来年4月11日の第19代韓国総選挙(国会議員選挙)に向け、韓国外に住む韓国人の選挙人登録が11月13日から始まった。ニュージーランドとフィジーを皮切りに、107カ国158の韓国在外公館で一斉にスタートする。
在外選挙は韓国の憲政史上初めて。在外国民投票関連法の改正で、在日韓国人ら在外国民の投票が可能になった。ただ、国会議員選挙で投票できるのは比例代表選のみとなる。選挙人の登録申請期間は90日間で来年の2月11日まで行われ、手続きを済ませた在外国民に限り投票権が与えられる。中央選挙管理委員会は在外国民の有権者数は223万人と推計している。
在外選挙人登録申請は、@在外選挙人登録申請書A旅券の原本とコピーB外国人登録証明書の原本と表・裏のコピーを揃えて公館(日本では駐日大使館・総領事館)に本人が訪問して行う(郵便申請は不可)。また、派遣勤務や出張、留学などで海外に滞在している国外不在者は、旅券の写しを居住国の公館に持参するか、郵送で申し込む。
中央選挙管理委員会では、この登録申請に基づき在外選挙人名簿を作成後、同名簿閲覧と異議申し立て(来年3月3日〜7日)を経て同名簿を確定(3月12日)し、在外選挙人に投票用紙および投票案内を国際郵便で発送する(3月17日まで)。在外選挙人は3月28日から4月2日までの6日間に居住国の公館に設けられた投票所で投票する(郵便投票不可)。選挙投票用紙は国内投票(4月11日)終了後に同時開票される。
中央選挙管理委員会は在外選挙に向け、28カ国の55の公館に職員を派遣して、全158公館を連結する電算システムを構築した。だた、今回の在外選挙では公館が設置されていない70カ国以上の国に居住する在外国民は事実上、選挙権を行使できないため、論争が予想される(聯合ニュース2011/11/11)。
日本では去る10月14日、駐日公館内に在外選挙管理委員会(在外委員会。金基奉委員長)を設置。在外委員会は2013年1月18日まで運営され、来年4月11日投・開票の第19代国会議員選挙と同12月19日投・開票の第18代大統領選挙の在外選挙を管理する。在外委員会は投票管理、投票管理官の選挙管理事務の監督、選挙犯罪の予防・取り締まり業務を遂行し、選挙法違反行為の申告受付センターも運営する。
在日本大韓民国民団(民団)では国政選挙に在外国民の一員として積極的に参与するために、「在外国民選挙参与運動民団中央推進委員会」(委員長=鄭進団長)を構成するとともに、各地方本部単位で選挙制度に関する研修を実施している(民団新聞2011.11.2)。
1、在外国民参政権が認められるまで―李健雨さんたちの戦い
在外国民の選挙権行使は簡単に実現したのではない。そこにはその権利を訴え続けてきた在日の人たちの戦いがあった。李健雨(リ・コヌ)氏をはじめとした在日韓国人本国参政権連絡会の人たちである。しかし、残念なことに李健雨氏は、2008年8月5日午前3時39分、胃がんのため大阪市中央区の病院で死去(享年56歳)したため、今回の投票には参加できない。まことに残念である。
李健雨氏死去の直後、四国新聞に以下のような記事が掲載された。
李健雨氏(リ・コヌ=在日韓国人本国参政権連絡会議長)5日午前3時39分、胃がんのため大阪市中央区の病院で死去、56歳。大阪府出身。自宅は兵庫県三田市富士が丘4の3の5。葬儀・告別式は9日午前11時から大阪市生野区勝山北5の12の39、普賢寺で。喪主は長男相民(サンミン)氏。
日本に住みながら、韓国政府に在外韓国人の参政権を求める運動に取り組み、07年6月には参政権を認めない現行法を「違憲」とする憲法裁判所の判断を勝ち取った(四国新聞2 008/08/07 12:30)。
1)在外国民の参政権をかたくなに拒んでいた韓国司法当局
2003年9月13日、在外同胞の法的地位向上にむけた盧武鉉政権の姿勢が注目されているなか、ソウル地裁・民事控訴8部は、兵庫県三田市在住の李健雨さんなど在日韓国人2、3世5人が「現行の選挙法に規定がなく、海外同胞の選挙権が制限されるのは国家の過ちである。慰謝料として1000万ウォンずつ支給せよ」と国家を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、原審通り原告に敗訴判決を下した。
原審の2002年2月の一審判決では、ソウル地裁が、在外国民の本国投票権を否定した1999年1月28日の憲法裁判所の判断を引用し原告側の訴えを棄却していた。
この原審判断では、判決理由として、▽国土が分断されている韓国で北朝鮮住民や朝総連系在日同胞に対し選挙権は認められない▽選挙の公正性を確保するのが難しい▽選挙技術上からみても不可能▽選挙権が国家に対する納税、兵役、その他の義務と結びついているため、こうした義務を履行しない在外国民に選挙権を認めることはできない――などの点があげられた。
原告側は判決を不服として控訴。反対弁論では、「社会的民主化が進むなかで在外同胞の参政権問題がいまだに解決しないのは憲法裁判所の判断に逆らわいたくないという姿勢もさることながら、韓国政界が在外国民の票がどういう影響を及ぼすか読めないため積極的になれないことに起因している」と指摘し、原告五人全員の陳述書を参考資料として提出した。
しかしソウル地裁は控訴審でも、ほぼ一審の判決内容を踏襲するかたちで原告敗訴を言い渡したのである。
2)不当判決に対する李健雨さんのコメント
この判決に対して原告の李健雨さんは次のようなコメントを残した。
「一言でいえば1999年に出された憲法裁判所の判断をそまま踏襲した下級審の形式的かつ事務的な判決にすぎず、日本の植民地支配の犠牲者である在日国民に対する配慮を微塵も感じさせない誠に遺憾なものだ。
もともと憲法裁判所の審判内容には次のような問題点があった。
まず第一に、国民の納税、兵役義務を果たしていないということであるが、国民の基本権は何らかの義務に免じて与える反対給付的な権利ではなく、それ自体が国民の国民であるがための権利である。まして納税は所得の発生するところで支払うものであり、また韓日間には二重課税防止の条約が結ばれており、税金を支払わないことを理由にするのは全くナンセンスである。また兵役義務は国家が兵役法を通じて在外永住権者にはその生活基盤の便宜上免除しているのであって、自らの立法趣旨に反して権利を与えない理由とするのはおかしい。
次に選挙の公平性を守れないということだが、海外の選挙はすでにほとんどの主要先進国などで実施されているが、国内と全く同じ公平性を求めるのは無理であり、在外公館や在外国民の努力に委ねられるべきである。
また候補者などについての公報、投票用紙の発送・回収が実務上不可能だと主張しているが、こうした技術上の問題はより多くの国民に選挙権が与えられるために議論される問題であって、国民の人権としての基本権を制限する理由に利用するのは本末転倒も甚だしい。
最後に国土が分断され北の勢力に利用されるとのことであるが、在外選挙人名簿の作成・管理は現行の在外国民登録法に基づいて行えばよく、これによって「国民」としての広義の意味での北側同胞の参与は防げるはず。もし仮に国家が在日同胞を反韓分子と断定するならこれは全く次元の違うかつての独裁政権下の横暴な論理といわざるを得ない。
要するに憲法裁判所は、人権侵害を受けた人たちを迅速に救済することを目的に設立されたにもかかわらず、その進取的な趣旨に反して旧時代的な発想でわれわれ在日韓国人の選挙権を根本から封鎖しようとしているのである(朝鮮日報2003年9月13日)。
2、憲法裁判所の「違憲」決定と選挙法の改正
在外国民の選挙権を排除していた憲法裁判所は、2007年になって一転それまでの判断を撤回し、在外国民に投票権を付与しないのは違憲とした。グローバル化が進むなかで、「単に住所が国内にないからといって主権の行使ができないようでは民主主義に反する」として在外国民の参政権を認める判断を下したのである。実際に大半の経済協力開発機構(OECD)加盟国はすでに在外国民にも選挙権を付与している。日本の最高裁も2005年9月15日の判決で在外日本人の投票制限を違憲としている。
1)憲法裁判所が違憲と決定
韓国憲法裁判所は2007年6月28日、国内に住民登録のない在外国民に投票権を付与しない公職選挙法および住民投票法の規定が「国民の基本権を侵害するもの」とし、違憲決定を下した(朝鮮日報2007/06/30)。憲法裁判所は決定文で「大統領および国会議員選挙権、地方選挙参加権、国民投票権を行使することができる要件として(国内に)住民登録が行われていることを規定した公職選挙法は、在外国民と国外居住者の基本権を侵害するものだ」と明らかにした。 続いて「一定の年齢になれば、すべての国民に選挙権を付与する普通選挙の原則にも背く」と強調した。
金鍾大(キム・ジョンデ)裁判官は「基本権の制限は国家安全保障など不可避な場合にのみ正当化できる」と明らかにしたが、しかしその場合にも選挙権の本質的な内容は侵害できないと説明した。 憲法裁判所は「来年(2008年)末までの法改正」を国会に要求した。これによって海外永住者171万人および駐在員・留学生・外交官といった短期滞在者115人のうち、選挙権のある19歳以上の210万人に投票権が付与される道が開けたのである。
憲法裁判所の決定が下された当初、韓国政界では2007年12月の次期大統領選挙から在外国民に投票権を付与しようとという意見が主流だった。しかし投票権を付与する範囲については「短期滞在者や海外永住者の区別なく一律に付与すべき」という意見と、「ひとまず短期滞在者に限って付与すべき」との意見で割れ、結局実現できなかった。それというのも2002年の大統領選挙で1位と2位の得票差が57万票であったからだ。在外国民の210万票の選挙に対する影響は少なくない。
憲法裁判所が声明で「選挙に運営上の問題を引き起こさず、また選挙の公正性をいささかも損ねないような形」で在外国民の投票を実現すべきとしたこともあって、実施は2012年まで延ばされた。そこには中央選挙管理委員会が、短期滞在者に限って2007年の大統領選挙から投票権を付与するという選挙法改正案を提出(2006年12月)していたことも関係している。
この憲法裁判所の決定に対して中央日報が2007年7月4日に世論調査を実施したところ、「賛成」という意見が57.8%にのぼり、「反対」(33.7%)を24.1ポイント上回った。 「賛成」という意見は特に40歳代(64.5%)、30歳代男性(66.5%)、ホワイトカラー(66.0%)、李明博候補支持者(64.3%)に多かった(中央日報2007・7・5)。
2)選挙法の改正とその実施方法
憲法裁判所の決定により、韓国国会の政治改革特別委員会は2009年1月29日、国外に居住する韓国人に選挙権を与える公職選挙法、国民投票法、住民投票法の3法案の改正案を賛成多数で可決した。それはそのまま2月5日に国会本会議でも採択された。
この法律に基づく在外国民選挙には、韓国国内の選挙法が適用される。そのため、公式な選挙運動期間より前に政党や立候補予定者への支持を訴えるといった事前選挙運動は禁止されている。
韓国の法律が適用されない外国の市民権の保有者については、違法な選挙運動に関与した疑いが強い場合、韓国への入国を拒否できるよう、関連法の改正を国会に要請した。
政党が主催する懇談会で、在外韓国人に関する政策や在外国民選挙への参加方法を説明することは問題ないが、支持や不支持を訴えれば違法行為となる。懇談会出席者のために車を手配したり、金品や飲食物を提供したりすることも違法だ。
懇談会の案内状にも、特定の立候補予定者に対する宣伝や選挙公約を記載してはならない。このほか▼政党代表や立候補予定者が記念日に韓人会代表ら在外国民にプレゼントを贈ること▼政党や立候補予定者への支持集めを目的に韓人会代表らが会員に対し韓国や海外への旅行などを提供すること▼他の政党や立候補予定者への批判を記載した党の政策広報物を配布したり掲示したりすること−なども公職選挙法違反に当たる。
一方、政党と候補者は選挙運動の期間中、CMやテレビ番組での演説、オンライン広告、郵便物、電子メールなどによる広報活動が可能だ。2012年総選挙の選挙運動期間は来年3月29日から4月10日、大統領選挙は来年11月27日から12月18日までとなっている。政党や立候補者が自ら運営するウェブサイトへの広報物の掲載は、選挙運動期間以外でも可能だ。しかし直接訪問は禁止されている。
また、政党や候補者への支持を訴える印刷物は、選挙運動期間でも在外国民がよく利用する韓国人会の事務室、教会、学校などには掲示できない。
中央選挙管理委員会は違法行為を把握するため、4月1日に28カ国・地域の公館55カ所に在外選挙管理者を派遣した。また、違法な在外選挙運動への関与が疑われる外国の永住権保有者などに対しては、パスポートの更新や再発行を制限し、選管委や検察の調べに応じさせる方向に選挙法を改正する方針だ(朝鮮日報2011/04/10)。
3)残る問題点―不正選挙の対応策
問題となるのは不正選挙に対する対応策である。
在外国民の選挙不正に対する対応策がないため、対策が急がれる状況となっている。これに関連し、韓国法務部は今年の2月5日、在外国民選挙の法的補完策を盛り込んだ研究報告書を作成し、関係官庁と国会に送ったことを明らかにした。法務部は2009年から特別チームを編成し、在外国民選挙に関する対策を検討してきた。
法務部は報告書で▲在外国民の不正選挙容疑者を領事館職員が取り調べたり、検事が電子メールや映像を通じ取り調べた結果を法廷で証拠採用したりできるようにする▲在外国民が事情聴取に応じない場合、入国を5年間制限するなど出入国関連の制裁を加える−などの案を提案した。外国で選挙不正が拡大しても、韓国の選挙管理委員会が取り締まりを行ったり、検察が捜査を進めたりすることが国際法上、事実上不可能な現実を考慮した上での提案だ。
しかし、領事館職員らによる取り調べ内容を証拠採用するためには、刑事訴訟法を改正しなければならず、同法を改正するにしても、選挙不正の容疑者が取り調べに応じない場合、強制的に取り調べを行う方法がなく、法務部の対策も限界が指摘されている。
検察関係者は「告訴・告発があったり、証拠が明白な場合には、韓国国内で捜査を開始することもできるが、参考人や被疑者となる在外国民が出頭を拒否すれば、現時点ではどうすることもできない」と述べた。
取り調べに応じない場合、国家間での犯罪人引き渡しなどの方法も考えられるが、時間がかかる上、条件が複雑で、速やかな捜査が必要な選挙関連事件の捜査では実効性を欠く。
犯罪人引き渡し請求を行う場合、司法協力協定を結んだ二国間で選挙不正行為を処罰する共通の規定が必要となるが、韓国の選挙法は他国に比べやや複雑な内容となっているため、引き渡し請求が受け入れられる可能性は高くないとみられる。法務部関係者は「捜査の現実的な限界を考えると、反国家団体に分類される日本の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)など一部政治勢力が選挙に不当介入し、当落を左右したとしても、捜査によって真実を解明できない最悪の状況が生じかねない」と懸念した。
既に在外国民投票を実施しているイタリアでは、2008年に下院議員が海外でマフィアと組み、票の買収を行った疑惑が浮上し、検察が現在も捜査を続けている。しかし、問題の議員が自ら辞任したため、事件による政治的影響は長期化しなかった。
韓国政界では既に、在外国民の支持を得るための動きが水面下で始まっている。
昨年10月、与党ハンナラ党は「在外国民協力委員会」、野党・民主党は「世界韓人民主会議」という党内組織をそれぞれ設置し、在外国民のネットワークづくりに着手した。政治ブームが起き、米国の一部地域には政党後援組織ができ、韓国人社会が二分される状況まで見られるという(朝鮮日報2011/02/06)。
3、高い在外国民の関心と来年の2大選挙に対する影響
在外国民参政権に対する期待が高まっているなか、米国・日本・中国などの海外同胞社会は国内政治家と関連専門家を招請し、在外国民参政権に関する討論会を開催するなど、さまざまな行事を開いている。ハンナラ党・民主党など政党関係者も先を競って現地を訪問し、海外同胞と接触している。
1)高い在外国民の関心
在外国民の参政権に対する期待度は高い。
この期待度を測るために中央日報は先月、米国・日本・中国・フランスなどに居住する在外国民1220人を対象に、米国・中国・日本・香港・パリ特派員と米国5支社によるアンケート調査を行った。
その結果、政党別支持度では「ハンナラ党」が458人(37.5%)で最も多かった。次いで「民主党」191人(15.7%)、「親朴連帯」(5.4%)、「民主労働党」(3.4%)、「自由先進党」(2.2%)、創造韓国党(0.7%)の順だった。すべての地域でハンナラ党が民主党を上回ったが、米国・日本では圧倒的だったのに対し、中国・香港では差が小さかった。
大統領選挙などで候補を選択する場合、「所属政党」(7.3%)や地縁(1.7%)よりも「能力」(55.7%)と「道徳性」(30.3%)など個人の資質をより重視することが分かった。在外国民の政治的性向は「進歩」37.7%、「保守」25.7%、「中道」35.8%だった。
在外国民10人のうち8人(79.2%)が「投票に参加する」、6人は「毎日インターネットなどで韓国のニュースを見ている」と明らかにし、韓国政治や状況に対して関心が非常に高いことが明らかになった。その結果、国内での政党別支持度と「同質化現象」が表われている(中央日報 2009.04.17)。
2)模擬在外選挙の実施
2010年11月14、15の両日、世界21カ国26カ所の韓国公館で模擬在外選挙が実施された。平均投票率は38.2%。日本では駐日大使館(東京・四谷)と駐大阪総領事館(中央区西心斎橋)の2カ所で行われ、参加登録者の61%(1450人)が投票に参加、国政参与への強い関心と期待を示した。
東京では14日、歴史的な「一票」を投じたいと投票開始(午前10時)の30分前から民団関係者と同胞ら100余人が大使館の2階に設けられた投票所前に列をなした。在日同胞にとっては2世・3世はもとより高齢の1世も含め、生まれて初めてのことだ。
鄭民団団長は、韓国報道陣の質問に「私は70歳を超えているが、これまで一度も選挙権を与えられていない。祖国の選挙に初めて参加できることになり感無量だ」と語った。
埼玉県在住の男性(60)は「模擬ではあるが、初めての投票に緊張している。国民としての基本権が認められて大変うれしい。同時に責任を痛感した。祖国の繁栄と前途をしっかりと考えてくれる政党および大統領候補に一票を投じたい」と表明。
神奈川県在住の女性(58)は「生まれて初めての投票だ。模擬投票であれ、一回は投票してみたかった。在外の国民にまで選挙権を認めるのは、それくらい国が発展したということでもあり非常にうれしい」と興奮を隠さなかった。
投票のために茨城県からバスで2時間かけて来たという40代の男性は「韓国が一層身近なものとなった。韓国の政治にこれまで以上に関心をもち、一票を大事に行使したい。特に韓日の友好・協力増進と在日の権益伸長に真剣に取り組んでくれる政党や有能な政治家を選びたい」と語った。
東京都内在住の3世の女性(25)は「国が在外の国民として選挙権を認めてくれてうれしい。これをきっかけに韓国のことにもっと関心を持ち、政治についても勉強していきたい」と述べた。
大阪在住の2世の男性(67)は「死ぬまでに一度は投票したかったので大変うれしい。今後何回できるかわからないが、今度の大統領選挙にはぜひ投票したい。そのためにも健康でいることが大事だと思っている」と喜びを語った。
和歌山県から3時間かけ来たという男性(58)は「生まれて初めての投票でうれしい。韓国のことになると一喜一憂してきた。選挙に参加できることは、韓国の政治に直接つながることであり、画期的なことだ」と強調した(民団新聞2010.11.17)。現在日本では、在日韓国人20万人が投票の権利を持っていると見られている。
3)心配される北朝鮮の選挙介入
韓国国政選挙への参政権について、北朝鮮籍から韓国籍に国籍変更した日本在住の在日朝鮮人に対しては、これを制限する方向で韓国政府が検討に入ることが分かった。韓国の聯合ニュースが去る8月28日、韓国中央選挙管理委員会関係者の話として明らかにした。
制限の理由について同関係者は、「北朝鮮の体制を支持する人たちは、憲法に規定された自由民主主義の基本秩序に合わない面がある」と指摘。外交通商省や法務省など関連省庁と協議するとしている。
現行の韓国公職選挙法では、政治信条や理念を理由に選挙権を制限する規定はないため、「旅券発給審査の強化や国籍法改正などを通じ、韓国籍を所持できる条件を厳しくする方法が考えられる」という。
国籍変更者はここ10年で年平均5000人に上る。拉致問題や核実験、3代世襲などで朝鮮籍者が国籍変更を選択するケースが激増した。だが、「国籍変更後もなお北朝鮮を支持する人たちが少なくない」とみられている。
韓国の専門家は来年4月の総選挙、12月の大統領選に北朝鮮が介入してくる可能性が高く、その際、新たに選挙権を獲得する「元朝鮮籍の在日」が親北朝鮮の組織票を形成するのではないかとして警鐘を鳴らしている。朝鮮総連との関係が深い韓統連(在日韓国民主統一連合)も本格的活動に入った。韓統連は獲得目標を3万票としているという。
海外の北朝鮮団体としては、日本の「朝総連(在日本朝鮮人総連合会)」と「韓統連(在日韓国民主統一連合)」のほか、中国の「在中朝鮮人総連合会」、米国の「在米同胞全国連合」「自主民主統一米州連合」や「米州同胞全国協会」、オーストラリアの「豪州同胞全国連合」、ロシアの「国際高麗人統一連合会」、ヨーロッパの「韓民族ヨーロッパ連帯」や「在ドイツ同胞協力会」などがあるが、北朝鮮の指揮の下で本格的に選挙態勢に突入している。
以上