北朝鮮と日本は11月3〜4日、およそ一年ぶりに中国・北京で協議し、過去の清算や拉致問題など両国間の懸案を集中的に話し合った。再開されたこの日の協議で、朝日両国は今後も協議を続けていくことで合意、次回の協議日程は外交チャンネルを通じて調整することにした。
日本側交渉代表の斎木昭隆外務省アジア大洋州局審議官は会談後の記者会見で、「非常に難しい対話だったが、協議自体は有益だった」とし、「拉致・安保・過去の歴史という三大懸案を議論するうえでバランスを保つのが重要」と強調した。 北朝鮮側代表の宋日昊(ソン・イルホ)外務省アジア局副局長も「両国間の国交正常化のために非常に有益な会談だった」と述べた。しかし今後両国が乗り越えなければならないハードルは高い。
朝日間に立ちふさがる核と拉致
「21世紀アジア共同体に向かってー韓日両国の課題」に出席するため韓国入りした田中均前外務省アジア大洋洲局長(現・日本国際交流センター研究員)は5日、インタビューに答え「日朝平壌宣言に基づいたロードマップは依然として残っている。ただし、核問題が解決されなければ進展できない。六カ国協議の妥結と日朝国交正常化は同意語だ」と語り、北朝鮮の核解決なくしては国交正常化がありえないと明言した。
しかし、それよりも厄介なのは拉致問題の解決だ。この問題の解決については対北朝鮮強硬派の安部晋三議員が第三次小泉内閣の官房長官に就任したことで様々な見方が飛び交っている。
彼が内閣の要に座ったことで日本政府の対北朝鮮姿勢が強硬姿勢に転じるのではとの観測もあるが、むしろ強硬姿勢がそがれるのではとの見方が有力だ。朝日国交正常化に前向きな小泉首相が、拉致家族から信頼の厚い安部晋三官房長官を取り込むことで、家族会への説得がスム-―ズに行くのではとの観測からだ。事実このところ彼の発言は以前のように強硬ではない。
だが、北朝鮮交渉に詳しい自民党内の有力議員は、拉致問題の解決は一議員が動かせるほど簡単ではないという。今のところ、この問題での譲歩は、国民世論が許さないというのだ。一つ間違えば政治生命にかかわるだけでなく内閣すらも吹っ飛びかねないと明言する。いくら安部官房長官が軟化しても無理だろうと語っている。
小泉首相の任期中に国交正常化はあるのか。
自民党の山崎拓前副総裁は11月13日、民放のテレビ番組に出演し、小泉首相の三度目の訪朝は「日朝国交正常化の調印式となる」との見通しを示したうえで、任期中に正常化が実現し、訪朝する可能性については「五分五分」との見方を示した。しかし、この発言は北朝鮮側を対話に引き止めておきたいという思惑から出たものでその可能性は薄い。
事実これまで朝・日交渉に熱心だった自民党の有力議員の間でも熱意は薄れており、北朝鮮側が、何らかの譲歩を行わない限り進展はないだろうとしている。また、「横田めぐみさんのニセ骨」鑑定を第三者機関に依頼しなかったことで北朝鮮との間でも水かけ論争が続いている。これではもつれた糸をほぐすのは難しい。
一方、北朝鮮側から見ても、いま日本側に譲歩する状況にない。イラクでの米国の苦境、10月28日の胡錦濤国家主席の訪朝、韓国からの援助拡大。どれを見ても北朝鮮有利の材料がそろっているからだ。
こうしてみると朝・日国交正常化交渉は、現在の所、入口にたどり着いたものの出口がわからない迷路に迷い込んだ形となっている。核問題の解決でもない限り朝日国交正常化への道のりは遠い。