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「平壌市民革命」の成功条件が気になる

2011.2.19
孫光柱デイリーNK編集人

*この論考は2011年2月16日にデイリーNK(韓国語版)に掲載されたものを当研究所が翻訳したものです。中見出しは当研究所による。

 今日(2月16日)は、金正日の誕生日だ。北朝鮮の国家的祝日である。個人の誕生日を国家の祝日とする国がまだ地球上に存在した。
 嘘も続けていれば真実に「変態」するのだろうか?金正日の誕生日を祝うことなど客観的に見れば話にもならない「悪ふざけ」だが、30年も過ぎたためか、韓国社会もそのまま見過ごしている。新聞に「金正日偶像化誕生日騒動はいいかげんにしろ」式の社説も見当たらない。言論も「すでに世間が知っていることなのにいまさら・・・」としながら見過ごしている。
 いまもなおピグミー族やブッシュマンのような種族がいるのかどうかわからないが、アフリカの酋長の誕生日でもあるまいし、21世紀に個人の誕生日を国家的祝日にし「見よ!朕が生まれし日、太陽はいっそう輝き、森羅万象、万物が喜び歌い・・・」式の小学校の学芸会のようなコメディがG20首脳会談が開かれた大韓民国やG2となった中国に隣接した「革命の首都平壌」で繰り広げられている。これを21世紀の「最大級の謎」と言わずしてなんと言えるのか?
 だから2月16日と4月15日(金日成の誕生日)になれば、とてつもない不条理の前に立たされたようで憂鬱な気持ちになる。精神科医はこうした症状をホビア(phobia)と呼ぶかもしれない。
 「偉大であられる金正日酋長様」は一体何のための「革命」を行なってきたのか?「革命」を叫び人民を餓死させ、核兵器を振りかざして近隣諸国を苦しめていたが、最近は空き缶を差し出して「米帝国主義のモニタリングもそのまま受け入れるので、何とか食料だけでもください」としている。自国民も食べさせられないで何の「革命」をしようというのか?いやそれよりも金正日は何のために生きているのだろうか?誰かが一度金正日に聞いて見てはどうか。「あなたの生きる目的は何なのか?」と。
 21世紀の地球村で最大級の謎が「革命することがない革命の首都平壌が存在する理由」だ。

変化し始めた北朝鮮住民の意識

 金正日が父親の誕生日を利用し始めたのは1971年からだという。金正日が叔父の金英柱(キム・ヨンジュ)と権力争いをし、勝利を目前にしている頃だ。金正日は父親の偶像化のため、先に金日成の誕生日を国家的記念日として指定した。金日成の偶像化の開始が誕生日を祝う事だった。続けて金日成の肖像画を各家庭にかかげるようにした。
 1972年には、金日成の還暦祝いを盛大に行った。自身が後継者に確定した直後の1974年の4月14日、つまり金日成の誕生日の前日に金日成の神格化10大原則である『党の唯一思想体系確立の10代原則(いわゆる4月文献)』を発表した。その雰囲気を翌日の4月15日にうまく結びつけた。事実、この日から金日成は人間の地位から『神の地位』に上がったのである。
 金正日の、この種のプロパガンダは本当にすごい。民主主義社会では想像もできない超大型プロパガンダを進めたのだ。父親のために5千人の大合唱、2万人のマスゲーム、五大革命歌劇などを繰り広げた。これで金日成をたらしこんだ。北朝鮮の全域に8万7千個の各種偶像化建造物も作った。後に金日成は「正日が私の息子だったから言うのではないが、私は思想的に最高頂点に立っている喜びを感じた」と話した。
 金正日は父親を篭絡するためにあらゆる努力を傾けた。金日成はいつの間にか自らが「偉大な人物」との錯覚に陥り、後には金正日に操られるようになった。そのようにして金正日は権力を掌握し、2400万国民を洗脳し、金日成―金正日以外の考えをもたせないようにし、完全な閉鎖と孤立でジョージ・オーエル式「北朝鮮式動物農園」を作り上げた。その期間は40年にも及ぶ。そして1980年からは2月16日である自身の誕生日を国家的祝日とすることに着手した。それからすでに30年が過ぎた。
 金正日は父親を偶像化しながら、北朝鮮住民の思考方式を「全人民の金日成化」という新たなやり方で新しく組み立てたのだ。この意識化が数十年の間同じように繰り返されることによって住民はこの意識に囚われ抜け出せなくなった。
 住民の意識が変わったきっかけは、1994−1998年の大飢餓で300万人が飢え死んだ後だった。以後、人民は自身の生命を自ら守るために少しずつ市場を広げた。それは配給制の崩壊がもたらした「2002年7.1措置」で一層拡大した。そして2009年末の貨幣改革の失敗で市場勢力は決定的に「ルビコン川」を越えるようになった。
 北朝鮮住民が国家の主人、政権の主人になる道は何なのか? それは市場化に続いて、北朝鮮住民が自らの手で民主化に成功することだ。

エジプト事態と北朝鮮民主化

 最近、筆者が最も多く受けた質問は、近い将来にエジプト民主化のような事態が北朝鮮にも起きるかということだった。
 エジプト民主主義市民革命はムバラク退陣で成功した。エジプト国民は自ら新しい歴史を選択した。同時にエジプト民主主義も試されることとなった。今後、世界の市民がエジプト民主化過程を見守るだろう。
 エジプト民主主義が成功するためには、すべての政治集団がまず民主主義の手続きを尊重しなければならない。制度民主主義を定着させ、社会のあらゆる分野で民主主義の質的発展を推進しつつ、お互いが忍耐強く知恵を集めていかなければならない。
 民主主義の発展過程は、おおむね二つの発展方向を持つ。一つは独裁から民主化の方向である。社会のあらゆる分野で、権威主義と特恵の撤廃がある時は急速に、ある時は緩やかに進む。もう一つは、秩序から無秩序への方向である。この二つのモメントが、あたかもDNAの鎖のように螺旋(らせん)状に互いに絡み合いながら、制度民主化と質的民主化に社会が進化する。
 民主化過程で最初の螺旋部分は、振幅が大きい。試行錯誤が多いからだ。螺旋が上に進むほど螺旋の幅が狭まり理性主義、合理主義に基づく社会的調整過程を通過する。それが社会進歩の一般的過程だ。
 韓国社会は、理性主義、合理主義の社会的調整過程を十分に経ない状態で、北朝鮮問題をめぐって社会対立がより深刻化した。ここに早ばやとポピュリズムと民間分野の群衆主義(mobism)が前面に出てきた。民主主義が成熟段階に入る前に、すでに爛熟症状が出ているのである。
 エジプト民主主義が秩序を維持しながら進歩するのか、それとも無秩序なキャンペーン主義で終わるかは、全的にエジプト政治家の水準、言論の水準、国民の水準にかかっている。政治、言論、国民がエジプト民主主義の運命を決定するだろう。政治家と言論の責任はきわめて重い。
 エジプト民主主義が成功してこそ中東の民主化が成功する。その次はアジア民主主義とアフリカ、南米だ。それゆえ中東の民主主義は世界の民主化過程で重要な意味を持つ。したがってヨーロッパ、米国などは石油の輸送問題ではなく真剣にエジプト民主化を助けていかなければならない。

北朝鮮民主化は「情報の自由化」から始まる

 北朝鮮は、朝鮮王朝の滅亡、日帝の植民地から階級独裁、そして首領独裁へと100年間に民主主義を一度も経験できなかった。北朝鮮住民にとって『民主主義』という用語は観念に留まっている。首領制、階級成分、連座制、各種収容所、10大原則が廃棄されるべきであり、首領に主権があるのではなく、真の選挙によって2400万人の住民が主権を握らなければならない。これが北朝鮮民主化のカギだ。そして北朝鮮民主化は南北が平和統一に行く最初の関門だ。
 現段階で、最も重要なことは、北朝鮮民主化のためのインフラ整備だ。それは、北朝鮮の情報自由化である。情報自由化は三つの段階がある。
まず、一段階として、北朝鮮住民に韓国をはじめとする外部世界の情報を供給することだ。
 二段階として北朝鮮内部情報が持続的に外部世界に知らされることだ。
 三段階として北朝鮮内部で住民間の情報が共有されることだ。
 一段階と二段階は北朝鮮人権団体の自己犠牲によって初期の段階は終えている。大切なのは三段階だ。
 北朝鮮住民の間の情報共有は最も重要だ。朝鮮中央放送は一方的に宣伝するメディアである。朝鮮中央放送は北朝鮮内部のニュースを知らせない。咸鏡北道で起きた列車事故や市場の変化を黄海道で知ることは難しい。よって、住民の間の「横つながり」の情報共有が民主化運動を作り出すインフラだ。 簡単に言うとソーシャル・ネットワークだ。
 このネットワークを北朝鮮住民が自ら作るのは難しい。内部に民間放送を作ることも出来ず、民主新聞を発行することもできない。そこで、この役割を韓国がしなければならない。北朝鮮内部で起きるニュースを韓国の対北朝鮮民間放送が代行するべきだ。民間の対北朝鮮放送は、会寧で起きたことを平壌住民に知らせ、沙里院住民が清津の消息を聞けるようにするべきだ。
 現段階で北朝鮮の民主化を展望するのは簡単ではない。北朝鮮の一般住民は1789年フランス革命後の近代自然法の思想、たとえば人間の自然権(自由、所有、抑圧に対する抵抗)すらわかっていない。
 しかし、北朝鮮住民のすべてが変化を強く求めている。まだ民主化という用語は一般化されていないが、変化に対する強い渇望がある。それは知識よりももっと重要だ。あらゆる歴史的変化では知識よりも欲望が上位にある。このたびのエジプト民主化の情報は、北朝鮮住民の変化に対する要求をさらに強めるだろう。
 北朝鮮内部では、エジプト民主化に対する党次元での『教育』を集中的に行なうだろうが、すでに外部の消息に意識化され始めた住民の『知りたい欲求』をずっと制御することは難しいだろう。
 いわゆる『革命の首都平壌』とは『革命の対象』だけであって、革命の主体ではない。いま平壌政権が革命を行なう対象はこの世にはない。甲乙の関係で見ても金正日政権は甲ではなく乙の地位にある。しかし金正日政権は最後まで甲であると強弁するだろう。だからこそ『市民革命』以外に解決する方法がないのである。
 重要なのは大韓民国の役割だ。市民団体、言論、政府は、北朝鮮住民たちが自ら主権を掌握できるように北朝鮮情報の自由化を急がなければならない。

 
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