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北朝鮮の軍事的挑発にどう対処すべきか

2009.6.12
黄長Y朝鮮労働党元書記

 過去、金日成は「武力統一論」と「平和統一論」の両面戦略を駆使したが、金正日は一貫して「武力統一論」に依拠している。金正日は、はじめから最後まで韓国に対する軍事的優位を強調し、親北朝鮮的な金大中、盧武鉉政権の時ですら大量破壊兵器の開発にまい進した。
  だから金正日政権の軍事的挑発がいま新しく始まったと考えるのは正しくない。これまで金正日の戦術にだまされておきながら、今になって「対決政策の産物だ」「強く対応しては戦争が起こる」と騒ぐことは、金正日の戦略にもう一度巻きこまれることにしかならない。

金正日の目的は軍事力による朝鮮半島の支配

 最初、金正日は自分の考えを中国が支持してくれることを望んだが、改革開放の道に進んだ中国は、思想的同盟関係のみを維持し、北朝鮮のいかなる軍事的行動も座視しないという立場を固守した。
  このような北朝鮮−中国関係は金正日の悩みの種だった。そこでひねり出された策が韓国に対する威嚇と恐喝だった。韓国国民の戦争恐怖症を呼び起こし、彼の対南戦略に同調させることが、過去、現在にかかわらず北朝鮮統治者が使っている常套手段である。
  最近その度数が少し高くなっているのは支配力の強化を意図したものであると推察される。北朝鮮のすべての政策は、首領の権威を高めるためのものであるが、金正日の脳卒中事実が住民たちにまで知られることとなったために、これを挽回する必要が生じたのだ。
  それで金正日が正常に業務を遂行しているように見せるために国内外のマスコミなどに宣伝し、また健康を誇示するために以前よりもっと多い現地視察を行なっているように見せている。このような金正日の行動は今も彼が病んでいるという反証でもある。最近露骨化している北朝鮮の軍事的挑発もこうしたことと無関係ではない。もちろんこれは私の推測だ。
  しかし北朝鮮の軍事的挑発行為が、アメリカとの交渉用であるとか、後継問題の確定作業と関係があるなどとする見解は憶測に過ぎないと指摘しておきたい。金正日がアメリカとの直接的交渉を通じて自分の権威を高めようとすることは戦術であって目的ではない。目的は朝鮮半島の支配であり、そのための韓国からの米軍排除である。
  今金正日が一番恐れていることは、アメリカをはじめとした国際社会と韓国政権が自分を相手にしてくれないことである。国際社会と韓国政権が相手にしてくれないことを恐れて核実験にまい進するなど、新たな権威作りに挑戦しているのに、こうした事実が韓国国民によく理解されていない。
  北朝鮮の繰り返される核実験と軍事的挑発行為を後継者問題と結びつけることも正しくない。北朝鮮独裁政権の後継問題は誰かが干渉できるものではない。内部であれ外部であれ、金正日の後継問題は論議の対象外であることを知らなければならない。
  人が何百万人飢え死にしても眉毛一つ動かさない金正日なのに、世襲制を三度でも四度でも思い通りにすると考えた方がよい。首領独裁制のもとでは、後継者に誰がなろうが金正日と同じ類の人間しか出てこないと考えればよいのに、ああだこうだと騒ぎ立てて金正日を喜ばせている。
  韓国国民はもうそろそろ北朝鮮に対する正しい見解を持たなければならない。北朝鮮の首領絶対主義の目的は、金正日の権威を高めることであり、金正日の先軍思想で「武力統一」を果そうというものだ。それ以外に他の目的がないことを強調したい。
  1952年にヘルシンキで開かれたオリンピック大会に北朝鮮軍の高級将校が来て「南朝鮮に進撃して見たら品物が山ほどあった。戦争を起こしたのは本当に正しかった」と言った言葉が忘れられない。北朝鮮は今も戦争予備物資を 6ヶ月分だけ備蓄している。残りは「韓国の占領地」で略奪し現地調達する計画を立てている。
  ベトナムの教訓もある。サイゴン陷落後ベトコンは、彼らを助けた解放戦線の活動家たちや南ベトナムの官僚知識人、左派ジャーナリストはもちろん南ベトナムで反政府・反体制運動をした教授、宗教人、学生、民主人士までも全員逮捕し処刑した。理由は「資本主義社会で反政府活動をした者たちは社会主義社会でもまったく同じことを行なう恐れがあるから」というものだった。
  こうしたことを踏まえた上で、私たちは金正日の軍事挑発にどう対応すべきかを考えなければならない。

軍事挑発に対処するには

 金正日の軍事挑発に対処するためには何よりも韓国の民主主義を強化しなければならない。
  韓国の民主主義を強化しさえすれば何も恐れることはない。韓国の民主主義が強化されれば北朝鮮は戦争を起こせないし、起こしたとしても彼らが滅びることは間違いない。
  とこが現在、韓国の民主主義には問題が多い。今回の「盧武鉉事態(注―盧武鉉前大統領が自殺した後の一連の出来事)」と関係して重要な位置にある学者や政治家たちが尋ねて来て「大変驚いた」と話していた。自分たちはこれまで「金正日が韓国を脅して自分の権威を高め、韓国の左派をけしかけて親北朝鮮政権を打ち立てようと企んでいることは見抜いていたが、直接来て統治することはできないだろうと思っていた。しかし今回の盧武鉉事態をみてみると金正日は十分に韓国の人々を統治することができると感じた」というのだ。
  北朝鮮の人々に対してと同じように、金正日が韓国の人たちを直接統治することが可能であるということを今度の「盧武鉉事態」を見て感じたというのだ。昨日まで不正疑惑で非難の対象だった人物を、突然世宗大王以上の聖雄のように仰ぐ国をどうして統治できないだろうか? いくらでも統治できる。今回の件でそのように深刻に悟ったと言うのである。これは韓国社会が経済的には発展したが、意識状態が非常に危険な状態にあるということを物語っている。
  私が常に話していることだが、民主主義を強化するためには暴力に反対しなければならない。朴槿恵前代表、田麗玉(チョン・ニョオク)国会議員も結局は反対派たちによるテロに遭った。一部の韓国国民は、国会を電気鋸で壊し、キャンドルデモを違法暴力デモに変え、警察官にまで凶器で負傷させている。こうしたことをそのまま放置して選挙をしたところで何の意味があるのか?
  このように韓国国民の意識水準はまだ低い状態にある。こうしたことをみると金正日が韓国を武装解除させたと言っても過言ではないだろう。北朝鮮の首領独裁がいかに悪辣かが分からないからこのような事態が発生するようになったのである。
  暴力というのは動物世界の残滓であり遺物だ。暴力を無くすことは国内でも世界でも同じだ。国際的にも民主主義力量が団結さえすれば暴力を無くすことができる。暴力社会をなくすことが出来れば誰が核兵器を持とうとするだろうか?
  誰かが暴力を使って他国を占領したら、即、世界が力を合わせて侵略した国を消滅させることが出来れば誰が核兵器を持とうとするだろうか?このような秩序をまず立てなければならないのに、それ以前に、しきりに核兵器を無くして大量破壊兵器の拡散防止を主張しているが、これは後先が逆である。まず暴力に反対する同盟から作り暴力を使えなくすることが重要だ。
  冷戦時代自由陣営はどのようにして銃を一発も撃たないで共産主義に勝ったのか? あの時のソ連は武力でアメリカに劣っていたわけではない。ソ連のフルシチョフはアメリカを武力で脅すために核兵器を積んだ船をキューバに送った。しかしケネディはカリブ海で核兵器を積んで行くソ連の船を包囲した。ケネディはキューバに核兵器を設置することはそのままアメリカを侵略することだと言って絶対に許することができないという強硬な立場を取った。
  ケネディが「核戦争をするようになってもこれだけは受け入れることができない」と強く出たからフルシチョフが投降した。これは何を意味するのか?武力を使えないようにすれば共産主義国家は自由主義国家と平和的な方法で競争をするしかなくなるということだ。
  次に国民に思想教育を行なうことが重要だ。
  思想教育といえばすぐ共産主義思想を連想する人がいるが、思想とは人間の利害関係を反映したものだ。民主主義思想は国民大衆の利益を基本に考える思想である。では民主主義思想に基づいた政権とはどのような政権か?それは国民が政権を担った人々に国家管理を委任した政権だ。 政治と経済、思想と文化の管理を委任したということなのだ。ところが委任された人たちが暴力を使っている。これでは暴力はなくならない。
  民主主義思想教育を強化してこそ、こうした嘆かわしい状況を克服し、暴力と独裁に反対する強固な意志が形成される。民主主義思想で国民が一致団結すれば、金正日がいくら軍事挑発を仕掛けてきても恐れることはない。
  そして何よりも中国との親善を強化しなければならない。
  北朝鮮の命脈を握っているのは中国だ。一番よいのは中国を説得することだ。北朝鮮から離れることが中国の真の利益につながるということを根気よく真剣に説得しなければならない。中国との間で自由貿易協定(FTA)が締結されるようにでもなれば金正日政権は自然と孤立する。
  中国も金正日が改革開放を拒否し、核兵器を振り回すことをよいこととは思っていない。以前は中国も金正日が核で脅迫してこそ、アメリカや日本や韓国が中国を尊重して頼み込んでくる、そうすれば自国の権威が上がると考えていた。
  こうした考えから、中国は金正日を通じて自らの権威を高め、アメリカの勢力が鴨緑江まで進出することを防ごうとした。だから金正日がよくないと分かっていながら引き続き同盟関係を結んできた。しかし現在に至ってはそれが中国の利益にかなっていない。今は過去のように中国を軽んじる国はない。もう金正日が必要でなくなっている。
  従って、現時点においては、中国が金正日と手を切ることの方が利益になるということを、アメリカや日本、韓国と手を結び自国の高度成長を進めることこそが中国の利益に合致するということを何度でも説明する必要がある。
  金正日政権の核は日本だけでなく中国にも大きな害となる。中国は長期的展望を持って北朝鮮との同盟関係を打ち切るか、そうでなければ北朝鮮を改革開放に向かわせなければならない。だが中国がいくら説得しても金正日は改革開放に進まないであろう。なぜならそれは首領独裁制度の終焉を意味するからだ。首領独裁制度がなくなれば金正日の居場所もなくなる。
  金正日が改革開放に進まなければ中国との矛盾は拡大する。それは中国が北朝鮮と手を切る可能性を増大させるということだ。中国に対する説得を強化し続けなければならない。

* 題名と中見出しは北朝鮮研究室がつけました。

 
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