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注目されるボスワース訪朝

2009.12.3
北朝鮮研究室

 韓国を訪れたオバマ大統領は11月19日、韓国大統領府で李明博大統領と首脳会談を行った後、共同記者会見に臨み、「(両首脳が)6カ国協議の枠組みの中で協力し、北朝鮮の核問題について包括的な解決策を模索していく意向を改めて確認した。そしてボスワース特別代表を12月8日に北朝鮮へ派遣し、米朝2カ国間の対話を進めていく」と述べた。米大統領の特使が訪朝するのは、2002年10月(ジェイムズ・ケリー国務次官補)以来7年ぶりとなる。

1、ボスワース代表の権限は「6カ国協議復帰の説得」

 米国のスティーブン・ボスワース対北朝鮮政策特別代表の平壌行きは、以前の特使派遣とは異なり、「ワンポイント訪朝」という性格を持つとされている。クリントン政権時代のウィリアム・ペリー特使(1999年5月)、ブッシュ政権時代のジェームズ・ケリー特使(2002年10月)は、いずれも米朝関係全般に関する「交渉・談判」の権限を持って北朝鮮に向かったが、今回のボスワース代表の訪朝目標は、「6カ国協議復帰の説得」という1点に限定されているという。
  バラク・オバマ大統領がこの点を何度も強調している。19日に行われた李明博大統領との首脳会談でも、「今回の米朝対話は6カ国協議を代替するものではなく、6カ国協議に北朝鮮が戻ってきて会談がうまく進むよう補完するためのものだという指針を、ボスワース氏に与えた」と語った。
  米国側のこうした立場は、米朝対話を6カ国協議に代替しようとする北朝鮮の意図には乗らないという点をはっきりさせたものだ。

  一方ヒラリー・クリントン国務長官は11月19日、在アフガニスタン米国大使館でブルームバーグ通信のインタビューに応じ、「(ボスワース代表は)北朝鮮が検証可能かつ後戻りできない非核化の約束を履行するなら、北朝鮮に大きな利益があるという明らかなメッセージを持っていくだろう」と語り、「米国の立場から、北朝鮮が数年間提起し続けてきた幾つかの問題、すなわち関係正常化、停戦協定を代替できる平和協定、経済支援などを検討することになるだろう」と述べ、北朝鮮が6カ国協議の枠の中で核廃棄への約束を履行した場合の「見返り」を提示した。クリントン長官が「現在の朝鮮半島の停戦体制を平和体制に変える案を話し合う用意がある」と直接主張するのは、異例のことといえる。
  しかし現在北朝鮮は、「敵対関係の解消」という6カ国協議復帰の前提条件を撤回していない。
 
2、北朝鮮の狙いは休戦協定の平和協定への転換

 北朝鮮は、8月のクリントン元大統領の訪朝以降、一歩後退戦術で、南北融和を演出するなど米朝二国間協議に備えた戦術を駆使している。
  金正日国防委員長はその補強策として、10月には温家宝訪朝を異例の歓迎で迎え、11月25日には訪朝中(22日から)の中国国防相(梁光烈)と9年ぶりに会談し、朝中の親密ぶりをアピールするとともに政権の弱体化をカバーした。またロシアのミノロフ議長一行(11月24〜25日訪朝)を受け入れ、ロシアとの連帯も誇示した。
  このように北朝鮮は米韓との対話準備を固める一方、他方では西海(黄海)での軍事挑発も敢行(11月10日)し、ボズワース北朝鮮担当特別代表の訪朝(12月8日)による米朝会談の主要議題が、休戦協定の平和協定への転換であることを強く意識させた。
  そのことは朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が11月23日の論評で、南北艦艇間の銃撃戦は米朝間で朝鮮戦争休戦協定を平和協定に転換する必要性を「立証している」と主張し、異例にもこれまでのように南北関係としてではなく、米国との平和保障体制に関連づけて取り上げたことからも明らかだ。
論評は「朝鮮半島に存在する戦争の脅威除去と北南間の武力衝突を防止する問題は、米国がわが国への敵視政策を撤回し、休戦協定を平和協定に転換した時に、根本的に解決することができる」と指摘、「米国は(北朝鮮との)新たな平和保障体系樹立を選択する勇断を早急に下すべきだ」と強調した。(産経新聞2009・11・23)
  こうした北朝鮮の米朝協議に対する方針に変更がないことは、米国の民間訪朝団によっても確認された。
  米アジア財団のスコット・スナイダー上級研究員ら米国の外交問題評議会(CFR)朝鮮半島政策作業班の代表団を率いて(21日から24日)訪朝していた韓米経済研究所(KEI)のプリチャード所長(元朝鮮半島和平担当特使)は、訪朝を終えた24日、北京空港で記者らに対し、北朝鮮側と6カ国協議や米朝関係などについて意見を交わしたが、北朝鮮側に態度の変化はみられなかったと伝えた(聯合ニュース2009・11・25)。

3、難航が予想される米朝会談

 ボスワース訪朝に関し、韓国政府高官も11月29日、記者団との懇談会で「北朝鮮の立場に変わった兆候は見られない」と述べた上で、「北朝鮮が6カ国協議に復帰するとのシグナルはまだ確認されていない。現時点で見通しは暗いと見るべきだ」と語った(朝鮮日報2009・11・30)。
  同高官はまた「最近、外信(注―産経新聞)で“北朝鮮が6カ国協議への復帰を示唆した”と報じられたが、これは正確な情報ではない。北朝鮮は相変わらず米朝両国が敵対関係から平和関係に変わらない限り、6カ国協議への復帰は不可能だと主張しており、対話の見通しは楽観的ではない」と語った。同当局者は最近訪朝したザック・プリチャード韓米経済研究所(KEI)所長との面談内容を紹介しつつ、「北朝鮮の今後の行動が前向きだとか、期待できるような兆候は見られなかったと聞いている」と語った。
  一方、ボスワース米特使は、訪朝に先立ち12月6日にソウル訪問し韓国側と協議する。特使は韓国当局者らと会った後、12月8日に烏山の米空軍基地から軍用機で訪朝する予定だという。
  自由アジア放送(RFA)は11月27日、消息筋の話を引用し、「ボスワース特別代表、ソン・キム北朝鮮核問題担当特使、国務省と国防総省、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のスタッフで構成された小規模の訪朝団が平壌入りする。訪朝を終えた後、再びソウルに戻り、韓国政府に訪朝内容を報告し、その後日本・中国・ロシアの順に訪問する予定だ」と報じた。
  RFAはまた「ボスワース代表が軍用機で訪朝するのは、今回の米朝会談が“交渉”ではなく“接触”の性格であり、米国側がいつでも対話を中断し、平壌を後にすることができるという意味合いがある」と今回の接触が交渉ではないことを強調した。
  北朝鮮が主張する休戦協定の平和協定への転換が先か、それとも米国が主張する6ヵ国協議への復帰が先か、12月8日から2泊3日で予定されているボスワース訪朝の前途は多難だ。

 
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