3日間の北朝鮮訪問を終えたソン・キム米国務部韓国課長は、平壌(ピョンヤン)発の高麗(コリョ)航空で2月2日北京の国際空港に到着した。キム課長は、記者に「訪問期間に北朝鮮外務省の高官と核申告関連問題を議論した」とし「北朝鮮がまだ核申告の目録を提出していない」と明らかにした。核プログラム申告問題でこう着している6カ国協議の突破口は用意されなかったということだ。
一方、朝鮮中央通信はこの日、キム課長の訪朝について「米国務部代表団との討議は実務的な雰囲気の中で進められた」と伝えた。 また「昨年6カ国協議で合意した10・3合意の履行について議論した」と明らかにしたが、具体的な内容については言及しなかった。
一昨年の北朝鮮核実験で北朝鮮の核兵器開発とその所有が世界に明らかになったが、1994年の「米朝ジュネーブ枠組み合意」時点では核開発を徹底的に否定していた。今回も「ウラン濃縮プログラム(UEP)の否定で6ヵ国協議がこう着状態に陥っているが、前例から見てUEPを隠している可能性が高い。
そこで参考のため1991〜1993年にかけて核開発を否定し欺瞞し続けた「金日成・金正日語録」を紹介する。
1、核兵器開発を否定する金日成語録
@「エクアドル左翼民主党代表団との談話」
1991年5月3日
「米国はわれわれに対してありもしない「核問題」を持ち出して、わが国の情勢を緊張させています。米国の人たちはわれわれが核兵器を生産しているとして国際原子力機構の視察を受けなければならないと大騒ぎしています。われわれは核兵器を作る力もないしまた作ろうともしていません」(金日成著作集4巻62頁、1996年朝鮮労働党出版社)
A「ブラジル10月8日革命運動代表団との談話」
1993年4月5日
「わが国は非核平和愛好国家です。われわれには核兵器を作る意思も能力もありません。われわれがこれについて明確にしたのは一度や二度ではありません。われわれは核兵器を作っても使うところがありません。・・・われわれは核武器を持って米国と対決することも出来ません。米国には核武器がたくさんあります。・・・米国は核兵器を運ぶ軍艦や飛行機を持っていますがわれわれにはそのような手段もありません」(金日成著作集44巻143頁、1996年朝鮮労働党出版社)
B「祖国統一の唯一の出口は全民族の大団結だ」
米国ウイリアム・ケリー大学高麗研究所所長との談話
1993年4月10日
「米国はわれわれが1000kmの射程距離をもったミサイルを持っていると騒いでいるが、われわれにはそのようなミサイルもありません。米国人はわれわれに核兵器がないということをよく分かっているのに「核問題にかこつけて騒ぎ立てるのは、それを口実にしてわれわれに圧力を加え、われわれを孤立させ、わが国の社会主義を転覆させようとするところにその目的があります」(金日成著作集44巻169頁、1996年朝鮮労働党出版社)
C「現時点で総連の前に提起されるいくつかの課題について」
朝鮮民主主義人民共和国創建45周年在日朝鮮人祝賀団・総連教育活動家代表団・総連分会活動家との談話
1993年9月10日
「米国は人工衛星で撮影したところ寧辺地区に核兵器が存在すると騒いでいるが、われわれには核兵器はありません。われわれはすでに何度も核兵器を作る意思も能力もないということを明らかにしました。それにもかかわらず米国は不当にも核兵器を出せとわれわれに引き続き圧力を加えています」
(金日成著作集44巻227頁、1996年朝鮮労働党出版社)
D「キューバ・プレンサ・ラティナ通信社社長の提起した質問に対する回答」
1994年4月13日
「問―最近米国と南朝鮮当局は朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を生産できる核施設を持っているとして情勢を緊張させています・
これについての貴国の立場はどのようなものですか
答―われわれが自分の力と技術で核施設を建設したのは、国の動力基地をいっそう強化することに目的があり、われわれの核活動は平和的なものです。われわれは核兵器を開発する意思も能力もないということを何度も明らかにしています。・・・わが共和国政府は一貫して朝鮮半島の非核化を実現するために努力しています」(金日成著作集44巻339頁、1996年朝鮮労働党出版社)
E「米国ワシントン・タイムズ記者団が提起した質問に対する回答」
1994年4月16日
「問―米国の情報機関職員は、貴国の武器技術を高く評価しており、朝鮮民主主義人民共和国がすでに1〜2個の核を開発していると見ています。
貴国が核兵器の開発に成功したというのは事実ですか。
答―われわれはすでに核兵器を開発する必要もないし開発する意思も能力もないということを何度も明らかにしています。それにもかかわらず、米国の情報機関は信憑性もない情報資料を捏造し、われわれが核開発を行っているとか核を1〜2個開発したと騒ぎ立てるのは、ほかの政治的目的を追求しているとしか考えられません」(金日成著作集44巻366〜367頁、1996年朝鮮労働党出版社)
F「日本放送協会記者団が提起した質問に対する回答」
1994年4月17日
「問―朝鮮民主主義人民共和国に対するいわゆる「危機」と「核兵器開発説」に対する主席さまの見解はどういったものですか。主席さまはこうした情勢がどのように解決されると考えますか。
答―米国が持ち出したいわゆる「核兵器開発説」はわが国の社会主義像を毀損し、わが共和国を圧殺しようとする政治的目的を追求して捏造したウソです。米国が核問題を持ち出し反共和国騒動を繰り広げるのは何の根拠もないし、いかようにしても正当化できません」(金日成著作集44巻376頁、1996年朝鮮労働党出版社)
G「米国CNNテレビジョン放送会社記者団の提起した質問に対する回答」
1994年4月17日
「問―朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を開発しており、自国内の核開発場所に対する全面的な国際的視察を拒絶しているという米国の主張によって、朝鮮半島での緊張が激化していることに対して世界的が敏感になっています。
朝鮮民主主義人民共和国は核兵器を持っているかまたは持とうとしていますか。
答―現在米国は「核問題」にかこつけてわれわれに対して圧力騒ぎを繰り広げていますがそれは何の根拠もありません。周知のようにわが共和国は非核・平和愛好国家です。われわれには核兵器はないしそれを作る意思も能力もありません。核兵器は今もわれわれにはないが今後もないでしょう」(金日成著作集44巻382頁、1996年朝鮮労働党出版社)
H「ベルギー労働党中央委員会委員長との談話」
1994年6月30日
「米国がひつこくわれわれが核兵器を開発したといってくるので、私は米国の人(注−カーター)と対話しながら、われわれは核兵器を作る必要もないしそれを作る能力もない、われわれが核兵器を開発して何の意味があるのか、米国は核兵器を1万基以上持っているのにわれわれが何のためにそれを1〜2個作って世間の笑いものになるのか、われわれが核兵器を作って朝鮮人同士殺し合いをするのか、われわれはそのようなことはしない、われわれはすでに南朝鮮と朝鮮半島の非核化に対する共同宣言も採択したと言ってやりました」(金日成著作集44巻468頁、1996年朝鮮労働党出版社)
2、核兵器保有を否定する金正日語録
@「在日本朝鮮人祝賀団団員たちとの談話」
1992年2月26日
「現時期、朝日親善運動で重要なことは、朝日国交正常化のための社会的雰囲気をかもし出すことである。いま日本は朝日国交正常化のための会談で、われわれの核問題を口実に引き続き遅延戦術をとっています。われわれは来る4月に最高人民会議を開きわが国に対する国際原子力機構の核査察を承認しようと思います。われわれが核査察を承認すれば米国と日本、南朝鮮でも何らかの変化が起きると思います。われわれは何度もわが国に核兵器がないということを公表したにもかかわらず、敵はわれわれの言葉を信じようとしません」(「在日朝鮮人運動と総連の任務」金正日、184頁、2000年労働新聞出版社)
A「在日本朝鮮人総連合会中央常任委員会責任活動家との談話」
1992年2月28日
「われわれは4月8日ごろに最高人民会議第9期第3回会議を開き、そこでわが共和国政府と国際原子力機構の間で結ばれた核兵器拡散防止条約に伴う担保協定を批准することについて審議しようと思います。最高人民会議において核担保協定が審議され承認されれば核査察問題が解決されるだろうし、そうなれば国際的に大きな反響が起こるはずです。このようにしてわが国において核査察問題が解決されれば、南朝鮮当局者たちがどのような顔でもってわれわれと再び交渉しようと言うのか分りません」(「在日朝鮮人運動と総連の任務」金正日、144頁、2000年労働新聞出版社)
*金正日のこの発言から「核拡散防止条約」の締結を核保有と核開発の隠れ蓑にしようとしていたことが分る。