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韓日友好は東アジアの平和と安定の前提

コリア国際研究所 朴斗鎮
2014.2.14

 韓日関係は今、従軍慰安婦問題、歴史認識問題、領土問題、靖国参拝問題などで対立している。1965年の国交正常化以来、このような全面的な氷河期はなかった。韓日両国は国交正常化50周年を1年半後に控えている。氷河期のまま来年を迎えるべきではない。

1、韓日友好は東アジアにおける民主主義発展の基礎

 人類発展の歴史は、独裁と民主主義との戦いの歴史である。近代民主主義が歴史に登場するのは、資本主義の勃興と密接に関係していた。
 資本主義が登場するまで人類は武力を支配した勢力が国家を統治した。その時代は人類が国家を形成してから数千年続いた。主権は皇帝や王にあり民衆は主権者ではなかった。民衆が主権者として登場し始めたのは資本主義の勃興と共に台頭した経済勢力(ブルジョアジー)が、17世紀以後に皇帝や王中心の既存の社会システムを破壊してからであった。その象徴的出来事がフランス革命である。
 民主主義は、第2次世界大戦を通じて資本主義国家の中に現れたナチスや天皇制ファシズムを打破した後、世界に急速に広がった。それは植民地解放運動としても拡散した。その結果、その後の数十年間で地球上から植民地はほぼなくなった。
 しかし、第2次世界大戦後1980年代まではファシズムと闘った勢力の中でプロレタリア独裁(階級独裁)を真の民主主義と主張する勢力、すなわち旧ソ連や毛沢東中国をはじめとした社会主義諸国が隠然たる勢力を保持していた。そして米国をはじめとした資本主義的民主主義と対立することになる。これが「冷戦」であった。
 「冷戦」は、人類発展の原動力である「主権在民」を誰が体現しているかの戦いであった。この戦いは、「主権在民制度」を発展させた資本主義的民主主義の勝利に終わった。しかし、アジアではまだ決着はついていない。市場経済を取り入れたものの中国が共産独裁の旗を降ろしておらずベトナムも下ろしていない。北朝鮮にいたっては、社会主義圏ですでに捨てられた「スターリン主義」の亡霊にしがみつき、首領独裁なる前代未聞の一人独裁のもとに3代世襲政権まで作り出し、核兵器で世界の平和を人質にして生き残ろうとしている。東アジアにおける民主主義と独裁の戦いは続いている。東アジアで冷戦の火種はくすぶり続けているのである。

2、韓日関係悪化の経緯―民主主義同盟の視点欠如

 東西冷戦真っ只中の1965年、米韓日民主主義体制強化の狙いのもとで、韓国の反対勢力と一部日本の反対派を押し切って韓日条約が締結され、そして新たな韓日関係が出発した。

1)曖昧さを残して決着させた「韓日条約」

 しかし、この条約では、米韓日関係強化を優先させたことから、日韓併合条約に対する解釈や独島(竹島)領有権問題などで曖昧な部分を残した。また今問題となっている「従軍慰安婦問題」もこのときは議論されなかった。
 1910年の日韓併合条約については「Already(すでに)」という用語で「すでに無効」と記載されたが、これが1910年の時点で無効であったのか1965年の韓日条約で無効になったのかが明らかにされなかった。竹島(独島)問題に至っては「解決せざるをもって解決とみなす」という曖昧なものであった。こうした点が韓日間に火種を残した。
 これは旧ソ連をはじめとした共産独裁と対峙し、東アジアにおいて米韓日体制を強固にするための「政治的決着」であったといえる。それは「韓日の対立点」解決は後世の世代に任せ、当面の課題解決に集中しようとの「思惑」から取られた措置であったと思われる。
 しかしその後、ことあるごとに日本の一部では「植民地時代に日本は韓国に良いこともした」との発言を繰り返した。それに対して韓国では「すべて否定の被害意識」で答えた。日本は「何回謝罪すればよいのか」と言い、韓国は「何回謝罪を覆すのか」と言っている。

2)韓国の民主化過程で従北朝鮮勢力が台頭

 韓国は1987年の民主化宣言で軍事独裁を終わらせ1993年に文民政権に移行したが、この時期、民主化運動内部に「主体思想派(従北朝鮮派)」が大挙入り込んだ。またキリスト教勢力の中に「解放神学派(親北朝鮮)」も入り込み勢力を伸ばした。この勢力が、金大中・盧武鉉執権10年間に「韓日条約」を売国条約と糾弾し「反日歴史観」を増殖させた。
 冷戦の崩壊で反共意識が薄れ、民主主義運動内に北朝鮮の主体思想と解放神学の影響が入り込んだ結果、韓国では民主主義が強化されるのではなく民族主義が強まった。従北朝鮮勢力は「民族どうし」とのスローガンを掲げて韓日条約の曖昧な部分に焦点を当て韓日間に対立の火種を作っていった。所得格差の拡大がそれを容易にした。
 「抗日の伝統がないとして」従北朝鮮勢力や左派から攻撃を受けてきた韓国保守派の主張は、これといった歴史観を提示できなかったために守勢に立たされた。そして韓国の歴史教科書も左派史観(親北朝鮮史観)にまみれていった。特に金大中・盧武鉉執権10年間はひどかった。こうした歴史観で育った世代が今、司法・立法・行政だけでなく言論機関にも多く入り込んでいる。

3)韓日民族主義の衝突

 一方冷戦後、日本においても戦後世代の中に民族主義が台頭し、戦後の歴史を見直す機運が高まった。「韓国の植民地化は悪いことばかりではなかった」「従軍慰安婦はでっち上げだ」「竹島問題で韓国に強硬対処せよ」などの声が広がった。さらには「太平洋戦争は侵略戦争ではなかった」「靖国参拝を非難するのは内政干渉だ」などの強硬意見が目立つようになった。
 こうした背景の中で、2011年8月に「従軍慰安婦補償問題」で政府に解決を促す韓国憲法裁判所の判決が下った。ここから韓日条約締結後最悪となる韓日関係が始まったといえる。
 その後、李明博・野田会談での亀裂をキッカケに「李大統領の竹島(独島)上陸」、「天皇謝罪要求発言」へとつながり、朴槿恵大統領就任時における麻生副総理発言、安倍総理の「河野談話・村山談話見直し発言」「侵略に定義なし発言」、それに対する朴大統領の「加害者被害者の関係は千年経っても変わらない発言」といわゆる「日本の韓国側歴史認識非難外交」が傷口を広げ、昨年末の安倍総理の靖国神社公式参拝で最悪状態となている。
 安倍総理の靖国神社公式参拝は、韓国の知日派を「脱力感」に陥れた。1992年以降、北朝鮮が展開してきた韓日離間のための「従軍慰安婦問題活用」は成功を収めたといえる。

3、韓日関係をいかに好転させるべきか

 政治は真理を探究することを使命としているのではない。何が正しいかではなく何が国民の利益になるか、なにが国民の幸福につながるかを追求することが政治の使命である。真理の探究は学者に任せて、政治家は過去よりも現在、そして未来を展望すべきだ。
 しかし現在の韓日関係は過去の歴史探求に縛られた面が多い。日本の植民地時代について、韓国は「すべて否定の被害意識」、日本は「良いこともしたとの意識」が根底にある。日本は「何回謝罪すればよいのか」と言い、韓国は「何回謝罪を覆すのか」と言っている。
 こうした問題に対してケネス・キノネス氏は次のように指摘した。
 「東アジア領域内の協力で主導的な役割を果たそうとする日本の熱望を考慮すれば、こうした非生産的な悪循環を断ち切ってしまうことが日本に有益だ。確実なのは、日本や周辺国はこうした民族主義の噴出で利益を得ることはできないという点だ。日本の政策目標が東アジア協力の構築という点で、日本政府は領域内の協力を目標に一貫した政策を樹立する必要がある。率直に言うと、日本にはそういう政策がない。むしろ周辺国に公式的に謝罪し、しばらくすると‘非公式的’な行動や言動でその謝罪を覆す形を繰り返してきた(ケネス・キノネス)。

1)お互いの立場に配慮することから出発することが重要

 日本は朝鮮半島に対する植民地支配で「良いこともしたとの認識」は捨てるべきだ。一方韓国は「植民地時代は暗黒の時代などとする被害者意識」を捨て、もうそろそろ「親日派狩り」から卒業しなければならない。
 韓日メディアも民族主義対立を煽るべきではない。世界が民主主義と市場経済でグローバル化し、IT技術の飛躍的発展によって人々が直接結ばれようととしている時代に民族主義の扇動で利益を得ることはできない。また、対立感情を高めることにしかならない韓日指導者に対する安易なレッテル張りもやめるべきだ。
 両国における民族的価値観の違いを知ることも重要だ。韓日両国民の価値観は自由民主主義と市場経済という面では共通点を持っているが、歴史的文化的価値観は相当に違う。一言で言ってしまえば、韓国は儒教の影響が強い貴族文化の伝統であり、日本は神仏崇拝と儒教が入り混じった武家文化の伝統である。
 たとえば朝鮮王朝時代、韓国では王に対する反逆があれば死後においても罰せられる。「剖棺斬屍(ブグァンチャムシ」の刑がそうだ、墓から屍を掘り起こして首をはねる刑罰だ。しかし日本では「死ねばみな仏」という思想が主流である。もちろん徳川家康が大久保長安の墓を掘り起こし首をハネて「さらし首」にした例はあるが、こうしたことは一般的ではない。
 こうした価値観の違いは生活の中にも数多い。姿かたちが似ているから考えも同じだろうと考えるのは大きな間違いだ。また韓国での自由民主主義と市場経済の価値観も、それが形成され始めて半世紀そこそこである。過大評価してはいけない。それさえもたえず北朝鮮独裁の影響を受けている。

2)解決の糸口は韓日間の公式文献に基づいてさぐるべき

 韓日国家間の意見相違は国家間の条約、国家の声明・談話などに基づいて解決すべきである。韓日条約(1965年)、河野談話(1993年)村山談話(1995年)「金大中大統領と小渕恵三総理の日韓共同宣言」(98年)などがそれである。民族性をあげつらって相手を誹謗中傷しても解決につながらない。むしろ傷口を広げるだけだ。
 韓国の強制徴用被害者に対する補償問題は、個人に渡すべき資金まで国家資金に転用した韓国政府が今からでも補償する義務がある。この点では「日韓条約」で解決済みとする日本側の主張を韓国政府も認めてその方向で動いている。

 【ソウル聯合ニュース】太平洋戦争中に日本により強制動員された韓国人被害者を救済・支援する公益財団が早ければ3月に正式に発足する。強制動員被害者の遺族団体などが19日、明らかにした。

 財団は被害者や遺族らに対する福祉支援事業、被害救済活動の支援、文化・学術事業や調査研究などを行う。財団設立に向けた運営資金として、今年20億ウォン(約2億円)が政府予算に反映された。政府は財団設立後、毎年予算を編成する予定。
 1965年の韓日請求権協定により、経済協力資金の恩恵を受けたポスコなど国内企業からの資金支援も相次ぐ見通し。さらに財団が発足すれば、日本政府や強制徴用した日本企業が支援基金を協議する可能性もあるという。
 被害者遺族や学界関係者ら39人で構成された財団設立準備委員会は16日に13回目の会議を開き、財団の運営案を可決した。
 準備委は2012年3月に設立されたが、理事の定員や任命方式など具体的な運営案をめぐる意見が折り合わず、進展していなかった。そんな中、遺族団体が政府案をおおむね受け入れ、財団設立が急進展した。

 しかし、韓日条約に含まれていない「従軍慰安婦問題」は、これからでも両国が協議して解決する必要がある。韓日協定第3条の紛争解決条項では、協定の解釈及び実施に関して紛争があった時は、まずは外交的手段で解決すると記されているばかりか、日本政府も過去の国会で外交保護権は放棄されたが個人の請求権は消滅していないと答弁している。

 従軍慰安婦裁判の一つ関釜裁判の控訴審(広島高裁1999年2月23日)、の結審で、原告代理人である山本弁護士が「日韓条約で解決済み」が法解釈として成り立たないことを論証している(ちなみにこの点に関しては裁判所は判決内で判断を示していない)。
 日本政府は、日韓協定締結以後、右協定により韓国人に対する戦後補償問題は完全に解決済みになったと繰り返し表明してきた。しかし、1991年8月27日以降の国会答弁においては、政府は日韓協定の規定は外交保護権の放棄にすぎず、個人の請求権は消滅していないことを認めるようになった。

 こうした観点から見ても河野談話(93年)は日本政府が継承すべき談話である。米国をはじめとした国際世論もそれを促している。世界の世論は従軍慰安婦問題で軍の関与と強制性があったか否かよりも、普遍的人権、特には女性の人権の立場から、軍に随行させた「慰安婦制度」そのものを批判し、補償が必要だとしているのである。

 米国政府、米議会上下院で「『慰安婦決議案』の遵守を日本に促す」法案(2014年度歳出法案。法的拘束力はない)可決。オバマ大統領も1月17日署名した。

また村山談話(95年)も継承すべきである。日本がポツダム宣言を受け入れ、極東軍事裁判を承認した上でサンフランシスコ講和条約を結んだが、この体制受け入れは村山談話の内容と一致する。この戦後レジームの歴史認識は日米韓の共通認識とすべきである。安倍総理は「侵略の定義は定まっていない」などと発言し、戦後レジームを覆そうとしているのではとの疑念を抱かせるべきではない。

3)米国は積極的に調整役を果たさなければならない。

 竹島(独島)問題では米国が調整役とならなければならない。日本の戦後レジーム確立過程での米国の東アジア政策のブレが大いに関係しているからだ。ポツダム宣言では日本の領土は北海道、本州、四国、九州とそれに付随する島であり、その他については連合国が決定するとしていた。ここで問題になるのは、日本が竹島領有の法的根拠としている「ラスク書簡」である。ラスク書簡は、朝鮮戦争中(日本の再軍備開始)に結ばれたサンフランシスコ条約に付随したものとされているが、この書簡が連合国の承認の下に出されたものなのか米国の一存で出されたものなのかが明確でない。米国の一存であったとしたら無効である。米国はこの点を明確にする必要がある。またその後、2008年に「米国議会地名委員会」は独島(竹島)を韓国領の中に含めている(2008年7月)が、このことについても説明する必要がある。

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 中国が覇権主義を露骨化させ、北朝鮮の金正恩政権の未熟さと過激さが明確となった現時点で、米韓日の緊密な連携は、日韓両国の安全保障と国益にとって極めて重要であるばかりか、アジアの民主主義発展にとってきわめて緊要である。歴史認識問題で米韓日の安全保障を弱体化させるべきではない。
すべての問題にはプライオリティ(優先順位)がある。現時点で民族的自負心を高揚させることが大事なのか、安全保障を磐石にすることが大事なのかをよく考える必要がある。

以上

 
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