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圧力路線で足をそろえる米日、迷走する韓国

コリア国際研究所 朴斗鎮
2017.9.25

*この論考は、9月23日にJapan In-depthに掲載された「覚悟を決めた米日、迷走する韓国」を若干加筆したものです。

北朝鮮の核ミサイル完成を前にして、米国は北朝鮮に対して核保有を認めた対話に入るのか、それとも核不拡散体制と同盟国を守る軍事行動を含めた圧力路線に集中するのかの2者択一に迫られてきた。しかしここにきての国連総会でのトランプ大統領の演説や米国主要閣僚の発言を見ると「北朝鮮に対して核保有を認めた対話」の選択肢はほぼなくなったと思われる。日本もまた日米同盟を強固にした米国との共同行動で覚悟を固めたようだ。

1、圧力路線に的を絞った米国

 トランプ大統領、国連総会演説で北朝鮮を激しく非難・警告

 トランプ米大統領は9月19日、ニューヨークの国連本部で行った就任後初の一般討論演説で(41分間)、北朝鮮が後退しなければ「米国には北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる可能性がある」と言明し、会場のどよめきを誘った。金正恩委員長を「ロケットマン」と呼び、『ロケットマン』は自身、および自身の体制に対する自爆任務に就いている」と述べた。また日本人拉致をはじめ数々の人権侵害を行い数百万の自国民を餓死させ犯罪行為も糾弾した。
 そのうえで、北朝鮮の核・ミサイル開発は「全世界に対する脅威であり、想像を絶する規模の人命が犠牲になる可能性がある」と批判。「世界を核の脅威にさらすこうした国と、一部の国が貿易を行うだけでなく、武器を提供し、財政支援を行っていることに憤りを感じる」と述べ暗に中国やロシアを非難した。
 続けてトランプ米大統領は21日、日米韓首脳がニューヨークで行った昼食会の冒頭、北朝鮮と取引のある個人や企業、金融機関に対する制裁を強化する大統領令に同日署名したと発表した。トランプ氏は記者団に対し、「北朝鮮の核・ミサイル開発は世界の平和と安全への重大な脅威であり、容認できない」と改めて強調。ヘイリー米国連大使は「北朝鮮と取引を行う者は、全員罰せられることになる」と指摘した。

圧力路線で意思統一した米国首脳部

 米国のホワイトハウス、国務省、国防省も金正恩政権に対する軍事的な選択肢について言及を始めた。ティラーソン国務長官の「外交努力が失敗すれば軍事的な選択肢しかなくなる」との発言や、ソウルを「重大な危険」に陥らせることのない軍事的手段があるとのマティス国防長官の発言などを考慮すれば、北朝鮮の第6回核実験核実験成功と日本を飛び越え3700km飛行した「火星12号」ミサイル発射後に米国首脳の選択肢はほぼ固まったように見える。ホワイトハウスのマクマスター国家安保補佐官も「必要であれば軍事的選択肢の準備に早急に取り掛からねばならない」と述べた。
 外交的圧力の効果を高めるための駆け引との見方もあるが、以前とは異なり軍事オプションを含めた圧力路線に的を絞ったものであるのは間違いない。

軍事オプション発言の背景に軍事行動支持世論

 米世論調査会社ギャラップは9月15日、北朝鮮の核・弾道ミサイル問題で平和的解決が不可能となった場合、米国民の58%が軍事行動を支持すると回答したとする調査結果を発表した。2003年1月に行われた同様の調査では47%だったが、今回は過半数に達した。
 調査は、北朝鮮が6回目の核実験を強行した後の9月6~10日に電話で行われ、1022人から回答を得た。党派別では共和党支持者の87%が軍事行動を支持したのに対し、民主党支持者では37%にとどまった。無党派層の軍事行動支持は56%だった。
 外交・経済的圧力を通じた平和的解決は「可能」であるとの回答は50%で、03年調査の72%から大幅に下落した。今回の調査で平和的解決は「できない」との回答は、03年調査比で25ポイント増の45%だった。
 一方、北朝鮮が向こう6カ月の間に米国を攻撃する可能性については59%が「恐らくない」と答えた。
 ギャラップの調査担当者は「米国民が今後、平和的解決への取り組みは無駄と判断した場合、先制軍事行動を支持する声は上昇するだろう」と予測した(産経新聞2017・9・16 )。

「米国人避難作戦」の米実務者が訪韓

 米国のエリザベス・コードレイ国防次官補代理(計画担当)が、北朝鮮による6回目の核実験直後に訪韓し、韓国に居住している米国人の避難作戦(NEO)を点検していたことが19日までに分かった。そのため「米国が北朝鮮に対する軍事行動を準備しているのではないか」との観測も出ている。在韓米軍はコードレイ氏の来韓について「定例の点検活動の一環」と説明した。
 コードレイ氏は9月13日、大邱にある在韓米軍の第19遠征支援司令部を訪問し、サリバン司令官との会議に臨んだという。コードレイ氏は在韓米軍の対北任務・防御・準備態勢などについて話し合った後、在韓米国人の避難作戦と前方移動作戦についても理解を深めたという。第19遠征支援司令部は、在韓米軍の戦闘部隊を支援する部隊で、憲兵・輸送・装備部隊などがある(朝鮮日報日本語版2017・9・19)

 猛烈に反発する金正恩、異例の声明を発表

 こうしたトランプ大統領の国連総会の基調演説に対して21日、金正恩委員長は党中央委員会の庁舎で初めてとなる異例の国務委員会(最高権力機関)委員長声明を発表し「トランプが世界の面前に出て国家の存在自体を否定し、侮辱して我が共和国をなくすという歴代最も暴悪な宣戦布告をしてきた以上、我々もそれに相応した史上最高の超強硬な対応措置を深重に考慮するだろう」と話した。 また、彼は「私は朝鮮民主主義人民共和国を代表する人として我が国と人民の尊厳と名誉、そして私自身のすべてをかけて我が共和国の絶滅を口にした米国統帥権者の妄言に対する代価を必ず支払わせるだろう」と明らかにした。 そして「私はトランプが我々のどの程度の反発まで予想してそのような奇怪な話を吐きだしたのかを考えている」とし「トランプが何を考えようが、それ以上の結果を目のあたりにすることになるだろう」と主張した。
 金正恩委員長はトランプ大統領の「挑発」に乗っておびき出されたようだ。トランプ大統領は前言を翻すことに大した困難はないが、絶対権力者の金正恩は自分の言葉を翻すことはできない。この声明で金正恩は一層過激な挑発に出るしかなくなった。米国はその時を待ちかまえるだろう。グアムに向けてミサイルを発射すれば個別的自衛権を発動するだろうし、金ヨンホ外相が言及したような太平洋上での水爆実験を行えば、全世界いや人類の敵として金正恩を一気に追い込むだろう。
 これまで金日成・金正日がこのような声明を出さなかったのは、前言を翻せない絶対権力者としての立場をわきまえていたからだ。拉致謝罪を行った金正日がどのような苦境に遭遇したかを見ればそれはよくわかる。
 政治的に未熟な金委員長は血気にはやりトランプ大統領の挑発に乗ってしまったが、その背景にはもちろん追い詰められる金委員長の焦りがある。
 米朝の緊張はいよいよ最終段階を迎えたと言える。米国はこの「金正恩声明」(21日)直後も手を緩めず軍事的圧力を強めた。23日夜間、グアム・アンダーソン基地に配置された戦略爆撃機 B-1B ランサー数機と沖繩に配置された F-15C 戦闘機数機は、北朝鮮に最接近し威嚇飛行を行った。米国の爆撃機と戦闘機が北朝鮮近くの公海上で示威飛行したのは1953年停戦協定締結以後初めてである。これに対して北朝鮮は何ら対抗できなかった。金委員長は地下バンカーで肝を冷やしたと思われる。
 この対決で、国際社会を敵に回し政治的孤立を深める金委員長に勝ち目はない。金委員長が「狂人」でなければ北朝鮮が何らかの形で対話に出てくるだろう。

2、決断を迫られる日韓

 北朝鮮は米国だけでなく日韓に対しても度を越した脅迫を行っている。「取るに足らない日本列島の4つの島を核爆弾で海中に沈めるべきだ。日本はもはや、われわれの近くに置いておく存在ではない」と威嚇し、韓国に対しても、人々が「集中射撃で親米逆賊集団を掃討しよう」と叫んでいるとした。
 米国と同盟国の日本と韓国は米国の圧力路線と共に歩むのか、それとも軍事行動のリスクを恐れて北朝鮮の核保有を認める「対話」に進むのかの二者択一に迫られている。軍事行動に至れば人的・物的被害が多大であり、核保有を容認すれば北朝鮮の核に脅かされ続ける身の上とならなければならない。どちらを選んでも日韓両国にとっては深刻極まりない道だ。しかしこのどちらかを受け入れなければならない時が来ている。 
 これは日韓両国にとってある意味戦後最大の決断に迫られていると言えるだろう。すでに韓国国内の投資家たちの間では、北朝鮮の核問題をこれまでとは違った角度から注目する動きも出始めている。

1)腹をくくった安倍総理

 安倍晋三首相は9月20日午後(日本時間21日未明)の国連総会で一般討論演説を行い米国との協調を鮮明にした。核・ミサイル開発を進める北朝鮮について、全加盟国に「必要なのは行動だ」と述べ、安全保障理事会の制裁決議を完全履行するよう求めた。演説のほぼ全てを北朝鮮問題に費やす異例の内容で「脅威はかつてなく重大だ。完全に差し迫ったものだ」として危機感の共有を図った。
 安倍首相は1994年の米朝枠組み合意、2005年の6カ国合意の裏で北朝鮮が核開発を続けてきたと説明し「対話とは北朝鮮にとって、われわれを欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と批判。北朝鮮との対話は、完全で検証可能で不可逆的な核・弾道ミサイル計画の放棄が条件となるとした上で「そのため必要なのは対話ではない。圧力だ」と述べた。
 また、トランプ政権の「全ての選択肢はテーブルの上にある」とする対北朝鮮政策について米国を「一貫して支持する」と強調。北朝鮮の脅威に対して「日本は日米同盟、日米韓3カ国の結束によって立ち向かう」と語った。
 一方、安倍首相は北朝鮮による拉致問題にも言及した。19日の一般討論演説で拉致された「13歳の少女」に触れたトランプ米大統領と同様に横田めぐみさんの名前を挙げ「一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう全力を尽くす」と宣言した(産経新聞2017.9.21 09:01)
 安倍晋三首相は17日(現地時間)にも、米ニューヨークタイムズ(NYT)に「北朝鮮の脅威に対抗する連帯」(Solidarity Against the North Korean Threat)と題して寄稿し、「北朝鮮とさらなる対話は行き詰まりの道」とし、強力な対北朝鮮圧力を国際社会に促した。

2)金正恩の脅迫におびえる文大統領

 安倍首相と対照的なのが韓国の文在寅大統領だ。対北朝鮮安保政策での迷走で米日からだけでなく韓国民からも非難が噴出し始めている。文政権は口先では最大の圧力に同調すると言いながら、北朝鮮が6回目の核実験を行った直後に人道支援だと言って北朝鮮に対する800万ドルの支援を決定した。この面従腹背の行動にはさすがに韓国民も唖然としている。
 北朝鮮の挑発に断固たる姿勢で臨まなくてはならない米日韓協調において足並みを乱しているのが文大統領だ。トランプ大統領は文在寅政権に対して「物乞いのようだ」と痛烈に批判したと言われるが、この発言に反論する余地はない。
 この不協和音は、一言で言って、北朝鮮にシンパシーを感じるだけでなく、金正恩の戦争脅迫におびえる文在寅氏の本質的弱点がもたらしたものである。まさにそこを突くことこそが金正恩式心理戦の狙いと言える。北朝鮮が完全に核ミサイルを完成させれば、文政権によって米日韓協調体制が崩される可能性は否定できない。韓国国民の安保不安は日増しに深まるばかりだ。
 こうした中、文在寅大統領の支持率は4週連続で低下し、60%台に落ちている。世論調査会社リアルメーターの11-13日の調査の結果(66.8%)に続き、韓国ギャラップの12-14日の調査の結果(69%)でも支持率低下は鮮明だ。支持率だけを頼りに国政運営をしてきた文政権としては、1カ月間続いた支持率低下は深刻だ。

3、もう一つの圧力路線―日韓核保有

 日韓には制栽強化以外に隠れたもう一つの圧力路線がある。それは核保有に進むことだ。核には核で抑止する以外に方法がないとのセオリーによるものである。核拡散防止条約(NPT)には「異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には(中略)この条約から脱退する権利を有する」という条項もある。
 すでに韓国では国民の60%が核保有に賛成している。韓国野党の「自由韓国党」は、1991年の「南北非核化合意」によりに撤去した「戦術核」の受け入れを主張し1000万人署名運動に乗り出している。米国はこの動きに否定的対応を示しているがその可能性を完全否定していない。
 韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防長官は訪米時マティス国防長官との会談で韓国への戦術核の再配備や原子力潜水艦配備問題についても言及した。米NBC放送は9月8日(現地時間)、ホワイトハウスと軍関係者の話を引用し、「韓国の要請があれば、トランプ政権が韓国に戦術核を配備することも排除していない」と報じた。しかし文在寅大統領は「戦術核兵器の搬入には同意しない」と明言しており、それを受け国防部の宋永武長官も口を閉ざした。
 日本でも最近自民党の石破茂元幹事長が非核3原則のうち核の持ち込み禁止をはずし戦術核を持ち込むべきだとの主張を表面化させた。韓国とは違い国是としての非核3原則の壁があるために「作らず、持たず」には手を付けず北朝鮮の対応次第ではいつでも撤回できる「持ち込まず」の所を修正しようとしたものだと思われる。
 ドナルド・トランプ大統領は大統領選候補だった昨年3月29日、CNNとのインタビューで「韓国と日本が核兵器を持つのは時間の問題で、彼らはどうせ持つことになっている」と話した。当時、司会者のアンダーソン・クーパー氏が「韓国と日本が核兵器を持っても良いということか」という質問に「隣接した北朝鮮が核兵器を持っている状況で彼らも絶対的に核を持つだろう」と答えた。トランプ大統領は同年5月、他の放送では「韓国と日本が核保有国になることを許容するつもりか」という質問に「米国は世界の軍隊、世界の警察の役割を続ける余裕がない。彼らは彼ら自らが守らなければならない」と話したこともある。米国元国務長官のキッシンジャー氏も北朝鮮の核ミサイルが実践配備されれば日本の核保有は現実化するとの見方を示した。
 日韓の核保有は核不拡散体制に逆行するものなのでとてつもない副作用をもたらすだろうが安保上の効用もまた絶大だ。北朝鮮に対してだけでなく中国を動かす強力な力となる。もしも日韓が核保有に進めば中国は飛び上がって北朝鮮の核を抑えにかかるだろう。コンドリーザ・ライス元米国務長官は回顧録で「日本でそのような声(核武装)が出るのは意味がある。北朝鮮が核開発をするように放置すれば、深刻なことが起きるということを中国も骨身に染みるほど悟るだろう」と書いた(中央日報日本語版2017・9・12)。
 日韓の核保有が核不拡散体制に不都合というなら、北朝鮮の核ミサイル放棄までの限定的オプションとし国際社会に承認を得る方法もある。日韓の核と北朝鮮の核の交換に限定して承認を受けるという方法だ。毒には毒で制する荒治療だが、日韓の時限付き核保有で北朝鮮の核放棄をもたらすことができれば核不拡散体制も維持できる。すなわち核不拡散のための核保有である。現実的には多くのハードルがあると思われるが、同盟関係にある米国さえ認めれば可能なことだ。後は国民による承認だが、血一滴流さず北朝鮮を抑え込む方法はこれ以外にないと説得すれば可能性はあるだろう。

以上

 
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