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金正恩の危険な心理戦

北朝鮮研究室
2013.3.18

 北朝鮮は3月5日、国連の対北朝鮮制裁強化の動きや韓米合同軍事演習に反発し、朝鮮戦争の休戦協定を白紙化するとの声明を出した。声明では朝鮮人民軍板門店代表部の活動も中断するとした。朝鮮戦争休戦協定の白紙化の期日については、韓米が朝鮮半島有事を想定した定例の合同軍事演習「キー・リゾルブ」が始まる3月11日(〜21日)からとした。
 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議2094が全員一致で採択された3月8日(現地時間7日)には、韓国と米国に対する武力示威と脅迫の強度をさらに高めた。
 金正恩第1書記は7日未明、延坪島(ヨンピョンド)の向かい側にある西部戦線の長在島(チャンジェド)と茂島(ムド)の防衛隊を視察した。視察には、哨戒艦「天安」沈没と延坪島砲撃を主導した金英徹(キム・ヨンチョル)偵察総局長や金格植(キム・キョクシク)人民武力部長らが同行した。金第1書記が長在島、茂島を訪問したのは、昨年8月以来だ。
 この間北朝鮮メディアの挑発も休み無く続いた。労働新聞は8日付で、7日に平壌(ピョンヤン)で開かれた「最高司令部声明支持平壌市軍民大会」を報じ、「無慈悲な正義の銃隊で不倶戴天の敵である米帝と総決算し、祖国統一の大業を成し遂げよう」と扇動した。大会で上将(韓国の中将)の姜杓永(カン・ピョヨン)は、「人民軍将兵は引き金に指をかけ、命令だけを待っている」と主張した。
 北朝鮮の祖国平和統一委員会書記局も同日、声明を出し、「南朝鮮軍は我々に逆らった代価を最終的には破滅で支払うことになるだろう」と脅迫した。
 北朝鮮は11日から通告通り板門店(パンムンジョム)の通信チャンネルを全て切り、本格的な戦闘動員態勢に入った。
 「労働新聞」は10日「陸軍、海軍、航空および反航空軍部隊らと戦略ロケット軍部隊、労農赤緯軍と赤い青年近衛隊は最後の突撃命令を待つのみ」と明らかにした。 北朝鮮は中短距離および新型長距離ミサイルの発射実験などを含め江原道(カンウォンド)元山一帯で陸海空軍、特殊戦部隊などが参加する大規模訓練も準備し、15日午後、東海(トンヘ、日本名・日本海)上で短距離ミサイル2発を試験発射した。
 一方、韓米は予定通り3月1日(〜4月30日)から韓国軍20万人、米軍1万人余りが参加する地上・空中・海上特殊作戦など野外機動訓練であるトクスリ(フォールイーグル−鷲)演習に突入し、11日からはキーリゾルブ合同指揮所演習に入った。 キーリゾルブは指揮所演習なので韓国軍1万人余りと米軍3500人が参加するが、そこにはF-22ステルス戦闘機とB-52戦略爆撃機、イージス艦、原子力空母艦などが動員されている。

1、「停戦(休戦)協定」の破棄とその意味

 北朝鮮は、一方的に「停戦協定」の白紙化を宣言したが、そもそも「停戦協定」は一方的に破棄きるものなのだろうか?
 それについては、停戦協定は、第5条附則で「停戦協定を修正する時には必ず双方の司令官の合意を経なければならない」という内容と、「停戦協定は平和協定に交替させられる時まで効力を持ち続ける」とされている。そのため、国連軍・北朝鮮・中国の3当事者のいずれか一方の否定で修正・廃棄することはできない。しかしいずれか一方がこれを一方的に否定して破棄したとても、それを阻む現実的な手段がないことも事実である。北朝鮮が停戦協定自体を一方的に否定するならば、この条項もやはり無力化する。
 では「停戦協定」が破棄されればどういうことになるのか?
 停戦協定は△第1条 軍事境界線と非武装地帯△第2条 停火(射撃中止)および停戦(戦争中止)の具体的措置△第3条 戦争捕虜に関する措置△第4条 双方関係政府への建議△第5条 付則からできている。北朝鮮が一方的に停戦協定に違反・破棄するならば問題になる大きな部分は上で見た5条と1・2条だ。
 まず停戦協定の否定は第1条の軍事境界線と非武装地帯を否定を意味する。 軍事境界線は1953年当時、国連軍と北朝鮮・中国軍がそれぞれ占めていた地域の間に引かれた線だ。 停戦協定は軍事境界線から南北へ各2kmずつ軍隊を後退させることによって幅4kmの非武装地帯を形成することにした。 従って軍事境界線と非武装地帯を否定することは、南北がそれぞれ保有した領土と政府を事実上否定することになる。 これは北朝鮮がいつでも韓国に軍事的に侵攻できるという意味に解釈できる。
 次に第2条 停火(射撃中止)・停戦(戦争中止)の否定は、それ自体で戦争行為を直ちに再開できるという意味だ。 停戦協定には「双方の司令官は陸・海・空軍のすべての部隊と人員を含むすべての武装力量が南北で一切の敵対行為を完全に停止することを命令し、またこれを保障する」とされている。また、第2条では南北の領土外から軍人と武器の搬入を禁止しているが、これも否定される。第2条には1991年以後、北朝鮮の問題提起ですでに活動が中断された軍事停戦委員会と中立国監視委員会の構成と責任、権限に関する条項も含まれている。 これらの機構もやはり否定される。
 停戦協定は1953年7月27日、マーク・クラーク国連軍総司令官、北朝鮮の金日成朝鮮人民軍最高司令官、彭徳懐 中国人民志援軍司令官の間で結ばれた。 鮮戦争初期に作戦統制権を国連軍総司令官に渡した韓国は国連軍として参加したため独自に停戦協定の当事者にはならなかった。

2、核をフル活用した「心理戦」の狙い

 北朝鮮は金正恩時代に入って、一貫して「戦争か平和か」との脅しで「心理戦」を仕かけてきている。戦争が嫌なら、米国は「平和協定」の締結に応じ、韓国は金大中、盧武鉉政権時代署名した「6・15宣言」と「10・4首脳宣言」を受け入れよというものだ。
 この要求は、昨年末の長距離弾道ミサイル(銀河3号−2)の発射成功と2月12日の核実験成功で一段と露骨・強硬化した。それは、国連安保理決議2094号採択を前にして「停戦協定の白紙化」を宣言し、核戦争を叫ぶ度の超した水準に至っている。
 では北朝鮮は宣言どおり「停戦協定」を一方的に破棄して本気で米韓との「全面戦争」に打って出るのだろうか?それは米韓との軍事力差を考えたときほとんど不可能といえる。同盟国の中国もそれは許さない。
 では「核戦争」「全面戦争」を口にする狙いはどこにあるのか?
 それは一言で言って、戦争の危機を極度に高め、米国を「平和協定」の場に引き寄せ、韓国を「太陽政策」に引き戻そうとする「心理戦」を極限にまで高めようとするところにある。この二つの目的が達成されないかぎり金正恩体制の当面の安定が得られないからだ。
 韓国国防部の金aソク(キム・ミンソク)報道官は3月12日の定例会見で、北朝鮮が韓米合同軍事演習などに反発し、威嚇をエスカレートさせていることについて、韓米に対北朝鮮政策の転換を迫る「心理的圧迫」だと指摘した。「現在のところ、すぐに新たな核実験やミサイル発射に踏み切る兆候はない」と述べ、北朝鮮の心理的戦術に動揺しないよう国民に求めた。
 金報道官は、北朝鮮は内部でも戦闘用食料の準備や偽装網(カモフラージュネット)の設置などを行い、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が前線の軍部隊を相次ぎ視察するなどして、戦争ムードを高め住民の結束を図ろうとしていると説明した。
 平壌市内のバスへの偽装網設置などの動きについては、北朝鮮が戦争に備えていることを外国人に示威的に見せ、米国や国連を圧迫しようとしているとの見方を示した。
 また、北朝鮮が近く東部の元山周辺で金第1書記が参観する「国家級軍事訓練」を行うとみられ、この訓練が軍事挑発につながる可能性もあるため注視していると述べた。

金正恩の核恐怖3段階シナリオ

 こうした中、韓国中央日報は3月13日付で、「金正恩の核恐怖3段階のシナリオ、最後は公共施設へのテロも」との記事を掲載し注目を集めている。その内容は以下の通りだ。
 「北朝鮮が最近韓国と国際社会を相手に戦争の恐怖をあおり危機感を高めているのは金正恩第1書記の3段階のシナリオに基づいた緻密な計算から出たものというのが情報当局の分析だ。言い換えれば実際に戦争を起こそうとするよりは心理戦を通じて韓国政府を屈服させることに目的があるということだ。
 北朝鮮の内部事情に詳しい対北朝鮮消息筋は12日、「金正恩が最近対韓国・対内・海外で核戦争の恐怖感を作るよう秘密裏に指示したことが把握された」と話した。これを受けすでに3段階のシナリオの1段階が韓国社会を相手に発動され始め、それなりの効果を上げていると判断しているものと分析された。「敵陣を刈り取ってしまえ」「ソウルとワシントンを核で火の海にする」などという背筋の寒くなる発言と、休戦協定白紙化、板門店(パンムンジョム)の南北直通電話中断のような措置を取りながら国民の間に「このままでは戦争が起きるのではないか」という不安感が高まっている。また、これを口実に一部では「韓米合同軍事訓練が韓半島の平和を脅かしている」というなど北朝鮮の主張に同調する主張も出てきている。戦争の恐怖が大きくなり韓国内部の対立が表面化した場合、社会は混乱に陥りかねない。
 韓国政府はこれと関連し、韓国政府が北朝鮮を圧迫して戦争状況が演出されたという根拠のない主張をインターネットを通じて流布する組織化された勢力があることを把握し、デマを流布する勢力のインターネットIPを追跡中であることが確認された。
 韓国を混乱に陥れるのに続き金正恩は北朝鮮に滞在中の外国人と第三国政府を対象に2段階措置を発動する計画を立てているものと把握された。2段階措置の一環として北朝鮮は近く平壌(ピョンヤン)などに滞在している外国人に出国命令を出すとされる。対北朝鮮消息筋は、北朝鮮当局が「近く戦争が起きるだろうがわれわれはあなた方の身辺の安全を保障できないので出国せよ」と圧迫するだろうと話した。同時に中国・東南アジアと欧州などの北朝鮮公館を通じ駐在国政府に「(北朝鮮に滞在中の)自国民を撤収させよ」という通知をするものと把握された。このようになると韓国だけでなく第三国など海外でも「韓半島戦争説」が広まり緊張は最高潮に達するものと北朝鮮はみているという。
 戦争を行わずに韓国圧迫効果を上げられるというのが金正恩の計算だと同消息筋は伝えた。
 金正恩の3段階のシナリオのうち最高段階は局地戦挑発やテロだ。ただし2010年11月に発生した延坪島(ヨンピョンド)砲撃のような挑発はできないと韓国政府はみている。北朝鮮の仕業であることが明白な軍事挑発を起こす場合、韓国政府が挑発原点だけでなく指揮部と支援勢力まで懲らしめると公言した状態であるためだ。しかもいまは東海(トンヘ、日本名・日本海)で韓米合同軍事訓練が進行中だ。
 これを受け、「北朝鮮は韓国政府と韓国軍が国連憲章51条で認められた自衛権を発動できないよう巧妙な非対称戦略を駆使する可能性が高い」という分析が出ている。消息筋は、「哨戒艦爆沈事件のように、北朝鮮が挑発してもすぐに原因を把握できないような方法を選ぶ公算が大きい。空港や大衆利用施設を狙って奇襲的なテロを行う可能性が高い」と話した。このような場合、韓国社会に実質的衝撃を加えながらも報復攻撃を避けることができるという点を狙ったのだ。
 金正恩が実際の戦争よりは戦争の恐怖感を作る方式で高度な心理戦を進めているという事実は北朝鮮のいくつかの動きを見ても現れている。
 北朝鮮は最近現役少将を団長に多数の将軍が含まれた人民武力部投資代表団を東南アジアに派遣し滞在中であることが確認された。情報当局者は「戦争をするといいながら現役将軍を投資誘致のためのんきに海外に派遣できるだろうか」と指摘した。
 北朝鮮は戦争威嚇を加え板門店連絡電話を切ったが、開城(ケソン)工業団地稼動のために南北間に設置された西海(ソヘ、黄海)軍事通信線を維持しているのも北朝鮮の下心を示すものと消息筋は分析した。通信線を遮断すれば北朝鮮の労働者5万人余りが受け取る年9000万ドルの現金収入がなくなることになる。
 南北の飛行情報区域(FIR)で行われる南北航空管制も正常に稼動している。中国国際航空など北朝鮮領空を通過する約30便の航空機は1便当たり最大890ドル、年間900万ドルの領空通過料を北朝鮮当局に払っている。戦争をするといいながら最も敏感な西海上空で金儲けをしているのはつじつまが合わないという指摘だ」(中央日報2013・3・13)

3、「心理戦」による韓国社会の「混乱」と世論の分裂

 北朝鮮の「心理戦」は韓国で効果を見せ始めている。北朝鮮が「最後の決戦の時が来た」として挑発・脅迫を強める中、韓国国民の多くは有事の際の行動要領を知らず、不安感はかなり広がっている。

混乱を見せる韓国社会

 3月10日には「ニセ休校令」が出回り、混乱に見舞われた児童・生徒たちは「戦争になったらどこに逃げればいいのか」と尋ねたが、きちんと答えられる人物はいなかった。大人ですら、避難所がどこなのか、防毒マスクはどのようにして手に入れるべきかを知らないまま「大したことはないだろう」という漠然とした楽観を抱いて生活している。
 韓国政府は、戦争の危機に関する話が広まっているにもかかわらず、有事の際の対応要領を韓国国民に広報していない。国民行動要領のパンフレットはあるが、どこにあって、どのように活用するのか知っている国民はほとんどいない。行政安全部非常時安全室の幹部は「非常時の国民行動要領は、官公署や相談窓口にパンフレットとして備え付けてある。しかし今のように、延坪島付近で局地的な危機があるという状況で、行動要領をどのように全国に伝えていくかという指針はない」と語った。また別の関係者は「そんなもの(国民行動要領)を発表すること自体、韓国国民の不安をあおるのではないか」と語った。ソウルの中学校の教師は「教育庁からはまだ公文や具体的な行動指針は出ていない。教師の立場からすると『動揺するな。買い占めをするな』と訓示するくらい」と語った。
 危険の程度や非常時の対応法をきちんと広報していないことがデマ拡散の原因という指摘もある。ソウル大学社会学科の鄭根埴(チョン・グンシク)教授は「行動要領など重要な情報を国が責任持ってPRしないために、国民の不安が増幅され、インターネット上のデマにすがる行動を取るようになっている」と語った。実際、インターネット上のある掲示板には、民防衛訓練の時に使われたという開戦時のサイレンが登場し、ネットユーザーたちは掲示板に「戦争が起こったら銃や銃弾はもらえるのか」「戦争が起こったら本当にどうなるのか。いっそのこと核をくらって、一発で楽になるのがいい」など、戦争を風刺するようなコメントを載せた。
 危機の状況で韓国国民に信頼を与えるべき韓国軍や警察などが逆に信頼を失っていることも、問題点として指摘されている。一部の現役将官たちは、北朝鮮が韓国に対し連日脅迫攻勢をかけていた先週末(9・10日)、ゴルフに出掛けた。
 韓国軍と警察は11日、対北警戒態勢を別々に適用するなど、混乱した様子を見せた。警察庁は11日、発令されたウオッチコンは第2段階(国益に顕著な危険を招く兆候がはっきり見られる状況)だと発表した。ところが国防部は、第3段階(国の安全保障に重大な危険を招く恐れがある状況)だと発表した。ウオッチコンとは、北朝鮮の軍事活動を追跡する対北情報監視態勢のこと。このウオッチコンの段階を別々に適用するということは、韓国軍と警察の間ですら、危機への対処レベルに差があるということを示している。
 専門家たちは「北朝鮮の挑発のレベルに合わせて機敏に対応する国家マニュアルがないことが問題」と指摘した。韓国国防安保フォーラムのヤン・ウク研究委員は「北朝鮮が核実験をしたりミサイルを撃ったりしたときなど、状況に応じて韓国国民が取るべき適切な行動を、指針として作らなければならない。国レベルで行動要領を決めれば、買い占めのような問題も予防できるだろう」と語った。京畿大学政治専門大学院のキム・ギホ教授は「スイスなど戦争の危険がない国も、サイレンが鳴ったらどうすべきかという指針や広報システムがよく備わっている。韓国も政府レベルで、北朝鮮の挑発の状況に合わせた実質的な備えをしなければならない」と強調した朝鮮日報(2013/03/12 10:02 )。

韓国世論の分裂

 米・韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」が始まった11日、韓国の野党は一斉に談話を発表し、朝鮮半島での軍事的衝突を回避するための南北対話を促した。
 民主統合党の鄭成湖・首席スポークスマンは、「交渉を通じた外交的な解決を目指して努力しなければならない」としながら、停戦協定60周年を迎える今年、「危機はチャンス」という言葉を実践すれば、朝鮮半島での武力衝突危機が、むしろ大統領の公約である「韓半島平和プロセス」を稼働させる適期にもなり得るということも念頭に置くべきだと提言した。
 親北左派の進歩正義党の李貞味・スポークスマンは、「今日から始まる連合訓練は、戦争状況を仮定した大規模軍事訓練である」と指摘し、軍事訓練を即刻中断しなければならないと主張した。
 従北勢力の統合進歩党の李正姫代表は、「戦争を防げるのは対話だけだ」とし、「朴槿恵大統領がすぐに、北に特使を送らなければならない。米国のオバマ大統領も、一日も早く北に特使を送るべきだ」と強調した。
 こうした動きを大衆デモにまで発展させようとする「従北勢力」の動きもすでに現れている。

4、「心理戦」の次の一手は?

 北朝鮮が「心理戦」効果を高めるための戦争挑発として考えられるのは、正規軍を全面に出したものではなく、もう一つの非対称武力である「特殊部隊」を使った挑発だ。中央日報が掲載した「3段階シナリオ」でも心理戦の最終段階は局地戦挑発やテロだと指摘している。
 韓国軍当局によると、北朝鮮の特殊部隊は、軽歩兵部隊14万人と第11軍団(爆風軍団)および人民軍偵察総局の特殊作戦専門兵力6万人など約20万人とされる。うち第11軍団と偵察総局の兵力は「人間兵器」と呼ばれ、特殊作戦を専門的に行う。
 この特殊戦部隊は、トンネルや低高度AN−2機(複葉機)などを利用して韓国の後方地域に侵入し、主要目標の打撃、要人暗殺、後方かく乱などの作戦を行なう。 天安艦撃沈事件などのような特殊作戦もこの部隊が実行した。このうち偵察総局兵力は7000〜8000人で最精鋭部隊となっている。この戦力だけで数個師団を制圧できると北朝鮮は豪語している。
 この偵察総局部隊の総責任者が金英徹である。今回彼が停戦協定白紙化を読み上げた。通常なら国防委員会報道官か総参謀本部の肩書きを持つ人物が発表する声明を彼が発表したところに今後の挑発行動が示唆されているように思える。
 この特殊部隊による挑発として考えられるのは、天安艦撃沈のような挑発、サイバーテロ、韓国政府・軍事施設に対する爆破などが考えられるが、その場合はまだ発見されていない休戦ラインをまたぐ秘密トンネルなどが使われる可能性もある。
 北朝鮮はこうした挑発で韓国社会を混乱に落し入れ、韓国を人質にした上で対米交渉を求めてくる可能性が高い。強硬派の金英徹と戦争をゲームのように考える幼い指導者金正恩が結びついた挑発は、予想外の深刻な事態をもたらす可能性もある。
 しかし、こうした挑発が失敗に終われば、そこから金正恩体制の崩壊が始まるだろう。

以上

 
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