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金正日体制と南北関係の展望

2008.3.18
黄長Y朝鮮労働党元書記

 以下の内容は去る3月11日、北朝鮮自由放送の質問に対する黄長Y朝鮮労働党元書記の回答を翻訳整理したものです。題名と太字の部分は当研究所によるものです。

質問  ポーランド駐在北朝鮮大使である金正日の異腹弟金平日は 「金正日体制は長続きするだろう」という発言をしました。先生は金平日のこの発言をどう思いますか?

   現在の状況下では金正日体制はまだまだ続くと思われます。その理由はあまりにも長い間徹底的な独裁が実施され、民主主義的な力量が北朝鮮に育たなかったところにあります。
 数十年間の首領独裁は、完全に人民大衆の自主的な思想を麻痺させ思想的奴隷に作りあげました。それに生活がとても困難だったため、人々は政治問題に対して関心を持つよりも、当面する切迫した暮しのことにばかりに神経を使っています。
 そんな中でも首領独裁は引き続き強化され、人民が思想、組織的に結びつくすべての条件と可能性を阻止されました。このような状況のもとでは外部からでも影響を与えなければならないのですが現在はそれさえも遮断されています。そして中国が金正日体制を支持しているため現在のところ金正日体制が崩れる可能性はないと言わざるを得ません。
 もちろん抽象的な可能性はいつもあり得ますが、現実的な可能性は現在のところありません。脱北者たちにはつらい話ですが、巷間に出回っている「金正日はすぐ亡びる」というウワサを軽率に受け入れないほうが良いと思います。

質問  外国のメディアと韓国の言論では金正日の後継者問題がよく話題に上ります。しかし北朝鮮住民は後継者問題に対する何らの情報を持っていません。金正日の後継者問題が公式に論議されて決まった時北朝鮮住民はどのように対応するでしょうか。

    3代目も世襲となれば北朝鮮の民心がこれを受け入れるかとのことですが、北朝鮮の民心は民主主義社会での民心と同じではありません。北朝鮮で自由な考えを持っている人たちがいるでしょうか?そこでは一つの思想、唯一思想しか許されていません。
 何百万人が飢え死にしたにもかかわらず目覚めることができない人々が、王が次の代を世襲にしたからと言って何か他の考えを持つことができるでしょうか?人々の精神が完全に奪われた状態のもとで民心というものが存在する余地はありません。
 民心が世襲独裁を受け入れるかと言う質問自体が北朝鮮の実情をよく分からない人たちの言葉です。もちろん北朝鮮政権がいつの日か必ず崩壊することは事実であり、また人民が世襲制を正しくないと悟る日がやってくるのも間違いありませんが、今現在の状態では民心がその問題に関心を集めることは出来ないし焦点を合わせることもできません。ただ生活が苦しく暮しが立ち行かないことからそれに対する不満は募るかもしれませんが、世襲制であれなんであれそういうことに対しては関心をもてないでいます。今彼らにとって切実な問題はどのようにして食べていくかということであります。

質問  李明博政権の対北政策に関与する一部の官僚が、太陽政策は北朝鮮を変化させるうえで助けになったと発言し太陽政策を擁護しています。先生は太陽政策が北朝鮮の変化を助けたとお思いですか?

   ここ(韓国)では今一部人々が「太陽政策」はそれでも南北対話をもたらしたではないかといっていますがこれは馬鹿げた主張に過ぎません。
 「太陽政策」があたかも北朝鮮に何らかの変化をもたらしたように考えているようですが、北朝鮮の変化は遅々としたものではあれ自らが変化したものです。独裁者を助けたからといって決して変化が速まるものではありません。独裁者を助ければむしろ変化は遅くなるだけです。
 独裁者を助ければ北朝鮮が変わると言う人々は、「太陽政策」がむしろ北朝鮮の改革開放を抑制したという事実が分からない人々です。悪い奴らと交流することを何らかの影響を与えたと考えているようですが、強盗を一生懸命助ければ強盗が強盗行為をやめますか?それは強盗と親しくなっただけです。それと同じように金正日と親しくなったからといって変化を与えることは出来ません。
 北朝鮮は引き続き韓国をアメリカの植民地だの、戦争勢力だのと言いがかりをつけていますが、それは自分たちの軍拡と核武装を正当化するためのこじつけに過ぎません。それなのに韓国では北朝鮮がそう言っても安逸に対応しています。

質問  李明博政府が韓米同盟強化の外交政策を打ち出したことによって、中国と北朝鮮の関係が緊密化する様相を見せています。先生は北朝鮮を中国式に改革開放するカギは中国と北朝鮮との連携を遮断することだとおっしゃいました。そうだとしたら韓米同盟強化による朝中関係の接近は北朝鮮の改革開放にどのような影響を及ぼすと思われますか?

   中国と北朝鮮の連携をいかに遮断するかという質問ですが、今中国と北朝鮮の同盟関係を遮断することは当面の課題として提起されていません。それは将来そうしなければならないということであって、今すぐ北朝鮮と中国との同盟関係を遮断することは不可能です。そうするためにはアメリカと中国が協力しなければならないのですが、現在の状況では不可能です。
 そこで主人公の役割を果たさなければならない国は韓国なのですが、韓国はそうした方向に向かう能力もなく、また向かえないでいます。中国と北朝鮮の同盟関係を遮断しようとするならば、アメリカと中国が協力をしなければならないのですが、そのためにはアメリカが中国に対する態度を直し、中国がアメリカに対する態度を直して、中国は自由民主主義に対する態度を直し、アメリカは中国式改革開放を理解しなければなりません。
 このような問題はまだ解決されていません。ここで主人公は韓国政府なのですが、韓国政府は政権が交代した条件のもとでもこのような戦略を駆使する能力がないように思われます。韓国政権自体がまだ民主主義的に強化されていない事情と関係しているようです。
 韓国の民主主義力量を強固にし、韓国において北朝鮮の思想的な影響を完全に清算する問題はまさに緊急を要する問題です。韓国には親北朝鮮勢力すなわち金正日を支持する人々が相当数いるからです。
 親北朝鮮左派政権は金正日政権を支持する勢力です。陰に陽に金正日政権を支持する勢力なのです。非常に露骨な北朝鮮関連団体だけでも韓国には少なくありません。教育分野にもたくさん侵透しています。こうした状況であるから政権が交代したと言っても徹底した民主主義的路線を堅持できないでいるのです。
 もしも韓国政府がわが内部の反民主主義勢力を駆逐し確固たる民主主義原則にのっとって祖国統一問題を推進すればアメリカを動かすことができます。それゆえ先決問題は韓国の民主主義を強化することなのです。韓米同盟を強化して国家保安法を一層強化しなければなりません。国家保安法はスパイを捕まえることが目的ではなく、ここに浸透している親金正日分子たちを除去することを基本使命としなければなりません。すなわち金正日の思想戦がもたらす影響を排除するための戦略的な法としてその表現価値をもう少し拡大して行かなければなりません。
 親北朝鮮勢力は韓米同盟に楔(くさび)を入れ、韓日関係を悪化させ、国内ではよい暮らしをしている人と暮らし向きがよくない人を対立させ、新しい世代と古い世代を対立させ、不法デモ・不法ストライキをけしかけているのです。
 私たちは韓国で正しく民主主義陣営を強化して、北朝鮮人民がアメリカに対して正しい認識を持つように働きかけ、中国に対しても正しい認識を持つように活動していかなければなりません。私たちは北朝鮮を今すぐに自由民主主義的に改造しようと思ってはいけません。北朝鮮を中国式に改革開放して中国ともっと親しくなり、そのようにして統一の初期段階を準備しなければならないということです。このような思想で全国民を覚醒させることが出来れば、それが中国と金正日集団の同盟関係を切る基本方法となるのです。
 私たちが北朝鮮を中国から切り離そうということは、北朝鮮が改革開放をするように誘導するためのものであって中国との間を悪くしようということではありません。中国との間を悪くしようということであればそれは国家本位主義的思考です。
 それではここで私たちの基本目的は何か?
 まず金正日を除去して首領独裁制度をとり除かなければなりません。そうするためにはなによりも中国式に改革開放しなければならないということです。そうしてこそ中国が許容するでしょう。それから北朝鮮はアメリカとではなく中国ともっと親しくなればよいのです。親しくなって中国式に改革開放が実現できたら私たちにとってどのくらい大きな利益ですか!
 まず金正日首領独裁制度がなくなることで利益となり、市場経済が導入されることで思うように援助ができ、そして自由に往き来することができます。そのようになれば南北分断の基本問題は解決されたことになるのです。一方中国は絶対に北朝鮮を併呑しません。今自分の持っている領土だけでも負担になって大変なのに、北朝鮮が中国に食われるという心配をする必要はありません。
 私たちにとって一番重要なことは、一日も早く金正日を除去して市場経済を取り入れ自由に往来できるようにすることです。だから私たちが中国やアメリカが国際社会で果たす役割を認めることは悪いことではありません。
 私たちがいくら努力してもアメリカの代わりを務めることは出来ません。第1次、第2次世界大戦、そして冷戦、このすべてにおいてアメリカが主導的な役割を果たしました。そういう意味でアメリカの役割を尊重しなければなりません。また現在北朝鮮を解放する問題においてもアメリカと中国の役割は大きいのです。それゆえ彼らの役割がわれわれの様な小さな国々の役割よりも大きいということを認めて行かなければなりません。最終的な結論は金正日政権をとり除いて北朝鮮に市場経済を導入することなのです。

質問  北朝鮮の対南赤化統一戦略と統一戦線戦略に対して説明してください。

   過去の北朝鮮の統一戦略は赤化統一を基盤とする武力統一戦略でした。しかし今は武力統一戦略から韓国を思想的に瓦解させるいわゆる統一戦線戦略に変わりました。統一戦線戦略の基本は、アメリカは帝国主義で、韓国はアメリカの植民地という前提の下に、わが民族どうし力を合わせてアメリカ帝国主義に反対して統一戦線を形成しようという戦略です。
 これは言い換えれば、韓米同盟に楔を入れる分離戦略なのです。中国が絶対に北朝鮮の南侵戦争を許さないという方針なので、韓国に親北朝鮮左派政権を打ち立て南北連邦制を実施して対外的に宣布すれば、アメリカが干渉する名分もなくなり自然に赤化統一ができるという戦略です。
アメリカという外勢は、わが民族同士が内部で合意した連邦制に対して、干渉する名分を絶対に立てられないと考えているのです。もしアメリカが南北連邦制に干渉するようであれば、自分たちも中国やロシアに頼んでアメリカの干渉を遮断しようという戦略です。
 現在はこの赤化統一という用語は適当ではありません。なぜならば金正日は共産主義を知らないだけでなく、共産主義の基本思想を否認して封建世襲制を行なっているからです。
 元来同一民族がお互いに違う制度を持って平和的に共存することはできません。他の国ならまだしも、同一民族であるから誰かが主権を持つことになるからです。全国が金正日の私的所有である北朝鮮と主権が国民にある自由民主主義韓国がお互いに平和的に共存することはできません。それゆえ統一戦線戦略は首領の領土を広げて首領の支配権を広げることが唯一の目的となるのです。

 
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