2008年日朝関係概況
コリア国際研究所 朝日・韓日研究室
2009.1.5
朝鮮半島で南北関係が停滞すると共に2008年の日朝関係も停滞した。 2007年9月に新首相となった福田康夫元総理は就任直後、「拉致問題」を必ず自らの手で解決して「日朝国交正常化」を前進させると決意し、中山恭子補佐官を担当大臣に格上げした。しかし北朝鮮の「テロ支援国家指定解除」が延期され、2008年9月に彼が退陣することで、日朝接近のムードは再び冷え込んだ。
1、2008年に入って加速した「福田訪朝」の動き
2008年に入り、北朝鮮の「テロ支援国家指定解除」へ向けた米朝接近と、福田内閣の「アジア外交」により「日朝国交正常化交渉」の機運は復活した。
(1)訪朝の布石は福田内閣発足後から打たれていた
北朝鮮強硬派の安部総理から福田総理へバトンタッチされた頃の米朝関係は、2007年2月13日の「6ヵ国協議合意」に基づき「宥和ム―ド」が広がっていた。2007年6月にはバンコ・デルタ・アジアの資金凍結解除され、7月14日から北朝鮮は寧辺にある核施設の稼動を中断した。2007年10月には、6ヵ国協議の「10・3合意」も実現し、北朝鮮核の無能力化と「核計画の申告」は一気に進むかに見えた。
こうした動きを背景に福田元総理は着々と訪朝の布石を打っていた。それに合わせて、「拉致問題」の解決を目指した政界、マスコミの動きも活発化し始めた。
その先鞭を付けたのが田原総一郎氏である。彼は2007年10月末から11月3日まで北朝鮮を訪問し、楊亨ソプ(サンデープロジェクトでは北朝鮮NO.3といっていたが事実誤認)と面談し、宋イルホとのインタビュー結果と併せてサンデープロジェクトで放映した。彼はそこで2007年内の「テロ支援国指定解除」があると語り、日朝国交正常化を急がせる論陣を張った。
*サンデープロジェクトでの田原発言(一部)
「去年の暮れくらいから今年にかけてアメリカの態度がぐんぐん変わっていった。今、恐るべき勢いでアメリカは北朝鮮に接近している。北朝鮮の資金を預かっていたマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)は、核実験に対する制裁で完全凍結していたが、それも解除してしまった。
核の脅威をなくせば100万トンの重油を提供すると5カ国で決めていたのだが、私が北朝鮮にいる間に、なんとその重油の提供も始めてしまった。日本は拉致問題の交渉が暗礁に乗り上げてしまったため、日本以外の4カ国、アメリカ・ロシア・中国・韓国で協議を始めてしまった。韓国はすでに5万トンの重油の提供を始めており、4カ国は残りの95万トンに相当する金額の経済援助を決めている。
おそらく今年(2007年)中にアメリカはテロ支援国家から北朝鮮を外すだろう。
このように、アメリカは恐るべき勢いで北朝鮮に接近している。むしろ、日本を除く4カ国が重油や経済援助を始めている今、拉致問題で交渉が滞っている日本は蚊帳の外に置かれてしまう可能性がある。日朝関係は3年間凍結・停滞したままで動きがないが、世界は動いているのだ。
一方自民党も山崎拓議員を中心に「朝鮮半島問題小委員会」を2007年12月11日に立ち上げ、その初会合を12月18日に党本部で開いた。これは福田総理の訪朝を党側から支援するのが目的であった。最高顧問に就任した山崎拓外交調査会長は「来年は日朝国交正常化という大きな政治課題がある。真剣な取り組みをお願いしたい」とあいさつした。衛藤征士郎委員長は会の目的として(1)日朝国交正常化に尽力する(2)北朝鮮の拉致問題に全力で取り組む−−などを挙げた。
(2)訪朝を後押しで発足した新たな日朝議連
2008年2月22日、日本民主党内にも、拉致問題などを解決し国交正常化実現を促する議員連盟(「朝鮮半島問題研究会」)が、有志議員15名ほどで立ち上げられた。
* 発起人(敬称略 五十音順)青木愛、市村浩一郎、川内博史、川上義博、喜納昌吉、今野東、千葉景子、自見庄三郎、外山斎、平岡秀夫、藤谷光信、松野信夫、室井邦彦、山下八洲夫、横峯良郎
この民主党有志議員の認識は「朝鮮半島の核問題をめぐる6カ国協議が進展し、米国と北朝鮮の関係が対話によって改善されつつある」ということにあった。
その後、自民党の山崎拓元副総裁は4月23日の講演で、北朝鮮問題をめぐって「福田首相訪朝をこの秋に実現し、日朝国交正常化の運びにできないかという夢を持っている。その地ならしを超党派外交でやる」と語った。核開発問題をめぐる米朝協議が進展した場合は、今夏にも議員外交で訪朝する考えを示した(朝日2008年04月23日)。
こうした動きは5月に入って一つの流れとなり、5月22日に「日朝国交正常化推進議員連盟」が設立された。自民党の山崎拓元副総裁が会長に就任し、顧問には自民党の加藤紘一元幹事長、民主党の菅直人代表代行、公明党の東順治副代表、社民党の福島みずほ党首、それに国民新党の亀井静香代表代行が名を連ねた。
この日の設立総会には賛同者70人のうち筆頭副会長に就任した自民党の衛藤征士郎、民主党の岩国哲人、公明党の遠藤乙彦、共産党の笠井亮、社民党の又市征治、国民新党の自見庄三郎ら各議員、それに事務総長に起用された民主党の川上義博議員ら総勢40人が出席した。この会合には福田政権下で外務省アジア大洋州局長に登用された斎木昭隆氏が出席し、「議員連盟には期待しています」とのエールを送った。
続いて「日朝友好促進区議会議員連絡会」第6回総会が6月3日、都内で行われた。総会には、都内17区から70人の区議会議員、そして総連東京都本部の朴昌吉委員長をはじめとした都内の総連支部委員長と活動家が参加した。この会で「日朝国交正常化推進議員連盟」の川上義博事務局長(民主党)は、「朝鮮を取り巻く国際情勢が進展の兆しをみせるなか、日本だけが「制裁」を行うことに疑問を持った超党派議員らによって議連が結成されたと述べ、(日朝国交正常化に向けた活動を)ともにがんばっていこう」と区議連の議員らを激励した(朝鮮新報 2008.6.11)。
(3)活発に動いた朝鮮総連
朝鮮総連は、3月27、28日「制裁措置撤回」を求めて国会前で座り込みを実施した。日本人組織である「朝鮮の自主的平和統一を支持する長野県民会議」なども40人ほど参加した。京都では3月28日に「日本市民250 余人(団体を含む)が賛同する『朝鮮民主主義人民共和国への経済制裁を解除し、在日朝鮮人に対する人権侵害の中止を求める共同アピール』が発表された」という(4月2日付朝鮮新報)。また、3月31日、東京都の「日朝友好促進区議会議員連絡会」は、大野松茂内閣官房福長官を訪ねて「万景峰92号」の入港阻止の解除を求める総理大臣と外務大臣宛要望書を提出した(朝鮮時報4月4日付)。
4月2日には「日朝国交促進国民会議」(会長・村山富市元首相)が制裁撤廃の集会を、4月6日には「朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会」(清水澄子代表・130名参加)など制裁の撤廃を掲げ、議員会館で集会を開いた。 呼びかけ人の同志社大学浅野健一教授、岩佐秀夫弁護士、日朝友好促進京都婦人会議の末本雅子代表、「朝鮮学校を支援する会・京滋」の江原護事務局長が京都弁護士会館で記者会見アピールを発表した(4月4日付朝鮮新報)。
超党派の地方議員や市民団体でつくる「福岡県日朝友好協会(代表―北原守・元県議会副議長)」が5月25日に設立された。同日、博多区内で設立発起人会と記念講演会が開かれた。同会は日朝国交正常化と友好促進を目的とし、交流や講演会などの活動で県民に理解と賛同を広く呼びかけていく。県民レベルの日朝友好団体の設立は九州で初めてである。
(4)「拉致問題」で流れた不可解な情報
5月9日の読売新聞は日韓関係筋が8日明らかにしたとして、日本政府が、拉致被害者の横田めぐみさんの娘や元夫と、めぐみさんの両親との面会を韓国内で実現できるよう韓国政府に北朝鮮との仲介を要請し、日本側は面会が実現すれば、めぐみさんの「遺骨」として北朝鮮から提供された別人の骨を返還する考えだと報じた。この報道では、拉致問題の現状を打破するには日本側から踏み込んだ提案をする必要があると判断したためとの分析も加えられていた。
この報道に対して、9日午前の閣議後の記者会見で町村官房長官は、「政府全体としてこうした方針を決定したことは全くない」と述べた。
また毎日新聞も5月27日付けで、『北朝鮮が日本人拉致事件に絡み、被害者とみられる日本人について「まだ数人が国内におり、帰国させる用意がある」と米国に伝えていたと政府関係者の話として報道した。
この報道に対しても、町村官房長官は27日夕の記者会見で全面否定した。
この時期(5月上旬)、民主、国民新両党の議員連盟「朝鮮半島問題研究会」の岩國哲人会長(民主党元副代表)も、大阪経済法科大アジア太平洋研究センターの吉田康彦客員教授から訪朝報告を受けた際、「日本国民は拉致問題に拉致され、自縄自縛に陥っている」と語っていた(産経2008.5.21)。
時を同じくしてバーシュボウ駐韓米国大使は、韓国のハンギョレ新聞(5月14日付)のインタビューに答え、「日本人拉致問題の解決はテロ支援国家指定解除の前提条件ではない」との見解を示した。
2、日朝交渉再開するも福田総理辞任で再び膠着
日朝交渉促進の動きが加速されたものの、4月が期限となっていた3度目の対北朝鮮制裁は、制裁延長の世論に押され、4月11日午前の閣議で4月13日以降も延長されることが決定した。
町村官房長官は閣議後の記者会見(11日)で、(1)北朝鮮が核問題に関する6か国協議で07年末までの実施を約束した、すべての核計画の完全かつ正確な申告をいまだに実施していない(2)拉致問題でも具体的対応をとっていない――ことを挙げ、「北朝鮮を巡る諸般の情勢を総合的に勘案し、(制裁)措置の継続が必要と判断した」とする談話を発表した。
*延長の内容は<1>貨客船「万景峰号」など北朝鮮籍船の入港の全面禁止<2>北朝鮮からの輸入の全面禁止――で、閣議決定を必要としない北朝鮮国籍保有者の入国原則禁止や、北朝鮮への「ぜいたく品」の輸出禁止などの措置も継続される。
これに対して北朝鮮は「福田政権の反共和国・朝鮮総聯策動は、安倍政権より狡猾かつ陰険」と決め付け、「制裁措置延長は朝日敵対関係を極限点に導く無分別な妄動」などと、福田政権への非難を活発化させた。
こうした中、拉致被害者家族連絡会(家族会)の飯塚繁雄代表は5月22日、北海道旭川市内で、市民集会の講演後に記者会見し、「早急に600万人の署名を集め、首相官邸に持ち込みたい」と語った。そしてこれまで、拉致被害者救出を求める署名は590万人分が集まったと明らかにした。
(1)テロ支援国指定解除に絡めた日朝会談の開催
ヒル国務省次官補と金桂官外務省次官が5月27、28の両日、北京の米大使館で協議を行った。協議では「10・3合意第2段階」の行動措置が示され「最後の手順」について意見が交わされた。
この会談を受け、北朝鮮に対する「テロ支援国家指定解除」を促進させるための朝日(日朝)会談が6月11日から12日にかけて北京で行なわれた。協議は昨年10月の中国・瀋陽での非公式協議以来、約8か月ぶりであった。
この結果について北朝鮮は次のように発表した。
「朝・日平壌宣言に従って不幸な過去を清算し、国交正常化を実現するための朝日政府間実務会談が2008年6月11、12の両日、北京で行われた。
会談で双方は、相互の関心事となっている懸案問題の解決に関する真しな協議を行い、次のような行動をとることにした。
朝鮮民主主義人民共和国は、拉致問題の再調査を実施する。
また、朝鮮民主主義人民共和国は『よど』号関係者問題の解決のために協力する用意を表明する。
日本国は今回、現在取っている朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置の部分解除として、@人的往来の規制解除Aチャーター便の規制解除B人道的支援関連物資輸送を目的とする共和国船籍船舶の入港を許可する」(朝鮮通信)。この北朝鮮制裁措置一部解除の項目は、朝鮮総連が4月に日本政府に要請した重要項目に沿っているものだった。
この内容で一部制裁解除に踏み切ろうとした福田内閣は、再び日本国民の反発に遭遇した。その結果、即時解除に踏み切れず、「再調査」の動きを見たうえで解除するという一歩後退した対応を余儀なくされた。日本国民は福田元総理の前のめりを許さなかったのである。その後、北朝鮮側も「再調査」の動きを示さなかった。これで、福田政権発足以降進められてきた福田訪朝の流れは失速する。
(2)日朝接近で宥和派と強硬派の対立表面化
自民党の安倍晋三前首相は6月18日、東京都内で講演。北朝鮮への「対話」を重視する山崎拓前副総裁について「交渉中の政府より甘いことを国会議員が言うのは『百害あって一利なし』と(別の講演で)言ったが、『百害あって利権あり』と言いたくなる」と述べ、山崎氏を強く批判した。また、拉致問題の再調査に北朝鮮が同意したのを受け、対北朝鮮制裁の一部を解除するとした政府の方針には「北朝鮮が行動しない限り、信用してはならない」と述べ、政府に慎重な対応を求めた(毎日新聞 2008年6月18日)。
これに対して自民党の山崎拓元副総裁は6月19日の山崎派総会で、安倍晋三前首相が「百害あって利権あり」と批判したことを受けて、「私の政治生命にかかわる発言だ。私は利権政治家ではない。誹謗(ひぼう)中傷する政治家の人格を疑う」と反論。総会後、記者団に「名誉棄損に相当する。安倍氏に取り消しと謝罪を求める」と述べた(産経2008.6.19)。
続けて山崎氏は6月21日、福岡市内で記者団に対し、中国の習近平(シーチンピン)国家副主席が北朝鮮で金正日(キムジョンイル)総書記と会談したことに触れて「内容を漏れ伝え聞くと(中国側は)8月8日の北京五輪開会式に金氏の出席を要請した」と述べた。そのうえで、金総書記が招きに応じることになれば「ブッシュ米大統領や福田首相らも出席の意向があるようなので、朝鮮半島の非核化をめぐる重要な話し合いの場が持たれる」と期待感を示した(朝日新聞、2008・6・21)。
山崎、安倍両氏の舌戦の最中、加藤紘一議員は7月7日夜のBSテレビ番組で、小泉純一郎首相(当時)が訪朝した平成2002年秋、拉致被害者5人が帰国した際、政府が5人を北朝鮮に返さないことを決めたことについて、「当時官房副長官だった安倍晋三前首相を中心に(拉致被害者を)返すべきでないと決めたことが日朝間で拉致問題を打開できない理由だ。返していれば『じゃあまた来てください』と何度も何度も交流していたと思う。そこが外交感覚の差だ」などと発言した。また金正日総書記が拉致問題を認め、謝罪したことについても「天皇陛下みたいな人物だ」と述べた。この発言をめぐり、拉致被害者家族会(飯塚繁雄代表)と「救う会」(藤野義昭会長)は7月9日、「拉致被害者や家族の思いや不安をまったく理解しようとしない加藤氏に強い憤りを覚える」と抗議声明を出した。
(3)世論の反発と福田総理辞任で再び膠着状態へ
北朝鮮宥和派と強硬派の舌戦が続く中、6月26日にブッシュ政権は、北朝鮮の「テロ支援国指定解除」を米国議会に通告する方針を発表した。この通告後の7月9日夕、福田首相は、主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)会場の洞爺湖町のホテルで、中国の胡錦濤国家主席と会談し、北朝鮮が拉致問題の再調査を実行していないことから、経済制裁の一部解除は困難との認識を示し、中国側に協力を要請した。胡主席は「適切な形で(努力を)推進したい」と応じた。
だがこうした動きに日本の世論は賛成しなかった。読売新聞社が7月12、13日に実施した全国世論調査(面接方式)で、北朝鮮が拉致問題の再調査を約束したことなどを受け、日本政府が経済制裁の一部を緩和する方針を示したことについて聞いたところ、「再調査の結果を見た上で緩和するかどうかを決めるべきだ」という答えが45%で最も多く、「緩和すべきではない」の40%が続いた。「再調査の進め方で日本政府が納得すれば緩和してよい」は11%にとどまった。北朝鮮の核開発計画申告書提出を受け、米国がテロ支援国家指定を解除する方針を示したことには、「納得できない」は80%で、「納得できる」の13%を大きく上回った。一連の対北朝鮮外交について、世論は厳しい視線を向けていた(2008年7月14日 読売新聞)。福田訪朝の動きはこの時点でついえたといえる。
北朝鮮の「テロ支援国家指定解除」期日と時を同じくして、日本と北朝鮮の日朝実務者協議が8月11、12の両日、中国・瀋陽で開催された。日本側は外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長が出席し、北朝鮮側は宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が出席した。協議は1日延長した13日未明(日本時間同)、日本が求めていた拉致被害者の再調査の形式や方法について双方が合意して終了した。調査対象については、政府認定の拉致被害者のほか、特定失踪(しっそう)者も含めることを確認した。日本側が日朝関係改善のための措置を取ることでも合意した。この合意で調査委員会は8月中にも設置されるとみられていたが、「テロ支援国家指定解除」延期によって実現せず、結局9月1日の福田総理辞任表明でお流れとなった。
9月4日夜、北京の日本大使館に「北朝鮮は合意事項を履行する立場だが、日本側の事情にかんがみて新政権がどういう立場か見極めるまで調査委員会の立ち上げを差し控える」と伝えてきた。高村正彦外相は9月5日、この通告事実を閣議後の記者会見で明らかにした。
3、麻生政権登場で反発強める北朝鮮
その後進展がなかったため、新しく出奔した麻生政権は、10月に入って再び制裁を6カ月延長した。これに対して北朝鮮政府機関紙「民主朝鮮」は10月28日、「6カ月でなく数十年延長しても、少しも驚かないしびくともしない」と強調、圧力強化ではなく植民地支配の過去清算に乗り出すよう求める論評を掲載した。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」も同日、拉致問題解決を国交正常化の条件とする日本の出方を非難、「正常化前に必ず実現されるべき問題は過去清算だ」と主張する論評を掲載した。
新しい自民党総裁に選出された麻生総理は10月30日昼、北朝鮮に対する制裁措置について、「『対話と圧力』は常に北朝鮮との交渉の基本で、どういうバランスでやるかが課題だ。(拉致被害者の再調査は)8月以降、話が進んでいない。それを見ながら考える」と述べ、北朝鮮が再調査先送りを続ければ、追加制裁を検討する姿勢を示した。これに先立つ10月29日、漆間巌官房副長官は、拉致問題対策本部関係省庁対策会議で、拉致問題解決の手段として行なっている経済制裁について「今の北朝鮮への制裁を検証した結果、北朝鮮が痛痒を感じないものであって、圧力にはならない」と自省したうえで、「大事なのは北朝鮮が本当に困る圧力をかけられるかどうかだ。今後、工夫する必要がある」と発言した。麻生政権はまた、6ヵ国協議においても「検証の文書化」を強く求める方針を堅持し、「口約束」だけで第2段階を終えようとするヒル次官補の動きを牽制した。
これに対して北朝鮮側は10月28日付労働新聞論評を通じて、日本が今のように朝・日国交正常化が拉致問題解決にあるというやり方を引き続き取るなら、朝・日関係は悪化の道だけを歩むであろう(労働新聞)と非難した。さらに、「労働新聞」は12月16日、6カ国協議に関する論評で、核施設無能力化の見返りとなる経済・エネルギー支援を拉致問題を理由に留保している日本について「招かれざる客、厄介者であり、協議のテーブルに残る必要はない」と非難し、あらためて「日本排除論」を展開した。
麻生政権登場で再び日朝間の交渉は膠着している。膠着が続く中、石原慎太郎東京都知事ら5都県の知事が発起人となる「北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会」に北海道、兵庫、鹿児島など新たに23道府県の知事が参加の意思を伝えてきていることが12月14日、分かった。設立発起人の1人である埼玉県の上田清司知事がさいたま市内で同日、拉致問題解決を求める街頭署名活動の後、明らかにした。上田知事は「多くの知事の参加で、北朝鮮にプレッシャーをかけられるのではないか。オバマ次期米大統領との面会も企画したい」と語った。また民主党・自民党ともに、拉致被害者救出のための送金停止、輸出品目の全面禁止などの制裁強化を相次いで決定した。
日朝の冷え切った関係が改善されない結果、日朝貿易は2001年の4億7500万ドルから2007年は1000万ドルを切って700万ドルまで激減している。
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