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2007.1.28

改善の兆しが見えない北朝鮮のエネルギ−事情

 北朝鮮の電力事情はこのところ一段と悪化している。北朝鮮は昨年末から電力を政権機関、軍部隊、企業所、農場の脱穀場に集中して配電しているため、中小都市の一般家庭には1日1、2時間かもしくはほとんど供給していないという。こうしたことから昨年11月には「電気を盗んだ者を厳罰に処すという内容の布告文まで発表され、保安署と配電部の電気監督隊が合同で大掛かりな取り締まりを行った。
 冬にもかかわらず最近北朝鮮に蔓延したしょう紅熱と膓チフス、パラチフス、発疹チフスなどの伝染病が流行したのも電力不足と関係しているという。ポンプがまともに稼働しなくなり人々が山や川の水を飲んだためというのだ。
 深刻な状況は平壌にも及んでいる。正月3日間は電気が供給されたものの電力不足のため平壌でも停電と断水が繰り返されている。朝鮮総連機関紙朝鮮新報ですら最近「平壌市内では、日に2時間程度の停電、断水が起こる」、「ガソリンが十分ではないようだ。日曜日は基本的にノーカーデーであるし(ただし、公用車や大使館職員などの滞朝外国人は別)、基本的に、自動車優先社会である。 理由は、自動車が一旦停車を繰り返すと、それだけガソリンのロスであり、結果的に国全体のガソリン事情に響くからである」と報道した(朝鮮新報 2007.1.15)。 人民大衆が主人であると標榜する「主体思想」の国が「自動車優先社会」とはあきれるばかりだが、そこまで北朝鮮は追い詰められている。
 電力不足で列車の運行もままならないようだ。
両江道恵山で中国商人と取り引きするキム・ヨンスク(仮名)さんは、「しょう紅熱のために中断した列車の運行が再開されたという知らせを聞いて、咸興から品物を運んで来る予定だったが、一週間が過ぎても汽車が入って来ない」と悲嘆に暮れているという。1990年代の中盤「苦難の行軍」時にも、電力難のため、新義州から清津に行く列車や、平壌から穏城に行く長距離列車が、1週間〜10日に一度程度しか運行しなかったが、そうした事態が再び生まれている。
 韓国の北朝鮮支援団体「良き友」も最近、機関紙を通じて「咸興市サポ区域の住民は、電気がないため電気製品が何の役にも立たないと言っており、人民班長のある女性は、党の指針を聞くためにテレビやラジオを聞かなければならないのに、電気が来ないため見ることも聞く事もできない。これでどうして党の方針が分かるのか」と嘆いていると報じた。
 *毎日新聞は北朝鮮政権に近い消息筋を引用して18日、「エネルギー問題と関係して朱東一(チュ・ドンイル)電気石炭工業相が更迭された」と報じた。彼は2005年初に「将軍様の別荘の電気を民需用に転用出来ないのだろうか」と発言したことがある。また民需用電力及びエネルギー供給拡大を主張した朴奉珠内閣総理など一部高位級幹部も党から謹愼処分を受けたと伝えられている。
 こうした事情を反映して金正日は、今年の経済現地指導を発電所から開始した。
 1月22日の朝鮮中央放送によると、北朝鮮の金正日総書記は平安北道に新設された発電所で現地指導した際「電力生産を確固として優先させることは人民経済の飛躍的発展を遂げるうえで最も重要な問題の一つだ」と述べ、電力生産の拡大に全力をあげるよう指示したとラヂオプレスが伝えた。   北朝鮮経済逼迫(ひっぱく)の要因であるエネルギー不足は「食糧危機以上に深刻な状態」といわれ、北朝鮮が核問題をめぐる6カ国協議再開に応じてきた要因の一つとなっている。

 
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