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2006.3.26

張成沢訪中の狙い

張成沢朝鮮労動党勤労団体及び首都建設部第1副部長が3月 18日、経済視察団30人前後とともに高麗航空で北京首都国際空港に到着した。張副部長は武漢、広州、深センなど、金総書記が1月に訪問した地域を視察し、25日再び北京に入った。
張副部長は、金正日(キム・ジョンイル)総書記の実妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の夫。張第1副部長は2年ほど失脚状態にあったが、昨年末に復帰、最近金正日の慈江道江界の時現地指導にも随行したとされる。このことから金正日の補佐役としての地位を相当部分回復したものと分析される。
しかし彼の部下たちは復活しておらず、権限が大きく縮小されたことは否定できない。とはいえ彼ほど金正日の表裏と意中をよく知る人物は北朝鮮に存在しないのも確かだ。
*張成沢
1946年 2月、江原道チォンネ郡の平凡な家庭で生まれた彼は、金日成総合大学を卒業した直後、現在の夫人である金敬姫軽工業部長と結婚、労動党平壌市委員会指導員、党組職指導部責任指導員を皮切りに党幹部生活を始めた。
去る 1972年朝鮮労働党組職指導部課長を歴任し、党青年及び 3大革命小組副部長(1981)、第1副部長(1985.7)、部長(1989.4)を経て 1992年 12月党中央委員となり、1994年 9月には党組職指導部行政担当(司法、検察、人民保安省など) 第1副部長となった。だが2004年にこの職責を解任された。今年の一月に復帰し、現在首都建設部第1副部長として活動している。

そうした張成沢訪中の狙いはどこにあるのだろうか。

張成沢訪中の狙いは、 1月の金正日の訪中を実務的に補完し、いかにも北朝鮮が中国式改革開放に向かうかのごとき「幻想」を撒き散らすことにある。したがって張成沢は金正日同様中国の開放都市を視察して随行経済官僚とともに中国の経済関連党官僚、企業家たちと会い対外的に北朝鮮の改革開放ジェスチャーを見せることに余念がなかった。
特に北朝鮮と中国間の経済協力問題を集中的に論議したようで、新義州経済特区再推進を含めた豆満江流域開発など広範囲な経済協力問題や中国の対北支援問題を話し合ったと観測される。
これは偽造紙幤問題で隙間風の入った中国との関係を修復するための「手土産」であることはいうまでもない。この手土産で中国からの援助も引き出し、関係の修復も出来れば一石二鳥である。だがこれは主要な目的ではない。

張成沢訪中の主要な狙いは、偽造紙幤問題を含めた対米関係改善問題である。

張成沢第一副部長は、金正日の「肥溜め」といわれるぐらい、彼のあらゆる不正腐敗に手を染めてきた。もちろん偽造紙幤問題にも関わっている。今回の復活も一部韓国メディアが主張する「改革開放の旗手として」ではなく、偽造紙幣問題をはじめとした米国の金融取締りの解決にあると見られる。偽造紙幣問題などの処理には、金正日の意中を最も正確に汲み取る張第一副部長以外には考えられないからだ。
特に去る 3月 7日李根北朝鮮外務省アメリカ局長が、ニューヨークでの偽造紙幤問題などに関する米-朝接触の後、帰国途中、北京に立ち寄ったことが確認されているが、これは今回の張副部長訪中の下準備だった可能性が高い。
金正日は偽造紙幤問題などで窮地に陥っており、経済分野で中国式改革開放に向かうポーズを取りながら中国側の外交的支援を得ようとしている。しかし金正日にとっての「経済改革」は「経済特区」の拡大による外貨収奪システムの強化であり、決して中国式改革開放ではないことは明らかだ。最近の延辺からの情報によっても、金正日は今年、新義州特区の再推進と南浦の経済特区を進めようとしているという。
また、偽造紙幣問題と関連して六カ国協議の再開問題も調整したと見られる。
改革開放問題に限った実務目的なら朴奉柱首相で十分のはずだ。金正日が敢えて中国との関係がスムーズな張成沢第1副部長を送ったのは、朝鮮労動党と中国共産党間の重要な戦略的問題、特には六カ国協議再開問題の調整があると見られる。中国側が安心して意中を伝達できる側近の訪中を要求したことは推察に難くない。

 
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