コリア国際研究所
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【コラム】民団は何を改革しなければならないのか

2006.9.16
コリア国際研究所所長 朴斗鎮

 「改革民団」(河丙ト団長、8月22日辞任)の目玉として、また朝鮮総連第21回大会(2007年5月予定)の最大の成果として内外に誇示しようとした「民団と朝鮮総連の和解」は、共同声明発表(5月17日)後わずか3ヶ月で水泡に帰した。
 この過程で民団は大混乱となり、団長選出後わずか半年あまりで新たな執行部を選出する羽目となった(新たな執行部は、9月21日の臨時大会で選出)。しかし団長をはじめ三機関長に立候補した面々は高齢者がほとんど(70歳前後)で、その主張にも新味はない。口では「改革」を叫んでいるのだが、改革すべき根本問題がぼかされているのだ。これでは今回の「輝かしい闘い」の成果が生かされない可能性がある。
 では民団は何を改革すべきなのか。
 それは第一に、大韓民国政府との関係を改革しなければならない。
 民団の混乱は、過去もそうだがこの度においても本国政権に対する追随が原因となっている。今回は金大中・盧武鉉政権の「太陽政策」を在日社会に適用しようとしたことが根底に横たわっている。
 「改革民団」を掲げた河丙ト指導部がいかに詭弁を弄して説明しようが、多くの在日同胞と日本の世論は、今回の事態が本国からの「圧力」によって引き起こされたことを看破している。それが「南北共同宣言」の真似事であり、かげりの見えた「太陽政策」に海外から「熱風」を送り込もうとしたイベントであったことを。
 このことを総括すれば、民団が歴史的に背負ってきた問題点、すなわち在日同胞の利益よりもその時々の韓国政権の利益を優先するという問題点が明確になる。現在の民団の弱体化は、在日社会からの乖離の拡大が原因であるが、それは大韓民国政府の従属的機関でありつづけていることに根本原因がある。
 すでに在日社会は、一世の時代ではなく二世の時代さえも終わろうとしている。また東西冷戦も終わり、その残滓が朝鮮半島に残っているだけだ。三世以下の世代は、日本永住を当然のこととして受け入れ、日本社会での生活を利害の中心に据えている。
 だからこそ民団はその名称を「在日本大韓民国居留民団」から「居留」をはずし「在日本大韓民国民団」としたのではないのか。そうであるならば、もう一歩踏み込み大韓民国国民の団体という枠組みをも取り外すべきであろう。そして本国との関係を自主的な関係に変えるべきだ。それでこそ大多数の在日同胞が求める自由民主主義に基づく同胞生活者団体に変身できる。
 しかし残念ながら今回団長に立候補した人たちの主張からは、そのような大胆な提案は見られない。このことは年間約8億円にのぼる本国政府からの支援金に引き続き未練を残していることと受け取れる。こうした本国政権からの「ひも付き資金」に未練を残している限り、いくら「改革」を叫んでも同胞社会に根を張った自主的で活気に満ちた組織は生まれない。自分の食い扶持は自らの力で稼ぎ出してこそ自信と活力が沸き起こるというものだ。
 第二に、民団組織を確固とした自由民主主義理念に立脚した組織に改革する必要がある。
 今回の混乱の発端は、民主主義の初歩的原則である「手続き無視」から始まった。このここと一つをとっても民団の民主主義成熟度がどの程度の水準であったかが推し量れる。
そればかりか民団の民主主義水準は、「団長交代闘争」の中にも現れた。感情が勝ちすぎるのだ。秩序だった議事進行すら十分に行えない。そして「団長が朝鮮大学校卒業生だから危険だ」云々の論理まで出てきた。
 朝鮮大学校卒業生は、団長になる資格がないのであろうか。そういう規定が民団の決まりの中にあるならば、それこそ民主主義の原則に反するものだ。
 河丙ト団長の公開された経歴に朝鮮総連の「経歴」が記載されていなかったことに攻撃の矛先を向け、朝鮮大学校の卒業生だから問題だの、朝鮮学校の教員をしていたから問題だのとの議論には固定観念でレッテルを貼る「反共思想」の悪癖が感じられる。「反共思想」では民主主義を守り発展させることはできない。民主主義を発展させることができなければ独裁を克服することもできない。
 朝鮮大学を卒業しようがしようまいが、民主主義を発展させ在日同胞の利益と生活者団体としての民団を発展させることの先頭に立てる人であれば団長となる資格はあるのではないのか。勿論河団長が経歴を隠していたならばその人間性に対する批判は妥当だ。
 今回、河団長の問題点は、朝鮮大学校卒業生であったかどうかと言うところにあるのではなく、金正日独裁政権の「戦争瀬戸際政策」と日本人拉致をはじめとした「人権無視の政策」に追随する朝鮮総連中央と手を握ったことにある。
 過去も現在も在日同胞は独裁政権によって多大な被害を被って来た。独裁は民主主義の敵であり在日同胞の利益を阻害する最大の要因だ。河団長はその点を無視したのである。それは在日同胞の根本的利益を無視したといっても過言ではない。また現在における在日同胞の本国に対する貢献を語るならば、朝鮮半島の北半分に残っている独裁体制を民主化することほど重要な貢献はない。
 現在、在日同胞は日本社会の中で、日本人および日本の諸団体や各企業とのつながりの中で生活している。日本国民の大多数が金正日独裁政権に嫌悪感を抱いているとき、その忠実な集団である「朝鮮総連中央」と手を握るということは、多くの日本国民の反感を買うことになる。それはそのまま在日同胞の生活に跳ね返ってくる。
 第三に民団が本心から改革を欲するならば、もうそろそろ過去志向の「民族主義」を捨てる必要がある。在日同胞は自己のルーツを誇りに思う「民族心」だけで十分ではなかろうか。「民族主義」にこだわっていては、国際感覚豊かな若い人たちが民団に集まってこない。
 今回の混乱の中には「民族共助」なる古い民族主義志向で方向性を決めようとしたことにも原因の一端があった。1億2000万人の中の数十万人が「民族主義」で得られるのは1億2000万人のもう一方の「民族主義」だけだ。われわれ在日同胞にとって重要なのは「多民族共助」に基づいた「民族共助」であり、自民族だけの「共助」ではない。若い世代の登場がない限りこうした国際感覚豊かな「民族共助」は根付かないと思われる。  民団は以上のような根本的問題点を十分に検討し教訓を得ないまま団長だけを取り替えても、旧態依然とした惰性を克服できないだろうし、在日同胞が求める新しい組織には生まれ変われないであろう。

 
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