目次
1、北朝鮮の新型短距離ミサイル発射に対する米・日・韓の反応
2、金正恩が再び軍事挑発行動に出てきた背景と狙い
3、北朝鮮の新型短距離ミサイルで韓国のキルチエーンは崩壊
4、米国の制栽強化と金正恩除去作戦の準備
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韓国軍合同参謀本部は4日、北朝鮮が同日午前に短距離飛翔体を発射したと明らかにした。当初、短距離ミサイルと発表したが、大統領府からの圧力を受けたのか、すぐさま「飛翔体」に修正した。しかし米国をはじめ専門家は短距離ミサイル、それもロシアの軌道変更ミサイル「イスカンデル」(Iskander NATOコード名はSS26『ストーン』))に酷似した新型ミサイルと断じた。5月9日にも短距離ミサイル2発が発射された。北朝鮮は2017年11月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)級「火星15型」以降、弾道ミサイルを試験発射していなかった。今回の発射はそれ以来、18カ月ぶりだ。
1、北朝鮮の新型短距離ミサイル発射に対する米・日・韓の反応
4日午前9時6分~同27分、東部の元山・虎島(ホド)半島から東側に向け短距離弾道ミサイル2発と240mm新型放射砲(多連装ロケット)を発射した。約70~200キロを飛行したという。北朝鮮側が発表した写真から見ると多連装ロケットと合わせて10発発射したと見られる
このミサイルに対して韓国軍は当初ミサイルと発表したが、その後「飛翔(ひしょう)体」に変更した。米国のトランプ大統領やポンペオ国務長官、日本の安倍首相や岩屋防衛相もミサイルと断定せず、「飛翔体発射情報の収集、分析に努めている」などとの曖昧な表現にとどめた。韓国の与党・共に民主党に至っては「韓米の軍事当局は今回の発射体を弾道ミサイルではなく放射砲あるいは戦術ロケットと推定している。その場合、安保理決議違反にはならない」とまで歪曲主張した。
しかし北朝鮮が5日、火を噴いて飛ぶミサイルの映像をこれみよがしに公表し、金正恩委員長が着席していたテーブルにも弾道ミサイル特有の放物線状の軌跡をはっきり表示した「射撃計画地図」が広げてあったことからこれがミサイルと確認された。しかし韓国軍は「北朝鮮の発射体は新型の戦術誘導武器」とし、ミサイルと発表しなかった。
今回韓国、米国、日本当局が5月4日の短距離ミサイル発射に対して、共通して「あいまい対応」に出た背景には、それぞれの国が、金正恩委員長との対話に未練を持っていることが関係したと思われる。
ところが5月6日、パトリック・シャナハン国防長官は、米国上院予算員会聴問会で、この発射を明確にミサイルと証言した。ダンフォード合同参謀本部議長も明確にミサイルと発言している。トランプ大統領はツイッターで「金正恩委員長は私との約束を破りたいとは思っていないだろう」と書き込んだが、その前に報告を受けた際には「金正恩は約束を破った」として激怒したとも伝えられている。
金正恩のさらなる挑発にトランプもミサイルと指摘
この米韓日の微温な対応に乗じて北朝鮮外務省は、5月4日のミサイル発射について、「正常な軍事訓練」と主張し、「地域情勢を緊張させていない」と強調した。また、「アメリカと日本も約束違反ではないとの立場を示した」と指摘した。そして金正恩は、米日韓のこうした対応を嘲笑うかの如く、5月9日午後4時29分と同49分(日本時間)に、今度は平壌の北西約160kmの平安北道亀城(クソン)から再び短距離ミサイルを2発を再び発射した。高度約50Kmまで上昇し、飛距離は各々270Kmと420Kmだったとされる。韓国軍は当初この発射が「シンオリ」基地からなされたとしたが、実際はそこから40Km離れた亀城だった。このことが分かるまでに40分もかかった。実際の戦闘が行われていたら韓国軍は壊滅的打撃を受けていただろう。
これでさすがにトランプ大統領も、飛翔体などと言えなくなり、ミサイル発射と認め不快感をあらわにした。トランプ米大統領は9日、ホワイトハウスで記者団に対し「我々は極めて深刻に見ている。(飛翔体は)小さなミサイルで、短距離ミサイルだった」と明らかにしたうえで、「(ミサイル発射は)だれもハッピーではない」と、北朝鮮の対応に不満を示した。トランプ氏はまた、「(米朝の)関係は続くけれども、何が起こるか見てみよう」と述べ、事態を注視する姿勢を示した。さらに、「私は彼ら(北朝鮮)が交渉したいことを知っているが、彼らが交渉する準備が整っているとは思わない」とも述べ、早期の米朝交渉再開には否定的な見方を示した(朝日新聞デジタル2019・5・10)。
日本政府もこの発言があってミサイルと発表し、「厳重に抗議する」との立場を明確にした。しかし韓国は今も文在寅大統領が「ミサイルと推定される」などと発言し、北朝鮮発射のミサイルをいまだにミサイルと断定していない。
周知のように、北朝鮮のいかなるミサイル発射も、ミサイル技術に転用されるいかなるロケットの発射も国連安保理制裁決議違反だ。国連安保理はすでに2006年の1718号決議で、北朝鮮に対して「弾道ミサイル技術を利用した全ての発射」を禁じた。今回の発射はこの決議に完全に違反している。
2、金正恩が再び軍事挑発行動に出てきた背景と狙い
金正恩は、「ミサイル発射と核実験は行わない」とのトランプ大統領と交わした約束を早々と破っただけでなく、今年の年末まで忍耐強く待つとした方針まで投げ捨てて国連安保理決議を違反する挑発を仕掛けてきた。
1)挑発に出た背景
金正恩が、自らが期限を切った年末まで我慢できずに、早々と挑発行動に出てきた背景には、ベトナムでの2回目の米朝首脳会談で手にしようとした制裁解除計画の失敗がある。この失敗で金正恩の権威が傷つき体制に揺らぎが出始めている。
まず、権力中枢が揺れている。直近の北朝鮮からの内部情報によると、対韓国、対米交渉を主導してきた金英哲党副委員長が統一戦線部長を解任(後任はチャン・グムチョル)され、現在自宅待機中だという。金正恩は、金英哲に対して「米国側の意図を何一つ見抜けなかったではないか」と怒りをぶちまけたらしい。いま統一戦線部は体制の立て直しに取り組み中だ。
また、金正恩の妹の金与正もハノイ会談終了後姿を見せていない。この件については彼女の宣伝・扇動手法の失策が原因指摘されてきたが、それだけでなくより深刻なのは、覚せい剤常用の噂が持ち上がっていることだ。
こうした中で特に混乱に陥っているがは外務省だ。幹部数人が米国に情報を流したスパイとして公開処刑された。本当にスパイだったかどうかは分からない。たぶん金正恩の権威を守るためのスケープゴートだったと思われる。そればかりか、ロ・朝首脳会談時にプーチン大統領に刀を渡すようにしたことも外務省内の金正恩反対勢力の仕業とされている。
北朝鮮外務省は、昨年末のチョ・ソンギル代理大使の亡命以来揺れに揺れている。この事件で外務省に党組織指導部の検閲が入り、一時李容浩(リ・ヨンホ)外相まで首が飛びかけた。次官の崔善姫が上司である李容浩にぞんざいな言葉を使っているのもこうしたことが関係している。だが調査の結果李外相は直接責任がなかったとして口頭警告で終わった。
しかし、外務省内党委員長(外務省内の党員を監督する責任者)だった。許哲(ホ・チョル)は責任追及され解任された。許哲(ホ・チョル)は、金日成の側近で統一戦線部長だった許錟(ホ・ダム:金日成の叔父金亨権の次女の婿、1991年に死去)の息子だ。ロイヤルファミリーに繋がる人物の解任は、張成沢以来となる。しかしその後も外務省関係者の亡命は続いている。ロ・朝首脳会談の準備過程でも複数の外交官が亡命した。
外務省がこのような状態では、とても米国との外交を展開できないであろう。外務省だけでなく現在北朝鮮内では、金正恩の能力に疑問を持ち反感を募らせる人たちが増えているという。結局金正恩は、軍事的挑発で権威を回復させトランプを動かす道しかなかったようだ。
また経済の想像以上の悪化が金正恩をせき立てている。これも焦りにつながっている。世界食糧計画(WFP)などは、今年、北朝鮮は食糧必要量に対して約140万トンが不足すると見ている。経済状況の深刻さについては、すでに昨年末から筆者が「第2の苦難の行軍」が始まったと伝えてきたが、最近になって韓国・日本のメディアも北朝鮮の食糧危機を頻繁に取り上げ始めた。よってここでは詳細を省くことにする。
2)その狙い
今回のミサイル発射の狙いは明白だ。自身の外交的能力ではとても米国に勝てないと考えた金正恩が、毀損した自身の権威を回復し求心力を高めるために、再び軍事的緊張を高めて対米交渉主導権を取ろうとしていることだ。金正恩が発射場面を公開したのは、国際社会および米国の対北朝鮮制裁に正面から対抗するというメッセージを込めたものとみられる。金委員長はこの日、「強力な力によってのみ、真の平和と安全が保障され担保されるという哲理を肝に銘じよ」と指示したと朝鮮中央通信が伝えた。
また韓国に対する脅迫も狙いの一つだ。文政権に北朝鮮の側に立って動けと圧力を加えているのである。これで韓国軍の防衛体制を崩壊させ、訓練を中断することで「平和」を手にするという幻想に満ちた文在寅式「平和構想」は破たんした。
今こそ文大統領は韓国軍に「武装体制を再整備せよ」と命令を下すべきだが、実際は挑発に乗りだした金正恩の方が「強力な力によってのみ平和と安全が保障されることを忘れるな」とハッパをかけた。あまりにも皮肉な現象だといえる。
3、北朝鮮の新型短距離ミサイルで韓国のキルチエーンは崩壊
労働新聞や朝鮮中央通信など北朝鮮メディアは、金正恩委員長が4日に発射現場を現地で指導したというニュースとあわせて10余枚の写真を5日に公開した。
1)迎撃難しい新型ミサイル
そこには、移動式発射台(TEL)からロシアのイスカンデルミサイルを改良した新型ミサイルと推定される武器を発射する場面と、300ミリ、240ミリ放射砲(多連装ロケット)から砲弾が発射される場面があった。ミドルベリー国際学研究所東アジア非拡散プログラムのジェフリー・ルイス教授はツイッターを通じて「北朝鮮がこの日発射したのは単純な発射体ではない新短距離弾道ミサイル(SRBM)」だとしながら「昨年2月の閲兵式時に公開された機種」と明らかにした。北朝鮮は昨年2月の建軍節閲兵式時に2発のミサイルを搭載したトラックを公開したが、このミサイルが4日に発射された新型武器と同一だというのが専門家たちの分析だ(中央日報2019・05・06)。
注:しかしその時より発射台の幅が1.5倍広くなりロシアから密輸したのではないかと分析されている)。
虎島(ホド)半島から発射された軌跡を時計回りに140度ほど回転させると、ソウル龍山(ヨンサン)の米軍基地が射程圏に該当する。
「韓国国防安保フォーラム大量破壊兵器センター」のヤン・ウク・センター長は「イスカンデルミサイルは高高度ミサイル防衛(THAAD)体系とパトリオットミサイルを無力化するために開発された最新ミサイル」としながら「低高度で飛行して目標地点で上昇した後に急降下する偏心弾道(Eccentric Ballistic)飛行をするため、現存する武器では、事実上、迎撃が不可能」と説明した。慶南(キョンナム)大学極東問題研究所のキム・ドンヨプ教授は「弾頭は重さが500キログラム以上で、核弾頭の搭載も可能」と話した。
イスカンデルミサイルは固体燃料のミサイルなので、発射の準備には5-10分しかかからない。したがって、速やかな探知・打撃が欠かせない。だが巡航ミサイルは発射・着弾に10分以上かかり、攻撃が難しい。弾道ミサイルはスピードが速く、5-10分以内に攻撃が可能だが、事前探知が正確・迅速に行われなければならない。F35ステルス戦闘機やF15K戦闘爆撃機が出撃して、精密誘導爆弾や「タウルス」などの空対地ミサイルで攻撃する案もある。だが即時の攻撃が可能なのは、戦闘機が目標地域付近を飛行している場合だけだ。地上の基地から発進・出撃するのでは、実際の攻撃は難しい。
対策としては、北朝鮮に近い地域に長期の滞空が可能なステルス無人機を飛ばし、小型爆弾・ミサイルで叩いたり、自爆攻撃を行う案が示されている。 ミサイル落下の最終段階でレーザー迎撃する案も取り上げられているが、まだ技術的な難関が多い(朝鮮日報2019/05/11 ユ・ヨンウォン記者)。
2)再び「ソウル火の海」の恐怖
韓国の対北朝鮮防衛体制の基本は、3軸防衛体制(①強力な武力での抑止②キルチェーン(策源地先制攻撃)③最終段階迎撃(パトリオットなど)だ。これで北朝鮮の長距離自走砲や240mm多連装ロケットなどの攻撃を完全に抑止しており、それらの方による「ソウル火の海」作戦を不可能にさせた。しかい今回の新型ミサイルの開発と誘導装置がつけられたと見られる300mm多連装ロケットで再び「ソウル火の海」の悪夢が浮上した。
韓国の防衛は、深刻な危機に瀕することになった。誘導装置付き300mm多連装ロケットが実践配備されれば、より後方からソウルを的確に狙えるだけでなく、それを前戦に配置すれば後方の平沢(ピョンテク)米軍基地をはじめとした主要米軍基地も射程圏に入る。また新型短距離ミサイルは、韓国のほぼ全域を射程圏内に収められ、偏心弾道で攻撃ができるために、THAAD(高高度防衛ミサイル)やパトリオットなどでの迎撃が不可能となる。特に脅威なのは9日の発射台が無限軌道(キャタピラ)だったことだ。4日のタイヤ型とは違いキャタピラ型はどこででも移動発射できる。この新型短距離ミサイルに核弾道が装着されれば韓国はお手上げだ。これで3軸防衛体制は無力化され「ソウル火の海」の恐怖が再び韓国民を襲うことになる。
4、米国の制栽強化と金正恩除去作戦の準備
米国は北朝鮮のミサイル発射に制裁の強化と軍事圧力の強化、そしてこれまでほとんど知られていなかった「暗殺武器」の公開にまで踏み切り圧力を強化している。
1)北朝鮮違法貨物船の没収
米司法省は9日(現地時間)、国連制裁決議に違反して石炭を輸送した疑いがある北朝鮮船籍の貨物船「ワイズ・オネスト」を差し押さえた(この船舶は位置や速度を他の船に電波で知らせる船舶自動識別装置(AIS)を作動させていなかったとして、2018年4月ごろにインドネシアの海事当局によって拿捕(だほ)された)。米国が制裁違反を理由に北朝鮮の民間の貨物船を差し押さえたのは初めてである。米司法省は同日、「北朝鮮の最大貨物船の一つで、石炭の輸送に利用されてきたワイズ・オネストを差し押さえ、米海域に移送中」と明らかにした。また、貨物船を没収するための民事訴訟をニューヨーク南部連邦地裁に起こしたことも明らかにした。新型短距離ミサイルで脅威を与える北朝鮮への警告メッセージと思われる。
1万7061トン規模のワイズ・オネストは、(2016年11月ごろから)中国やロシアへの石炭輸出や重装備の輸入に利用されてきた。昨年4月に南浦(ナムポ)港で石炭を積んだ後、東シナ海上を移動してインドネシア当局に摘発され、海洋法違反の疑いなどで調査を受けてきた。貨物船を米国が差し押さえたことで、北朝鮮の2度のミサイル発射後、緊張が高まっている(東亜日報2019・5・11)。
2)弾道ミサイル発射と朝鮮半島周辺への軍事資産集結
米空軍は5月9日0時40分(現地時間、日本時間9日午後4時40分)西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったと発表した(北朝鮮の短距離ミサイル発射は午後4時29分)。一方、海軍のオハイオ級原子力潜水艦「ロードアイランド」も南部フロリダ州沖で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)トライデントの実験を行った。
ICBM「ミニットマン3」とSLBM「トライデント2」の精度などを確認するのが目的だというが金正恩に対する圧力になるのは明らかだ。空軍傘下の地球規模攻撃軍によると、ミニットマン3の模擬弾頭は約6700キロ飛行し、マーシャル諸島付近に正確に落下した。
同軍は1日にもミニットマン3の発射実験を実施した。ただ、声明で「世界情勢や地域の緊張状態に対応した行動ではない」と述べ、北朝鮮による短距離ミサイル発射やイラン情勢などとは無関係と強調した(時事通信社2019年5月10日)。
ミニットマン3の発射は、事前に発表されていたために、北朝鮮の短距離ミサイル発射に対抗したものとは見られないが、むしろ北朝鮮が対抗措置として短距離ミサイル発射を同じ9日に合わせた可能性がある。
またイランとの緊張を激化させながらも米国は莫大な戦争物資を補給する「事前集積船(じぜんしゅうせきせん、Maritime Prepositioning Ship)」を朝鮮半島周辺に集結している。その規模は訓練水準や局地戦水準を越え全面戦の水準に達している。
まず、戦争物資積載(弾薬。戦車、装甲車、油類など)の巨大輸送船が、韓国の浦項(ポハン)港に3隻が停泊しており、釜山(プサン)、クアンヤン、鎮海(チンヘ)各港へ向け3隻が航行中(14日現在)である。そればかりか日本の沖縄、横須賀と横浜沖には兵力輸送船が待機中であり、艦隊補給船が九州近海で待機している。その他グアムなどに待機中のものと合わせれば11隻が朝鮮半島周辺に集結もしくは集結中である。
また海上で装備・弾薬などを補給する機動上陸支援船もシンガポールから朝鮮半島に向かっている。そして南カルフォルニアのワイニメ港では、陸軍1個師団が重武装できる武器と装備を輸送船に積載中である。
これらの戦闘準備艦船を総合すると、海兵隊3個旅団、陸軍1個師団、陸軍1個機甲旅団の武器準備とさらに陸軍1個機甲師団の武力を追加できる武器・装備の準備と推測される。空母はまだ来ていないがある意味で2017年時よりも多い実践的兵力が集結中だと言える(このほか秘密裏の武力結集もありうる)。
原子力空母ロナルドレーガンも5月12日に横須賀を出港し朝鮮半島海域に向かっているようだ。また強襲楊陸艦ワスプ船団も南シナ海演習を終え北上している。
5月11,12,13日には将官級VIP輸送機C-4C、C-37A,C-40Bが、次々と米国本土とハワイから横田基地に飛来した(シン・インギュン国防TV)。
3)恐怖の暗殺兵器公表
ウォールストリートジャーナルは、5月9日付で、不活性弾頭にナイフ6つを内蔵した暗殺武器「ヘルファイヤーR9X」について要旨次のように報道を行った。
「米国政府は、爆発することなくテロリスト指導者を殺害する、ピンポイント空爆用に特別設計された秘密ミサイルを開発した。この秘密の米国ミサイルは、近くの民間人には傷つけずテロリストだけ殺すことを目指している。
武器が爆発することはないが、内蔵するナイフがターゲットだけを細断処理するように作られている。 2017年と今年注目を浴びた(テロ分子の)標的を除去するのに使用された。
中央情報局とペンタゴンの両方がその存在を厳重に管理しながら使用している。 よく知られているHellfireミサイルの改良版であるこの武器は不活性弾頭で、 爆発するのではなく、急落するように設計されている」(WSJ2019・5・9)
金正恩の車両の周りをボディガードが仰々しく守っても頭上から高速で落下する「ナイフミサイル」を防ぐことはできない。
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金正恩が我慢強くないということは、米国に亡命した叔母(高ヨンヒの妹)高ヨンスクが語っていたが、やはりこの証言は正しかった。自分の思い通りにならないと、我慢しきれず怒り、凶暴になるようだ。今回もハノイ会談の失敗で多くの幹部が犠牲になった。
トランプ大統領は、まだ金正恩との対話に期待をかけているようだが、その期待は裏切られる可能性が高い。対金正恩交渉でトランプが自慢する成果は①ミサイル発射と核実験をしなくなった。金正恩はそれを約束した。②米兵の遺体を発掘し返還することを約束した(現在は中断)。③韓国系米国人を二人を釈放した、というものだったが、③以外はすでに反故にされている。
議会と官僚・専門家をはじめとした米国内の気流は、すでに一層の圧力強化に傾いている。米軍も軍事圧力の強化を進めている。
今後の流れとしては、金正恩の変心とトランプの変心がない限り、2017年の状況に逆戻りする可能性が高い。安倍総理が「条件なしで金正恩と向き合う」として「日朝首脳会談」に意欲を見せているが、現在の状況では可能性が低いと言えるだろう。それよりも遠からずして「偏心軌道」のSLBMが北朝鮮の3000t級潜水艦に積まれ、日本海から発射実験される事態にどのように対処するかを心配することの方が重要だと思われる。
以上