北朝鮮・開城で行った南北縦断鉄道「京義線」「東海線」に関する実務協議(第12回南北鉄道・道路連結実務接触)で、5月12日に韓国と北朝鮮が合意した京義(キョンイ)線と東海(トンヘ)線の列車試験運行が24日、北朝鮮の中止通告により、実現不可能となった。
北朝鮮は同日、鉄道・道路連結実務協議の団長名義で、韓国側に電話通知文を送り、「25日に予定されていた列車の試験運行について、軍事保障の合意がないうえ、韓国側の親米極右保守勢力が不安定な情勢をつくっているため、試験運行は予定通りできない」ことを明らかにした。 このため、6月末の金大中前大統領の列車による訪朝計画も、実現が不透明となった。 韓国は、北朝鮮の合意破棄の対応策として、北朝鮮に対する軽工業原資材の提供や、コメや肥料などの支援を、縮小または中止する案を検討中だという。
韓国は23日午前、北朝鮮から軍事保障の合意を取り付けるために、列車に搭乗する韓国側リストを知らせるという考えを北朝鮮側に伝えたが、北朝鮮は同日午後、軍事実務協議の団長名義の電通文で「西海(ソヘ・黄海)上の衝突防止のような根本問題が解決されない限り、いかなる問題も解決されない」として、韓国側の提案拒否を通告してきたもの。
23日に北朝鮮軍部が、西海上の北方境界線(NLL)の再調整が実現しなければ、列車の試験運行を拒否するという意思を伝えていたにもかかわらず、韓国政府は、24日に北朝鮮側が試験運行の中止を通告するまで、これを公表しなかったことで、政府内でも批判が出ている。 試験運行の成功を楽観するあまり、重大な戦略的・政策的判断を誤ったのではないかということだ。
申彦詳(シン・オンサン)統一部次官は同日、記者会見を開き、「北朝鮮側が、試験運行を一方的に延期したことについて、大変遺憾に思う。特に、韓国側の情勢について途方もないことを云々するのは、正当ではない」という内容の統一部声明を発表した。
しかし韓国政府は、南北閣僚級会談と経済協力推進委員会は、予定通り推進する方針だという。
金大中訪朝を前に、北朝鮮がまたもや「軍部の反対」を口実に「難癖」をつけてきた格好であるが、これは金正日国防委員長の常套手段である。交渉相手を困難な状況に追い詰め、そこからより多くの「獲物」を得ようとするこの手法は、米朝会談でも朝日首脳会談でも使ってきたものであり、その典型は2000年6月の南北首脳会談であった。そこでは最後までソウル答訪を渋り、いかにも周りの反対を押し切ってそれを約束したかのように見せかけ、金大中を有頂天にさせた。しかし「適当な時期に」とされた「約束」は今も果たされていない。そして今また金大中氏は「恥じらい」もなく金正日のもとを訪れようとしている。
金正日国防委員長は、この「訪朝」でどのような演出を行うのか、またいかなる術数で韓国からの「贈り物」を得ようとしているのか、成り行きが注目される。 |