封建階級社会を脱していない北朝鮮
李ジュイル(北朝鮮脱出人権活動家)
ニューライトホームページ 2006/02/24
金正日独裁政権下で中産層の登場は不可能
金大中(DJ)前大統領は 2月23日午前、ヨルリンウリ党指導部の礼訪を受けた席で “4月の訪北が 6月に持ち越されて残念だが地方選挙(5月31日)以後に行きなさいという国民世論が多くてそうする事にした”と言ったと伝えられた。北朝鮮の返事がなくて持ち越されたことをいわゆる “国民世論”に押し付ける恥ずかしい言動だ。
ウリ党のウ・サンホ代弁人はこの日午前、 DJ訪問を終えて党指導部との面談で、DJが “北朝鮮経済がよくなれば中産層も増えるようになり、この中産層は民主化を要求することになる”と言ったと伝えた。産業革命以後中産層が形成されたヨーロッパ社会のデモクラシー発展を念頭に置いての発言のようだ。ただ、DJは “時間が長くかかること”という条件をつけたという。DJ 前大統領のこの一言は、彼が北朝鮮の社会構造を把握していないということを証明している。
残念だがDJの期待は幻想だ。北朝鮮が現政治体制を維持する限り中産層が存在することができない。北朝鮮の現体制は封建制度、すなわち階級化された社会以外の何ものでもない。
DJが例にあげた当時のヨーロッパ社会は、資本主義の発展過程であり、中産層が増える十分な条件を持っていた。しかし北朝鮮は、ヨーロッパ社会とは違い、封建社会から資本主義を飛び越えて社会主義を目指した。しかし金日成を引き継いだ金正日時代になっても封建社会からぬけだせないでいる。
例えば北朝鮮にはいまだに封建時代の身分制度が維持されている。すなわち個人の出身成分を基準にした階級化した社会が存在している。即ち住民を核心群衆(28%)、複雑群衆(45%) 敵対群衆(27%)に分け階級化しているのだ。
核心群衆は北朝鮮社会体制を実質的に導く指導的階級で全住民の 28%を占めている。特にこの階層の主要部分である労動党員と官僚たちは、北朝鮮でインテリと呼ばれる「専門知識と技術を持って精神労動に携わる社会階層」に属している。
この核心階層の内、最高の上流階層はいわゆる「白頭山脈」だ。ここには金日成、金正日と彼の家族及び親戚ら、そして金日成と抗日パルチサン活動をした人々とその家族たちが含まれている。彼らは衣食住および各分野での最高の特権を享受している。
白頭山脈の次の階層は党中央委員、内閣の長官級以上、労動党の副部長級以上、軍の大将級以上など高位官僚と軍の幹部たちであり、かれらは物資供給等級で 1等級を占めている。また彼の家族たちも社会的に優遇され、衣食住を含めた各種分野で物質的特恵と特権を享受している。この核心階層の大部分は平壌を含めた大都市に住んでいる。この層がいわゆる “両班”たちだ。
基本群衆は、危機状況では信任できない部類に分類された北朝鮮体制の中間階層だ。それは一般労動者・技術者・農民・事務員及びその家族たちで構成されている。かれらは制限された収入と配給で生活しており、地方の中小都市と農村等に住んでいる。かれらには医療恩恵など国家的恩恵授与が十分ではなく、場合によっては公民としての権利が制限されたりする。いわゆる“常民”たちだ。
複雑群衆は 「階級的敵対者」と 「民族的敵対者」で構成されており、絶え間ない監視と統制の対象だ。いわゆる不純分子、反動分子たちで、この烙印を押された人々には社会進出の機会が基本的に封鎖されている。一言でいえばいわゆる “奴婢”のような人たちだ。
これらの人たちは強制労動・強制収用・公開処刑など人権蹂躙の主要対象でもある。
このように出身成分による社会差別構造を維持している北朝鮮が、経済を発展させられるわけがないし、発展したとしても現状を超える事はない。封建社会で常民が両班になれず、奴婢が常民になれないように複雑群衆が核心群衆になれないし、敵対群衆が複雑群衆にはなれない。一握りの核心群衆と複雑群衆間の貧富の格差、すなわち両極化だけ加速化する事となる。中産層などは増加しない。
|