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2007.5.6

緊張続く朝日関係

強化される日本の経済制裁

 日本政府は去る4月5日、昨年10月の北朝鮮核実験を受け、日本独自の制裁措置を半年間延長する方針を決めた。4月13日に期限切れを迎え、法律に基づく延長手続きが必要な北朝鮮船舶の入港と北朝鮮からの輸入の全面禁止措置は10日の閣議で延長が決定された。北朝鮮国籍保有者の原則入国禁止も継続される。
 日本政府は、昨年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射後、貨客船「万景峰号」の半年間の入港禁止や北朝鮮当局職員の入国の原則禁止などを決定。10月9日の核実験発表後には、この制裁を強化する形で船舶全体の入港禁止などを決めた。入港・輸入の全面禁止は同13日に閣議決定し、14日に半年の期限付きで発動していた。
 日本政府はまた、国連安全保障理事会の決議に基づいて実施している、北朝鮮関係者への資金移転禁止や「ぜいたく品」の輸出禁止の措置も継続する。
日本政府の、こうした対応に対して、北朝鮮は連日のごとく日本非難を繰り返している。
 4月7日、北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は、拉致問題を持ち出すことで「6か国協議を妨害しているだけだ」と日本を非難する論評を掲載し、4月27日にも「日本は6者会談を妨害する邪魔者」との論評を掲載した。またこれに並行して北朝鮮政府は各機関、企業所、軍隊などの日本産中古車の使用禁止令を下し、向こう3年間に日本製品を追放せよと指示したと言う。
 だが北朝鮮が神経を尖らせているのは、こうした経済制裁よりも朝鮮総連に対する日本政府の対応だ。北朝鮮はむしろこちらの方に危機感を強めている。

日本当局の相次ぐ朝鮮総連機関強制捜査

 警察庁の漆間巌長官は去る1月18日の記者会見で、拉致問題への取り組みについて「拉致被害者の帰国に向け、北朝鮮に日朝間の話し合いをさせるのが警察の仕事」とし「そのためには北朝鮮の資金源について『ここまでやられるのか』と相手が思うように事件化して、実態を明らかにするのが有効」と指摘した。
 こうした警察当局の姿勢は、朝鮮総連とその傘下団体に対する相次ぐ捜査と関係者に対する逮捕として示された(資料)。
 朝鮮総連とその関連団体に対する日本当局の厳しい姿勢に対し、北朝鮮は朝鮮総連結成以来の「危機」と認識し、朝鮮総連に最大限の抵抗を指示する一方、国際世論の喚起に力を入れている。
 3月28日にも、ジュネーブの国連欧州本部で開かれている国連人権理事会の特別報告セ ッションで、北朝鮮代表部の崔明男(チェ・ミョンナム)参事官は、「日本政府による朝鮮 総連と在日朝鮮人に対する政治弾圧と人権侵害は、ほかに例を見ないほど残忍だ」と述べた。そして朝鮮総連本部と支部、学校への家宅捜索や関係者の逮捕などを挙げながら、「国際法などに反する犯罪行為」だと非難した。日本の「弾圧」と処罰の即刻中断を促した後、人種差別などに関する国連の特別報告者が日本政府に圧力をかけるよう要請した。

朝鮮総連に衝撃を与えている「渡辺秀子さん事件」の本格捜査

 こうしたさ中、日本の警察当局は、「渡辺秀子さん事件」を正式に拉致事件と認定し、警視庁と兵庫県警は3月5日に合同で捜査本部を立ち上げた。
 この事件は、34年前北朝鮮工作組織が起こした事件とされているが、北朝鮮から派遣された工作員組織ではなく、朝鮮総連の元第一副議長である金炳植直属の工作組織が関与した事件である。朝鮮総連最高幹部の工作組織が拉致事件と関わったという意味で、これまでの拉致事件のように朝鮮総連が第三者的対応を取れない面がある。
 現在朝鮮総連が最も恐れているのは、「破防法」の適用だ。2002年9月17日金正日国防委員長が「日本人拉致」を謝罪した以降、朝鮮総連は一貫して「破防法」の適用を恐れている。だからこそ朝鮮総連は「拉致」と一切関係がないと主張してきたのである。北朝鮮が「拉致問題解明」を恐れるのは、政権維持に支障があるということだけではない。朝鮮総連関係者の関与が明らかになることも恐れているのだ。
 警視庁と兵庫県警は4月末、拉致の主犯とみなされている長野県出身の木下陽子(洪寿恵59、昭和1977年帰化)に対して逮捕状を取り、国際指名手配を行った。

資料

日本当局による総連関連施設と関係者に対する強制捜査
(2005年10月〜07年4月現在)

2005.10.14  11ヶ所

・捜索対象と容疑
 在日本朝鮮人科学技術協会(薬事法違反)、科協中央非常任顧問の自宅(同)、科協中央副会長の自宅(同)、西新井病院内の財団法人金萬有科学振興会と関係者、関連施設など(同)
・動員された警察人員(推定)    
 警視庁公安部外事課など百数十人
・逮捕者              
 科協中央非常任顧問
 科協中央副会長

2006.03.23   6ヶ所

・捜索対象と容疑
 大阪府商工会(国外移送目的拐取と監禁などの容疑)、大阪府商工会元理事長の自宅と店舗(同)、大阪府商工会元会長の娘の自宅など(同)、
・動員された警察人員(推定)    
 警視庁公安部外事課、大阪府警など200人

2006.06.27   2ヶ所

・捜索対象と容疑
 岡山県本部内の科協支部事務所(詐欺)
 科協中四国支部会長の自宅(同)
・動員された警察人員
 岡山東署外事課9人

2006.11.27   7ヶ所

・捜索対象と容疑
 東京都本部(薬事法違反)、東京・渋世支部(同)、祖国訪問新潟出張所(同)
 世田谷区(渋世支部管下)同胞女性の自宅(同)、日本人経営の病院と医師の自宅(同)、新潟市内の運輸会社(同→11.28)
・動員された警察人員
 警視庁公安部外事課、新潟県警など300人

2006.11.29   4ヶ所

・捜索対象と容疑
 科協中央顧問の自宅(労働者派遣法違反)、川崎市内の人材派遣会社と社長の自宅(同)、群馬県内の派遣先会社(同)
・動員された警察人員 
 神奈川県警外事課
・逮捕者  
 科協中央顧問夫妻(東京都世田谷区居住)

2006.12.03  2ヶ所

・捜索対象と容疑
 東京都本部職員の自宅(薬事法違反)、東京青商会職員の自宅(同)
・動員された警察人員 
 警視庁公安部外事課など80人

2006.12.05  7ヶ所

・捜索対象と容疑
 兵庫県商工会館(税理士法違反)、阪神経理室(同)、阪神経理室元職員の自宅(同)、尼崎市内の警備保障会社と社長の自宅(同)、伊丹市居住同胞商工人の自宅と会社(同)
・動員された警察人員 
 兵庫県警外事課など170人
・逮捕者  
 阪神経理室元職員

2007.02.05  10ケ所

・捜索対象と容疑  
 北海道本部、札幌商工会など約10カ所(脱税、税理士法違反)
・動員された警察人員
 札幌地検と北海道警
・逮捕者 
 「だるま」経営者や商工会幹部ら4人

2007.04.25  4カ所

・捜索対象と容疑
 在日本朝鮮留学生同盟  朝鮮問題研究所  関係女性(55)の荒川区内の自宅など4ヶ所     渡辺秀子さん事件 二児拉致容疑
・動員された警察人員
 警視庁公安部100人    午前8時20分ごろ
・逮捕者
  公務執行妨害で1名 

                                以上

 
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