アメリカの代表的な北朝鮮経済専門家マーカス・ノーランド博士が「北朝鮮に進出した中国企業が携帯電話使用禁止と独断的な法執行に最大の不満を持っている」と明らかにした。
韓国を訪問中のピーターソン国際経済研究所のノーランド選任研究委員は12日、 「デイリーNK」とのインタビューで、北朝鮮に投資しているか、投資後撤収した中国企業300余社を対象に調査した結果に基づき、このように語った。
彼は「大部分の企業が紛争解決手続きの曖昧さに不満を持っていた」と語り、「中国の企業家は事業において非常に慎重で疑り深い。特に彼らは北朝鮮の事業相手に不信感を持っており、手形代わりにドルや元で現金取引をすることを原則」にしていると述べた。
続けて「北朝鮮に進出した中国企業は、北朝鮮投資リスクが非常に高いとしているが、それは投資資産が北朝鮮政権に沒収される可能性のため」と指摘し「そのため多くの企業が設備投資より単純貿易に投資することとなった」と説明した。
北朝鮮食料事情に対する食料農業機構(FAO) の発表に疑問を提起した理由については、「FAOは食糧生産に関する北朝鮮の公式統計に基づいているが、私たちはそれを信じない」と語り、「国連機構は北朝鮮住民の栄養摂取で穀物の比重を20%ほど過大評価している」と指摘した。
そして「過去12年の間、10年にわたって (北朝鮮が) 毎年大変な食糧不足事態だと予測したが、実際には90年代中盤以後大量餓死事態は発生しなかった」と述べ 「(国連が) 現在160万tの食糧が不足しているという主張も受け入れがたい」と語った。
ノーランド選任研究委員はまた、バラク・オバマアメリカ大統領当選者の対北朝鮮政策に関して、多くの韓国人が一方的ハト派政策と誤解しているとも述べた。
彼は「オバマ当選者は、アメリカの目標が、完全で検証可能な北朝鮮の非核化であることを明確にしてきた」と指摘し「もしも北朝鮮が、完全で検証可能な非核化プログラムに応じなければ、アメリカは他の国々と共に新しい制裁措置を取るだろう。したがってオバマ当選者が、宥和一辺倒政策を取ると考えるのは誤解だ」と強調した。
また 「オバマ当選者が金正日とも会うとしたことに対しても誤解がある」としたうえで「オバマ当選者は非常に慎重で自制的だ。それゆえオバマ―金正日会談は当分可能性がない」と予測した。
マーカス・ノーランド選任研究委員とのインタビュー全文
―北朝鮮に進出した中国企業に対して調査をしたと聞いた。調査の目的と結果は何か?
「今回の調査目的は、中国と北朝鮮間の経済統合がどのような方式で進行されているかを研究することだった。そのために北朝鮮に投資、進出した中国企業 300余社に対してアンケート調査を実施した。現在調査データを分析中だ。
この内 50余社は北朝鮮で利益を出せず撤収した企業だ。調査対象企業中の87%が、事業活動の最大の隘路を、携帯電話の使用禁止措置だと指摘した。そして79%が、北朝鮮政府の独断的な法規執行や法規の変更を不満に思っていると答えた。その他貧弱なインフラや過度な規制も問題点としてあげた。
興味深いのは労動者の質に対する不満が最も少なかったという点だが、しかし大部分の企業は紛争解決手続きが脆弱なことに不満を持っていた。
中国の企業人は非常に慎重で疑り深い。特に彼らは北朝鮮の事業相手に不信を抱いているため、手形ではなくドルや元で現金取引をすることを原則にしている。また北朝鮮に進出した中国企業は、投資リスクが非常に高いと評価しているが、これは 投資資産が北朝鮮政権に沒収される可能性のためだ。
その結果、多くの企業は設備投資より単純貿易に投資している」
―あなたは WFPや FAOのような国連傘下も国際機関が、北朝鮮の食糧不足分を誇張していると主張しいるがどうしてそう思うのか?
「北朝鮮の食糧不足分に対する私たちの推定と国際機関の推定が異なる理由がいくつかある。
まず食料農業機構 (FAO)は、食糧生産に関する北朝鮮の公式統計に基づいているが、私たちはこれを信じないという点だ。
また国連の諸機構は北朝鮮住民の栄養攝取で穀物の比重を20%程度過大評価しているという点だ。われわれが下した結論は、このような国連機構の分析は受け入れ難いというものだ。
国連は、過去12年間のうち10年にわたって、毎年、大変な食糧不足事態が起きると予測したが、実際は 90年代中盤以後大量餓死事態は発生しなかった。(国連が) 現在提起している160万tの食糧が不足だという主張も受け入れ難い」
―国連の推定値よりは少ないが、北朝鮮の食糧不足は今後も続くと予想している。どうしてそうなのか?
「われわれは、北朝鮮で食用、家畜飼料、種子で必要な食糧と生産後損失される分まで含めて1年間に約400万トンの食糧が必要だと推定している。北朝鮮が引き続き食糧不足になる理由は、食糧輸入を充分に行なわないからだ。
北朝鮮が消費する食糧の大部分は国内で生産される。その次が外国からの支援分であるが、三番目の外国からの輸入量は大きくない。
北朝鮮経済は、韓国、中国、日本のように工業、鉱業、サービス生産部分を輸出して外貨を稼ぎ、穀物を買うようにしなければならない。これら周辺国はみな、外貨を稼いで、アルゼンチン、オーストラリア、カナダなどから穀物を輸入している。北朝鮮も このようにしなければならない。
したがって北朝鮮経済の最大の問題点は、貧弱な工業生産力および北朝鮮政権が穀物輸入に外貨を投入しない点にある。北朝鮮が食糧不足を解決するためには、他の部分に転用されている外貨を穀物輸入に使わなければならない。
また改革開放によって、工業発展、外貨増加、穀物輸入増加の好循環をはからなければならない」
―李明博政権の対北朝鮮政策方向に対してはどう評価するか?
「人道的支援は無条件で、経済開発支援は条件を付けるという基本的な処理方式は正しい」
―先月に開城工団を訪問したがどんな感じを受けたか?
「二つだ。開城工団内の工場と韓国の工場はほとんど差がなかった。しかし北朝鮮他地域の工場に比べれば非常に良い条件だ。私が北朝鮮労動者なら開城で働きたいと思うだろう。
またこのような工業地域は世界各地に広がっているが、エコノミストたちの研究によれば、工団が投資者と地域経済両方に肯定的影響を与えるためには後方との連携 (backward linkage)が必要だということだ。すなわち地域経済との連携がなければならないのだ。
地域の下請業者たちが開城工団に対する下請を引き受けなければならないが、現在北朝鮮は、開城工団内の道路を作るのに必要な砂利のみを供給している程度だ。
衣類工場のような場合、投資家と北朝鮮経済の両方に大きな影響を与えることができるが、そうするためには纎維、ボタン、糸などを北朝鮮側で供給しなければならない。しかし現在、北朝鮮はこのような材料を量的にも質的にも供給することができないでいる。また韓国企業が求める速度で生産することもできていない。言い換えれば、現在開城工団は、韓国の投資家や北朝鮮経済に対して最大の效率性を発揮できていない」
―開城工団の望ましい未来は何か?
「韓国の対北朝鮮経済協力は、北朝鮮経済の変化を目標にしなければならない。そうするために韓国は開城や金鋼山のような経済区域を増やさなければならない。
もちろん開城工団をどのように拡大するかは政治的な問題だ。しかし経済的見地から見れば、このような波及効果をもっと増やすことが望ましい。開城工団が北朝鮮の真ん中で孤立するのではなく、北朝鮮経済の一部とならなければならない」
―最近北朝鮮は、開城工団を中断させるという脅威を加えているが・・・
「北朝鮮がどのように出てくるかに対する予測はした事がない。しかし開城工団閉鎖脅迫は二つの側面で愚かだ。
第一に、開城工団は北朝鮮にとって利益だ。自分に利益になることを閉鎖すると脅迫することは馬鹿げたことだ。
二番目に、たとえこういった脅迫が実行されないか、実行する意図がないとしても愚かな行動だ。なぜなら韓国の投資家は、こうした脅威に直面すれば投資をふやすどころかむしろ事業を撤収しようと思うからだ」
―アメリカのオバマ次期政権は、どのような対北朝鮮政策を取ると見ているのか?
「多くの部分で現政策が継続される(considerable continuity)と予想される。ブッシュ現大統領は在任期間中、北朝鮮政策を強硬策から交渉に急変させた。この変化は民主党の支持を受けた。ブッシュ大統領の政策変化に対する批判はむしろ共和党から出た。
オバマ大統領当選者はブッシュ大統領が北朝鮮をテロ支援国から解除することを支持した。したがってブッシュ大統領の現政策が、一応引き継がれると見る。
しかし多くの韓国人はオバマ当選者を一方的な鳩派と誤解している。オバマ当選者は、アメリカの目標が、完全で検証可能な北朝鮮の非核化であることを明確にして来た。もし北朝鮮が、こうした非核化プログラムを実行しなければ、アメリカは他の国々と共に新しい制裁措置を取るだろう。したがってオバマ当選者が宥和一辺倒と見るのは誤解だ。
またオバマ当選者が、金正日とも会うとしたことに対しても誤解がある。オバマ当選者は非常に慎重で自制的だ。したがってオバマ―金正日会談は当分の間実現する可能性はない。オバマ当選者は絶対に単純ではない。また急ぐこともしないだろう」
―これから北朝鮮はどのような経済政策を取る必要があるのか?
「私は金正日政権が国内政治において、極度に不安定な状態と見ている。金正日の現健康状態に対しては分からない。しかし私が断言できるのは金正日がいつかは死ぬという事実だ。権威主義体制はリーダーの交替に非常に脆弱だ。特に金正日以後の北朝鮮は深刻な問題に出くわすでしょう。
基本的に北朝鮮は、政治安定を核兵器路からではなく周辺国との関係改善を通じてもたらさなければならない。もし北朝鮮が核兵器をあきらめれば、アメリカ、韓国、日本などが北朝鮮の国際社会に進出することを助けるだろう。
現在北朝鮮は小さくて孤立した国だ。だが中国経済の発展や日本、韓国の発展を見た時、北朝鮮は大きい成長潜在力を持っているといえる。北朝鮮経済が成長できないでいるのは、こうした周辺国経済と交流がないからだ。北朝鮮が周辺国と経済協力を追い求めればもっと多くの繁栄を得るようになるだろう」
[パク・チンゴル記者]