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2007.7.13

影響力を拡大するテゴリ=テコ(権力と結びついた仲介商人)

 昨年10月の核実験後、北朝鮮当局は、住民に対し「強盛大国」は実現したと大々的宣伝を行った。この宣伝に対する住民の反応は、一言で言って「騙された」というものであったという。住民が「強盛大国」に対して持ち続けていたイメージは「豊かな生活」であったからだ。
 「生存の責任」は自らが負うしかないという認識が広まるにつれ、北朝鮮住民の間では、商売を職業として選択する「商人化傾向」がひろまっている。また、職場に出てもこれといった仕事がないため、企業にノルマ分のお金を差し出し出勤扱いにしてもらい市場(いちば)などで商売をする人が増えている。労働党幹部夫人まで、物価上昇による生活費不足を補うために、配給されたタバコなどを市場に流して、お金を稼いでいると脱北者は伝えている。
 「商売」に明け暮れる住民は、昨年の核実験も「金儲け」と結びつけている。経済制裁強化を予測し、資金のある人たちは「不足する商品」を買占めたという。その中核を占めているのが「テゴリ=日本語のテコがなまったもの」たちだ。彼らは中央や地方の権力者たちと結びつき北朝鮮経済の命脈を握りつつある。
 「テゴリ」は一般住民の必需品だけでなく軍や党幹部の必需品まで「供給」しているという。すでに商品流通は彼らの手を経なければ成り立たないところまできている。中朝国境での貿易だけでなく、韓国や諸外国から入ってくる「物資」の流通も彼らを経由しなければスムーズに進まないという。もちろん「テゴリ」たちが手にした利益の少なくない部分が「権力者」にワイロとして渡されることは言うまでもない。
 こうした層が現在北朝鮮の富裕層として育っているが、歴史的に見るならば封建時代末期に登場した「問屋的商人」に似ている。また権力と結びついて利益を貪るという面では、1945年解放直後、米国の援助物資(小麦粉、砂糖、綿糸)を不正に手に入れ太っていった韓国の政商に似ている。
 2002年の7・1措置以降、韓国の生産原料と資材を流通させる社会主義物資交易市場、消費財中心の供給を担当している総合市場、中国と合弁で運営されている輸入物資交易市場などの市場が全国で運営されているが、これらすべてに特権階層と結びついた「テゴリ」が介在している。
 この「テゴリ」といわれる層は、当初北朝鮮には、存在していなかったが、在日朝鮮人が1960年代に北朝鮮に帰還したあと、彼らを通じて日本から物資が入り込み「闇市場」が形成されたことで発生した。 それが公然と力を得始めたのは2002年の「71日措置」以降だ。彼らは中国の「太子党」のような元老の息子たちとの結びつきを強めその庇護を受けながら成長した。
 元官僚だったある脱北者は「李乙雪(リ・ウルソル)人民軍元帥の息子李・ジョンギが 軍の外貨を稼ぐ際、一度に120万ドル儲け‘仲介王’というあだ名がつけられた。彼の家 は大型の水族館まで備えており、120坪の一戸建てだ」と話す。朝鮮労働党の組職指導部軍 事担当李・ヨンチョル第1副部長の息子も、中国との貿易を独占し、100万ドルの資産を集 めたとされている。
 また昨年12月、清津のある鉄道局長(中堅幹部)が不正蓄財で摘発されたのだが、彼が隠し持っていたのは、金4kg、ドル9kg、ウォン38kg(通貨が多すぎてその場で数えられないため重量で表示している)に達したという。鉄道は物流の基幹部門であるためこうした不正の温床となりやすい。
 表面的に「金儲け」が最も活発な部門は、サービス業種だ。機関やコネを持った個人が経営する飲食店が次々と開店し、しのぎを削るようになった。
 「テゴリ」は今、農業や鉱業にまで手を伸ばしその支配地域を広げている。金正日政権が改革解放に向かわず、引き続き閉鎖社会のなかで独裁権力を維持すれば、北朝鮮にはルールに基づく(法に基づく)市場経済は育たず、これら「テゴリ」と呼ばれる「仲介商人」が「マフィア経済」を形成し北朝鮮経済を牛耳る可能性が高い。

 
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