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トランプ政権、韓国の対北「前のめり」に対する統制を強化

コリア国際研究所 朝米研究室
2018.11.14

目次
1、ビーガン特別代表が任鍾晳と異例の面会
2、米韓事前調整「ワーキンググループ」を設置
3、セカンダリーボイコット適用警告で韓国金融・財界を圧迫
【参考資料】2014年のBNPパリバに対する制裁

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 トランプ政権は、北朝鮮に対して「先非核化」の要求を明示する一方で、韓国の「前のめり」支援が対北朝鮮非核化交渉進展の妨げになっているとの見方を強め、北朝鮮側に立つ文在寅政権に対する統制も強め始めている。
 米国CNNテレビは11月8日(現地時間)、「(米国には)韓国が(制裁解除と南北交流の方で)先行するという懸念がある」と報じた。CNNはこの日、米国政府関係者の話を引用して「米国が心配するのはほかの国々、とりわけ韓国が北朝鮮に対する『全面的圧迫』のレベルを維持する問題」だとして、このように伝えた。韓米が最近設置に合意した「ワーキンググループ」も、南北関係の速度超過を警戒してきた米国の意向が作用した結果だという。
 アーミテージ元米国務副長官は10月22日、訪問先のソウルで行われた討論会で、米韓両政府が北朝鮮政策をめぐって「今にも別々の方向に進みかねない状況だ」と述べ、結束が崩壊する可能性に懸念を表明した。
 同氏は「われわれは、北朝鮮に『最大限の圧力』をかけることで韓国や中国などと一致していたが、今や、われわれが制裁の緩和・解除を求める韓国や中国などから『最大限の圧力』を受けている」と指摘。北朝鮮の非核化を促すためには制裁緩和も必要だという立場を取る文在寅政権に不快感を示した。
 また、軍事境界線沿いに飛行禁止区域を設置することなどを定めた南北の「軍事分野の合意書」についても、「軍事的にはそれほど重大ではないが、政治的には重大だ。米国とほとんど協議しないまま合意したためだ」と批判した。(ソウル時事2018/10/22)

1、ビーガン特別代表が任鍾晳と異例の面会

 米朝非核化交渉の実務を担当する米国のビーガン対北朝鮮政策特別代表が10月29日、韓国大統領府のイム・ジョンソク秘書室長と面会した。米国の北核問題担当者が韓国の外交・安全保障政策の責任者である鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府国家安保室長ではなく、任鍾晳(イム・ジョンソク)室長に先に会うのは過去に例がない。米国がこのように異例の要請を行った理由は、韓国で対北朝鮮政策を実際に担当するのは鄭安保室長ではなくイム室長と判断したためであり、そのためイム室長に直接南北関係改善のペースを調整するよう要請し、その反応を確かめるためだったようだ。
 米国はこれまで外交ルートを通じて「南北関係改善は北朝鮮の非核化とは別に進めるべきではない」とのメッセージを繰り返し送ってきたが、韓国がこれを無視し続けたため、ビーガン氏はイム室長に直接会うに至ったのだ。ビーガン氏は先週ワシントンで韓国と米国の6者協議主席代表による協議に出席し、ソウルを訪れたのはそれからわずか1週間後だが、これは米国がこの問題をいかに深刻に受け止めているかを示すものだ(朝鮮日報社説2018/10/31)。

2、米韓事前調整「ワーキンググループ」を設置

 米国務省は、ビーガン氏の韓国訪問に合わせて10月30日(現地時間)、韓国と米国政府間に北朝鮮非核化と南北交流事業を取り巻くよりスムーズな疎通のために、新たな「ワーキンググループ(実務協議体)」を設置する方針を固めたと発表した。
 ロバート・パラディーノ国務省副報道官はこの日記者団と会い、「スティーブン・ビーガン北朝鮮政策特別代表の訪韓(29~30日)目的は、北朝鮮の最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)を達成するための外交的取り組みについて話し合うためのものだった」とし「今回のワーキンググループの構成もこのような取り組みの一環」と明らかにした。
 国務省がこの日公式発表したワーキンググループの趣旨は大きく2つ。第一は北朝鮮の非核化努力と制裁履行水準を共に観察することで、第二は「国連制裁と合致する」南北間協力に対する緊密な調整だと強調した。
 オブラートに包んだ表現だが、北朝鮮の非核化速度に比べて南北間交流事業が前のめりになりすぎているという米国側の懸念が色濃く反映された趣旨説明だ。
 米政府関係者は「南北交流事業の相当部分が国連の北朝鮮制裁範囲に入るにもかかわらず、韓国政府が今後も事後的に『免除』を要請するようなことが続いてはいけないというのが今回の『ワーキンググルー』設置の主な背景」と述べた。
 パラディーノ副報道官は「今回取られた追加措置(ワーキンググループ設置)はビーガン代表とそのチームが率いることになる」としながら、ワーキンググループの構成については「具体的細部事項は手元にないため、どのような人々が参加することになるかについて私が先にお伝えすることはない」と付け加えた。
 ビーガン代表が22日(現地時間)、韓国側のカウンターパートである李度勲(イ・ドフン)韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部長とワシントンで会談してから1週間後にソウルを訪れて、任鍾皙(イム・ジョンソク)青瓦台秘書室長、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官、趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長らいわゆる「ビッグ4」と連鎖会談を行うと、その背景をめぐり「米国が韓国の南北事業推進に不満を吐露するためのものではないか」との指摘があったが、米国務省が「緊密な調整」のための「ワーキンググループの設置」を韓国が発表する前に公式発表したことは、それを裏付けるものとなった(中央日報日本語版2018/10/31)。

3、セカンダリーボイコット適用警告で韓国金融・財界を圧迫

 すでに明らかにされたように、さる7月26日、マーク・ランバート米国務省東アジア太平洋副次官補代行が駐韓米国大使館で、南北経済協力企業関係者と懇談会を持ち、「一部の例外が認められたからといって、北朝鮮に対する制裁が解除されたなどと誤解しないように」と米国政府の警告性メッセージを伝達し、「対北朝鮮経済協力に前のめりにならないように」と釘を刺した。この懇談会には、コレイル(鉄道)、KT(通信)、ポスコ(製鉄)、コーロン(産業素材)、ハンラ(健設)と開城工業団地企業協会など南北経済協力企業関係者15人が参加した。参加者によると、ランバート代行はかなり強硬な口調だったという。
 こうした米国の対韓国「警告」は9月の「平壌首脳会談」後一層強烈になった。

― 米財務省からの「恐怖の電話」

 9月の南北首脳会談直後に米財務省(財務次官)が、駐米韓国大使と韓国の当該機関に通知した上で、ニューヨーク支店で送金・振込・両替などの取引を扱っている韓国の産業、企業、国民、新韓、農協、ウリィ、ハナのそれぞれの銀行に電子メールと直接の電話を通じて、対北朝鮮制裁を順守するよう要請(警告)していたことが(韓国の国会国政監査過程で)明らかになった。
 米財務省は、現状を確認した上で「あまり先走るな」という趣旨の要請を強い口調で伝えたが、要請を受けた銀行は震え上がったという。もし(韓国の銀行が)北朝鮮との取引に関与すれば、米国政府の制裁対象になる恐れがあるからだ(制裁の強烈さは末尾参考資料のBNPパリバのケースを参照に)。
 これまで米国は、相手を明確にせず「北朝鮮に対する制裁を緩めてはならない」と何度も警告してきたが、最近はこのようにその対象が韓国であることを隠さなくなった(SKレポート NO,151号)。
 韓国の銀行は南北和解ムードをきっかけに南北経済協力に関する広報に熱を上げた。各銀行が関連担当チームを設置し、対北朝鮮金融関連組織を整備した。もちろんすべてが自らの意志だったわけではない。匿名を求めた都市銀行の関係者は「今後、対北制裁が緩和されれば、すぐにも(北に)入れるよう準備をした側面もあるが、政府のコード(意向)に合わせたり顔色をうかがいながら形式的に参加した銀行も少なくない」と話した。
 このように韓国政府の顔色をうかがっていた銀行が今では米国の顔色をうかがっている。先を競って南北経済協力関連組織を新設した銀行も「スタディーグループや同好会レベルだった」と一線を画した。9月の第3回南北首脳会談当時に李東杰(イ・ドンゴル)会長が特別随行員として訪朝して注目を集めたKDB産業銀行側も「対北制裁を考慮し、計画はしたが実行はしていない」と弁明した。
 別の銀行関係者は「少し前まで南北経済協力の主導権を握るために競争していた銀行が今では『自分たちは何もしていない』と言っている状況には苦笑するしかない」と自嘲的に話した。また別の銀行関係者は「政府に対しても残念に思う点がある。南北経済協力の過程でむやみに速度を上げるのではなく、銀行や企業が誤解を受けないよう慎重に進めるべきだ」と述べた

  ウリィ銀行は5月、南北金融経済協力タスクフォース(TF)チームを設置した。4・27南北首脳会談の直後だ。ウリィ銀行の関係者は「北への制裁が緩和されて南北経済協力が再開されれば、どんな事業をするのがよいかを内部で検討するための組織」と説明した。しかしこのTFはわずか3カ月間運営されて終了し、現在は名前だけが残っている状態だ。この関係者は「新しいイシューがあればまた集まることもあるだろうが、今はそのような状況でなく計画も全くない」と話した。

  KB国民銀行は7月、北朝鮮専門家採用広告を出した。南北経済協力や北朝鮮金融インフラを研究する修士・博士学位所有者が採用対象だった。国民銀行は内部に北朝鮮専門家が不足していると判断して採用を始めたが、現在まで一人も採用していない。銀行関係者は「採用を進めるべきか内部的に検討中」と伝えた。
 先月「対北朝鮮制裁を遵守すべきだ」という内容の米財務省テロ金融情報局(TFI)の電話を受けた韓国の銀行7行が緊張している。米国に目をつけられて「セカンダリーボイコット(第三者制裁)」対象に含まれないかと心配し、内部で準備・検討してきた「対北朝鮮金融プロジェクト」から次々と手を引いている。
 (中央日報日本語版2018/11/5)

― ニューヨークの韓国系銀行、連絡事務所に転落も

 米ニューヨークに進出した韓国系銀行の支店と現地法人が送金中継や貸付などの核心業務を相次ぎ中断している。米金融当局のコンプライアンス強化の要求に対応できないためだ。数百億ウォンをかけてシステムを備えなくてはならないが、収益性を考えると営業縮小が良いとの判断からだ。その上米政府が韓国系銀行に直接「対北朝鮮制裁順守」を警告するなど監視が厳しくなり、リスクがある業務自体を控えようとする雰囲気だ。グローバル金融の中心地ニューヨークで韓国系銀行は連絡事務所に転落している。
 ニューヨークと韓国の金融業界が5日に明らかにしたところによると、農協銀行ニューヨーク支店は昨年末、マネーロンダリング防止システムの不備を理由にニューヨーク州金融サービス局(DFS)から1100万ドルの罰金を科された後、個人送金と貸付営業の拡大を中断した。新韓アメリカ銀行は昨年半ばから送金中継業務を取り扱わずにいる。中小企業銀行も2015年からニューヨーク支店を経由する送金中継業務を中断した。別のある銀行も送金中継の中断を検討中だ。送金は自行顧客間で資金をやりとりするもので、送金中継は自行と他行の顧客間で資金をやりとりするものだ。
 ニューヨークで営業中の韓国系銀行は国民銀行、新韓銀行、KEBハナ銀行、ウリィ銀行、中小企業銀行、農協銀行などの都市銀行と、産業銀行、輸出入銀行など政府系銀行がある。これらの銀行が相次ぎ送金業務を中断しようとしているのは、送金がマネーロンダリング防止の核心対象だからだ。送金業務を行うには米金融当局が要求する「顧客確認(Know Your Customer)」の原則に基づき、すべての取引で顧客の身分を確認し、取引の種類を把握できるシステムを作らなければならない。また、テロ団体などが違法資金の借名取引などで合法取引を偽装した際にはこれをフィルタリングし、怪しければ米金融当局に通報するシステムも構築しなければならない。
 1件当たり2万ウォン程度の稼ぎにしかならない送金をするのに数千万ドルのシステムを備えコンプライアンス人材を大挙備えなければならないという話だ。中小企業銀行は2016年からマネーロンダリング防止関連コンサルティングとシステム構築、順法監視人材雇用などに1000万ドル以上を投じた。現在ニューヨーク支店の人材23人のうち3分の1ほどの7人がコンプライアンス人材だ。
 このようにしても米金融当局を満足させることができず、農協のように多額の罰金を科せられるケースもある。昨年は台湾の兆豊国際商業銀行が1億8000万ドル、パキスタンのハビブ銀行が2億2500万ドルの罰金を科されるなどの制裁を受けた。先月にはアラブ首長国連邦のマシュレク銀行も罰金4000万ドルを命じられた。銀行関係者は「送金を間違いマネーロンダリング防止に違反すればニューヨーク支店の核心機能であるドルクリアリング(精算決済)業務ができなくなる恐れもある」と懸念する。
 韓国系銀行が貸付拡大を中断したのはこうした順法監視業務にすべての力を集中する余力がないためだ。ニューヨークの韓国系銀行支店は、ドルクリアリング、送金、貸付など企業金融が主要業務だ。資金運用は2010年の高リスク投資制限を核心とするボルカールールによって不可能になり、投資金融業務は一部銀行が初めて試みる段階だ。こうした状況で送金や貸付などを中断する場合、事実上連絡事務所水準に縮小されかねない。米国だけで従業員1000人を超える日本の三菱UFJ銀行や中国工商銀行などに比べ10~20人ほど少ない規模で運営してきた韓国系銀行はそれさえあった営業を縮小しているのだ。
 その上最近米金融当局は韓国系銀行を注視している。9月に米財務省が異例の各銀行への直接連絡で対北朝鮮制裁順守を警告し、ニューヨークの韓国系銀行はすべて緊張した。ニューヨークの韓国系銀行のある核心関係者は「韓国系銀行が米政府の主要監視対象になった感じだ。まかり間違えばニューヨーク支店を閉じなくてはならなくなる状況で、最大限保守的に支店を運営しようと考えている」と説明した(中央日報日本語版2018/11/6)。

 このほか、米財務局は中断したものの、9月の「平壌南北首脳会談」に随行した韓国財閥企業にも「聞き取り」を行おうとした。中断されたのはアナウンス効果ですでに警告の目的が達せられたからだ。

【参考資料】2014年のBNPパリバに対する制裁

 BNPパリバに罰金89億ドル 米司法省、ドル決済も1年禁止
 日本経済新聞2014/7/1

 【ニューヨーク=佐藤大和、パリ=竹内康雄】米司法省は6月30日、仏銀最大手のBNPパリバに総額89億ドル(約9千億円)の罰金を科すと発表した。ドル資金の決済業務の一部も最長1年間禁じる。パリバは米国が金融制裁の対象としたスーダンやイランとの間でドル送金などの金融取引を続け、その事実を隠していた。これらが米国法に違反すると認定した。
 パリバは今回の措置を受け、2014年通期で最終赤字に転落する可能性がある。外国の金融機関への罰金としては過去最大。パリバを巡ってはオランド仏大統領が「制裁は過剰で不公正」とし、オバマ米大統領に再三抗議。米仏間の政治問題になりつつあった。
 米司法省のホルダー長官は6月30日の記者会見で「米国で業務を継続したければ、テロ支援国を制裁する米国の法律に従わなければならない」と語った。同省によると、パリバは主に原油関連取引に絡んでスーダンやイラン籍の顧客との間で、12年までドル送金を手掛けていた。同社幹部も黙認した「組織ぐるみの行為」とされ、ドクルセル最高執行責任者(COO)が引責辞任する。
 パリバは6月30日の声明で、4~6月期に58億ユーロ(約8千億円)の特別損失を計上するとの見通しを明らかにした。パリバの13年通期の最終利益は48億ユーロで、14年通期は最終赤字に転落する可能性がある。パリバは7月31日に4~6月期決算を発表する。
 ニューヨーク拠点などにおけるドル決済業務の一部停止は来年1月から1年間。サービスの低下は顧客離れにつながり、収益に打撃を及ぼす可能性がある。パリバをはじめとする仏銀は貿易金融が強み。地域的にはアジアでの存在感は乏しい半面、歴史的に中東やアフリカ市場と関係が深い。
 ホルダー長官は「今回の制裁は世界中の金融機関に対する警告だ」と訴えた。日本のメガバンクにとっても原油輸入先であるイランとの歴史的な関係は常に鬼門となってきた。

以上

 
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