドゥチョル)などの内閣副総理が党政治局委員入りしたことや、今回最高人民会議で朴奉珠内閣総理の提案によって李周午(リ・ジュオ)、李龍男(リ・リョンナム)、高人虎(コ・インホ、農業相兼任)が内閣副総理に新しく登用されたことなどはそうした流れの一環と言える。
 国務委員の中で特に目を引くのは李萬建と金英徹だ。この二人だけが党政治局委員、党政務局副委員長、党中央軍事委委員、党部長、国務委員など党‐軍‐政の核心要職をすべて兼職している。李萬建は過去の国防委委員だった金春渉党軍需担当書記と趙春龍第2経済委委員長の役割を併せ持ち金正恩体制の核武力路線を推進する役割を担っていく人物として注目されている。
 中国などとの党外交をはじめ外交全般を担う人物としては李スヨンが、米国をはじめとした西側諸国との外交坦当として李容浩外務相が国務委員に抜擢された。金正日時代の外務相が党政治局候補委員にもなってなかったことを考えると李容浩が党政治局候補委員と国務委員を兼任するようになっただけでなく国務委員に選ばれたことは異例の措置と言える。これは金正恩がこれからは対外関係改善に力を注ぐという意志を示したものとして注目される。

3、依然として厳しい状況の金正恩体制

 金正恩(核)による金正恩(核)のための党7回大会と今回の最高人民会議で党委員長、国務委員長の肩書を得た金正恩であるが、その体制はまだ盤石とはいえない。依然として自身の出自と母親高ヨンヒの出自は隠されたままで、業績といえば父金正日が残した核とミサイルの遺産を増やしているだけだ。肩書の衣替えのイベントは終えたものの首領絶対制の根幹である自身の「偶像化」は道半ばである。
 特に偶像化を支える経済基盤での弱さと外交的孤立の深化は致命的だ。経済の成長が見られず、外交的成果がなければ当然その権威は高まらない。そうした場合その責任問題をめぐって再び党内に粛清の嵐が吹き荒れるのは目に見えている。
 このところ順調と言われている食糧生産も、金正恩の核・ミサイル偏重政策と国際社会からの経済制裁強化などが影響し、再び下降傾向にあると言われている。直近の中国からの情報によると、中国の北朝鮮専門家たちは、今年の北朝鮮の食糧不足が100万トンに達するだろうと予測している。
 また産業の「コメ」である電力問題も依然として改善の兆しが見えない。資金のある人たちは中国からソーラパネルを買い入れたり、バッテリー電池を買い入れてなんとか家庭の電源を確保しているが、大多数の住民は依然として暗闇の中で生活し、工場や農場の電力不足は解消されていない。
 電力不足を節約でしのごうとする北朝鮮当局は、最近、これまでの住民単位の電気使用統制システムを人民班単位の統制システムに変えたという。おおよそ40戸単位と言われる人民班の電力供給を、1戸当たり「電灯一つとテレビ1台」が見られる電力使用量に制限し、人民班の合計使用量が超過した時には人民班全体の責任とし、人民班まるごと電力供給を止めているという。連帯責任制での節電の強要を行っている。
 そればかりか経済制裁の強化と中国の景気減速などにより外貨事情も急速に悪化し始め統治資金に影響を与えている。こうしたことから海外に出ている食堂や外貨稼ぎ部隊に対する締め付けは一層厳しくなっている。
 また私経済で一部活性化していた「消費経済」も70日戦闘に続く200日戦闘による労働強化(夜の11時ごろまで労働しなければならない)でしぼみつつあるという。飲食店でビールを飲むことも統制されているらしい。
 金正恩の気分で左右される北朝鮮の経済と外交にはいままだ明るい展望は見えてこない。

以上

 
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