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北朝鮮、「非核化逆利用戦術」で局面打開なるか

コリア国際研究所 朴斗鎮
2011.8.16

 韓国の李明博大統領は8月15日、光復節での「8・15祝辞」で、世界金融危機の克服と市民の生活向上にむけた「経済パラダイム」の変化について述べたが、南北関係については「この60年間、南北は対決の時代を過ごしてきたが、時代を乗り越えて平和と協力の時代を開くべきだ。また南北協力にむけて責任ある行動と誠意のある姿勢で相互信頼を構築することが重要だ」と信頼構築の重要性を述べただけでこれといった言及はなかった。
 また北朝鮮の天安艦撃沈事件と延坪島砲撃については、具体的言及はなかったものの、北朝鮮の責任ある行動が、南北関係改善に必要条件であることを明確にした。 その一方で子供に対する人道的支援と自然災害に対する人道的支援は継続すると語った。
 李明博大統領が南北関係について具体的な言及をしなかったのは、対北朝鮮政策基調に特別な変化はないとの意思表示だったと思われる。
 7月22日、インドネシア・バリ島で2年7カ月ぶりに南北が接触し、韓国と北朝鮮との「南北非核化会談」が初めて開かれ、その直後(7月28〜29日)にはニューヨークの米国連代表部で、金桂寛外務第1次官とボズワース北朝鮮担当特別代が約1年7カ月ぶり会談し、双方がおのおの「(会談の)雰囲気は良く、建設的だった」(金桂寛)、「会談は真摯(しんし)かつ業務的だった」(米国務省)と評価したと伝えられた。そのことから、韓国の対北朝鮮政策に何らかの変化があるのではと見られていたが、李大統領の「8・15祝辞」の内容を見るかぎり当面は従来の政策基調を変えないものと判断される。

1、北朝鮮の「非核化逆利用戦術」

 2010年を通じて韓国に対する「戦争瀬戸際政策」を強化していた北朝鮮は、脅迫に屈しない韓国政府と韓米日協調体制の強化によって方向転換を余儀なくされた。
 北朝鮮は今年の「新年3紙共同社説」で「天安艦撃沈」と「延坪島砲撃」の謝罪には言及しないまま、韓国に対して「無条件南北対話」を主張し、米国に対しては「6ヵ国協議無条件再開」(南北会談→米朝会談→6ケ国協議)の餌を投げかけた。この動きは「米中首脳会談」(1月19日)以降具体化した。それは来年の大統領選挙を控え、外交的成果を求めるオバマ政権を「6ヵ国協議」に絡めて動かそうとするものである。
 6ヵ国協議について言うならば、北朝鮮はテポドン2発射(2009年4月5日)後、国連安全保障理事会の「議長声明」(2009年4月13日)で非難されたことを受けて、すでに「6カ国協議とともに朝鮮半島非核化の念願は永遠に消え去った」と強弁(2009年4月14日声明)していた。それがいま臆面もなく「6ヵ国協議の無条件再開」を主張している。そればかりか、あれだけ強く拒否していた「南北非核化会談」にも応じている。
 もちろんこの北朝鮮の動きは、韓国と共に核問題を解決して行こうとの誠意あるものではない。南北会談を、米朝会談に向かう停車駅くらいにしか思っていないだろう。金正日政権は「非核化」を餌に、米国をもう一度操り、韓国をかく乱して一気に局面打開を図ろうとしているのである。  事実「非核化対話」を南北会談にまで広げたこの「戦術」は、一定の効果をあげている。韓国政府が、天安艦撃沈・延坪島砲撃事件処理と北朝鮮核問題処理を分離し、謝罪のないまま北朝鮮と会談せざるを得なくなった状況がそれを示している。
 「南北非核化会談」は李明博政権にとっても「魅力ある会談」だ。それは「非核開放3000」という李政権の政策方向に合致しているだけでなく、これまでの韓国の忸怩(じくじ)たる思いを解きほぐす一助となるからだ。
 北朝鮮の第1次核危機が持ち上がった1993年6月、米国ニューヨークで初の米朝会談が開かれて以降、北朝鮮は米国だけを核問題の交渉相手と見なし、韓国を徹底して排除してきた。韓国は、北朝鮮の核の脅威に直面する当事者でありながらも、米国の背後から核の話し合いを見守るという立場に追いやられた。
 オバマ政権の「外交的成果願望」とこうした韓国の「思い」を利用しようとするのが今回の「非核化逆利用戦術」だ。
 とはいえ、「李明博逆賊輩党はこれ以上相手にしない」と宣言していた北朝鮮が、表面的であれ韓国と「核問題の話し合い」に応じてきた変化は重要だ。それはとりもなおさず、北朝鮮の守勢を示すものだからである。

 この点をしっかりと捉え米韓日が緻密な作戦で追い込んでいけば、ブッシュ政権のミスを挽回し、北朝鮮を追いつめてゆく余地はある。北朝鮮は現在、経済破綻によって、「強盛大国」どころではなくなっている状況だからだ。北朝鮮住民は、誰もが2012年に強盛大国が実現されるとは思っていない。ただ「表札」ぐらいは掲げるだろうと揶揄している。

2、「非核化逆利用戦術」のねらいと特徴

 では北朝鮮の「非核化逆利用戦術」のねらいはどこにあるのか?また、その特徴はどのようなものか?

(1)「戦術」のねらい

 北朝鮮の「非核化逆利用戦術」の前提には、米国の要求が「核不拡散」にレベルダウンしたとの判断がある。事実今回の6ヵ国協議再開で米国が求めているのは、核実験の停止、IAEAの核査察団の復帰、UEP(濃縮ウラン)核活動の停止などである。
 北朝鮮は、これまでの「6ヵ国協議」で、時間と経済援助をせしめてきただけでなく、「核の放棄は絶対行わない」との認識を米国に植えつけた。そして、どこにでも秘密工場が作れる「ウラン濃縮技術」も手にした。
 米韓日を相手に、老朽化した「寧辺」の核施設を取引材料にして、「核不拡散の約束」と引き換えに「経済制裁」を解除させ、「核保有」を既成事実化したまま米国との間で「平和協定」を結び、「3代目世襲体制」の安泰を手にすること、これこそがが「非核化逆利用戦術」の核心的ねらいである。
 そしてさらに、資金と時間を獲得することで核爆弾を小型化し、射程6000Km以上の大陸間弾道弾を成功させてしまえば、米国は手出しすることが出来なくなり、金氏王朝の韓国に対する併呑支配も夢ではなくなると踏んでいる。もちろんそこには、韓国における親北朝鮮大統領の再登場も含まれる。

(2)「戦術」の特徴

 第1の特徴は、米朝間だけでなく南北での核問題討議に応じたことである。
 これまで北朝鮮は、核問題は韓国と交渉する問題ではないとしてかたくなに拒んできた。
 しかし今回は「相手の土俵に乗って」自分たちの目的を達成しようとしている。
 第2の特徴は、韓国に対する挑発を続けながら南北協議を行なおうとしていることだ。
 労働新聞は、「南北非核化会談」後も朝鮮戦争停戦記念日の7月27日の社説で、韓国の李明博大統領を名指しし、「(北朝鮮は)挑発行為を必ず処罰する」と批判した。そればかりか8月10日には西海(黄海)で昼と夜の2回に5発の砲弾を発射し、そのうちの2発をNLLラインを越えた韓国側海域に着弾させた。
 また金剛山における韓国側資産の不当接収についても、韓国が当局間協議を7月29日に金剛山で開くよう提案したが、北朝鮮当局者は7月26日、同提案を事実上拒否する通知文を送ってきた。そればかりか、権利を米国の北朝鮮系同胞に売り飛ばそうとしている。
 第3の特徴は、この戦術を中朝同盟の活用によって展開していることだ。
 北朝鮮の「非核化逆利用戦術」は、政治・経済的に追い詰められた局面打開の戦術であるが、これを担保しているのが中朝同盟である、それはこの戦術の本格的展開が、今年初めの「米中共同声明」を出発点にしていることからも明らかだ。

3、今後の展望

 北朝鮮の「非核化逆利用戦術」が成功するかどうかはまだわからない。オバマ政権も李明博政権も北朝鮮の「ことば」ではなく「行動」を見据えているからだ。
 また北朝鮮内部にも3代世襲後継構図の構築をめぐり表面的に団結した姿を見せているが、内面的にはこれまでにない複雑な葛藤が存在する。 現在、北朝鮮は金正恩への権力世襲を最優先させている。 その最も核心的な内容は金正恩の軍掌握だ。 軍を掌握する過程で金正恩は天安艦・延坪島事件といった過激挑発を引き起こした。 こうした過激行動は世襲が定着するまでは繰り返される可能性が高い。それはそのまま対外政策のブレとして跳ね返ってくるだろう。
 一方韓国側も「非核化逆利用戦術」に対する対抗策に苦慮している。その内容は、昨年の韓国海軍哨戒艦「天安」爆沈事件、延坪島砲撃事件に対する北朝鮮の責任を問うとしたこととの整合性だ。
 韓国政府関係者はこの問題に対し、北朝鮮に天安爆沈事件と延坪島砲撃事件を認めさせ、謝罪させることを南北関係の前提条件とするものの、北朝鮮核問題を話し合う6カ国協議とは切り離して扱うという「ツートラック(二重)戦略」によるものだと説明しているが、説得力に欠ける。
 こうしたことから韓国政府内でもいわゆる「原則派」と「対話派」が対立している。
 原則論者は、先のインドネシアでの南北非核化会談について「ツバメが1羽現れたからといって春が来たとは言えない」とけん制し、南北対話を本格化するには、まず天安・延坪島問題を解決すべきだと主張している。
 一方、対話論者は北朝鮮に対する迂回(うかい)的アプローチを提言している。南北非核化会談で開けた対話局面を維持しながら南北関係の変化を模索してこそ、北朝鮮から天安・延坪島事件に対する謝罪を引き出せるとの意見だ。
 この「入口論」と「出口論」の対立は、来年の大統領選挙を目指して拡大する可能性は大きい。
 北朝鮮内部の葛藤と韓国内部の葛藤がどう展開するかは、オバマ政権の出方にかかっている。オバマ政権が宥和に舵を切り6ヵ国協議を無原則に再開させるようであれば、「非核化逆利用戦術」が李明博政権を苦しめることになり、北朝鮮に再び主導権が渡るだろう。しかし、今の所オバマ政権は6ヵ国協議再開の前提条件を変更していない。
 ここで注目すべきは、北朝鮮が(「平和協定の締結」や「制裁解除」を主張しているものの)、これまでと異なり「6ヵ国協議の無条件再開」を主張し、逆に米国が「条件付再開」を主張している点である。その条件として提示されているのは@北朝鮮が6か国協議共同声明を遵守し、「ウラン濃縮活動の即時停止」をはじめとした「非核化の意思」を示すことと、A韓国に対する挑発を止め、関係を改善することなどである。

 韓国政府もとりあえず当面の方向は変化なしとしている。それは8月15日の「光復節」での李明博大統領の演説で確認された。人事面でも原則派の玄仁沢( ヒョン・インテク)統一部長官の交代もなかった。李大統領がじっくりと対応しようとしていることの現れであろう。こう着状態では、先に動いた方が守勢に陥る。
 こうした米韓の姿勢に北朝鮮がどう答えてくるかは、今のところわからない。だが朝中同盟を活用した北朝鮮の「戦術」が行きづまった時、再び韓国に対する挑発を仕掛けてくるだろう。3代目後継体制の不安定状態がそれを求めるからだ。


 
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