偽造紙幤問題に対する米-朝間接触は一応終わった。
李根北朝鮮外務省アメリカ局長は “アメリカに偽造紙幤協議体を作ろうと申し入れた”と語った。また「金融制裁」を解かなければ 6カ国協議に出ることができないという立場も再び明らかにした。
一方、米国務省キャスリン・スチーブンス東アジア太平洋副次官補は “米-朝間接触は財務部が主導したもので6カ国協議再開に関したものではない”と確認した。
偽造紙幤協議体提案は、米国と「口げんか」する時間稼ぎのため
米-朝接触は最初から偽造紙幤製造に対して米財務部が北朝鮮にブリーフィングする席だった。それだから米財務部は、李根局長にある程度の‘証拠’を見せ、米国の立場を明らかにして伝達したはずだ。それは接触後、李根局長の ‘偽造紙幤協議体提案’ 発言を見れば推し測ることができる。
今回の米-朝接触を見れば、北朝鮮は相変らず偽造紙幤問題と米国の金融措置を 6カ国協議と連携する ‘政治的事案’として扱おうとしている。これに対して米国は不法行為に政治的妥協はないという立場だ。
北朝鮮は米-朝間接触があった時間に短距離ミサイル 2発を実験発射した。これは北朝鮮のいつもの手法だ。すなわち対話と軍事的ジェスチャーを平行する北朝鮮式外交戦術だ。
南北間対話の時も長い間そうして来た。さかのぼれば毛沢東の‘ダムダムタタ、ターターダムダム’(談談打打 打打談談)の古い手法に出会う。金正日は短距離ミサイルを発射しながら‘(米国に対する)私たちの要求は強い’と言う点を示威したのだ。
李根局長の‘偽造紙幤協議体提案’は偽造紙幤問題を「口げんかでの時間稼ぎ」にしようとするものだ。
6カ国協議で昨年 9.19 共同声明に合意しておきながらも、軽水炉 先提供、金融措置 先解除などを主張して時間稼ぎしている手法と同じだ。米国は‘偽造紙幤協議体提案’に“もう少し考えて見る”と答えたと言う。外交用語で‘考えて見る’は‘そのような考えはない’と言う意味がかくされている。したがって米国は、最初の立場どおり‘法に基づいて’問題の解決を図るはずだ。
6カ国協議の行く末は?
では6カ国協議はどうなるのだろうか。
これまでの 6カ国協議の経過を見る限り、北朝鮮は、少なくともブッシュ政権期間には核問題を解決する意思がないように思える。たとえ金正日が核で‘商売’する意図があるとしてもブッシュ大統領の任期中には‘大きな商売’は難しいと思っているだろう。
だが、そうかといって6カ国協議自体は誰もが壊しにくい。先に 6者会談を壊せば、すべての責任を一人でかぶることになる。米国もイラン核問題が絡んでいるだけに、すぐには北朝鮮核問題を安保理に付託することは難しいようだ。11月には上下院中間選挙も行われる。金正日はあれこれと時間をかせぎながら、核兵器庫を増やしてブッシュ政権の任期満了を待つ公算が大きい。
北朝鮮の核保有及び量産を一番反対しなければならない当事者は韓国だ。
金正日の戦略は、軍事的脅威で韓国の対北支援を引き出し、いわゆる ‘朝鮮半島平和維持費用’を取り続けようというものだ。韓国が平和維持と投資信用等級維持を望むなら費用を出しなさいという考えだ。昨年北朝鮮が核保有を宣言した後二・三カ月して、韓国が 6カ国協議に復帰してくれる条件ということで米と肥料を持って行ったのもこの脈絡だ。金大中政権以後韓国は、北朝鮮を支援して‘平和’を物乞いする状態が続いている。ただこれを ‘民族共助’という言葉で国民を欺いて来ただけだ。
核問題は、韓国に対する軍事的緊張と平和維持を思いのまま作り出す最高の手段だ。それなのに韓国政府は北朝鮮核問題を第3者のように扱うだけでなく金正日政権の肩まで持っている。9.19 共同声明が出た時、まるで北朝鮮核問題がすべて解決したように騷いだ姿を思いだすと恥ずかしくて仕方がない。事態がこうであるにも関わらず、盧武鉉大統領は外国に出かけ“核問題は帝国主義後遺症”などと演説し、浅い知識の「知ったかぶり」を振りまいている。
盧武鉉政権、金正日従犯政権として名を残したいか?
今回米-朝間偽造紙幤問題接触は、一応うまくいったようだ。
李根局長がその目で直接一部‘証拠’を見ただろうし、不法行為に対する米国の原則的立場も再確認したはずだ。
金正日がミサイル実験打ち上げようが打ち上げまいが、不法行為に対しては原則的に推し進めるのが一番效果的だ。そうすることによって北朝鮮を6カ国協議のテーブルにも引き戻すことができる。金正日政権は打撃を被ると対話に出てくる。米国も‘北朝鮮の扱い’になれてきたようだ。
問題は建国以来の弱体政権である盧武鉉政権の外交安保統一チームだ。その間 ‘アマチュア’だとする表現もあったが、本当のアマチュア精神を発揮して包括的な北朝鮮問題解決に挑戦して見ようとする意志さえ見えない。韓国政府は今からでもよいから、金正日政権の各種不法行為に対しては原則的な立場で対応する必要がある。
韓国国内でも北朝鮮産麻薬、偽造ドルが摘発されたことはすべて周知の事実だ。総理室、外交部、統一部は不法行為真相糾明を要求し根絶を期さねばならない。それが出来ないならせめて声明だけでも出さなければならない。そうすることが原則にのっとった対北政策であり、口先だけの'韓米同盟関係'ではなく、実質的な韓米信頼関係修復の助けにもなる。
北朝鮮を刺激するなどといいながら、ご機嫌伺いに汲々としている限り、この政権が終わるまで金正日の手の平で踊ることになる。そうなれば盧武鉉政権は、金正日の‘従犯政権’として歴史に記録される運命となるだろう。