朴槿恵(パククネ)大統領は1月25日、旧正月(1月28日)を前にして、青瓦台の常春斎.(サンチュンジェ)で、インターネット放送「チョン・ギュジェTV」のチョン・ギュジェ韓国経済新聞主筆との単独インタビューに電撃的に応じた(2月6日現在アクセス数198万)。
インタビューでは崔順実(チェ・スンシル、改名後は崔ソウォン)ゲート後に展開された左派系「ろうそく集会」、保守系「太極旗集会」、国会弾劾訴追案可決、特別検察捜査、憲法裁判所での弾劾審判等について、1時間余りの間語った。
その中で、メディアなどの各種疑惑報道には誤報とデマがあまりにも多いとし、何か以前から企画されたものではないかとしながらも、崔順実ゲートによる国政の混乱については再び国民に謝罪した。
しかし、疑惑の核心であるミル財団とKスポーツ財団などに対する贈収賄容疑については、憲法裁判所の審議と特別検察の捜査が進行中であるためか具体的言及はなかった。
今回の電撃的インタビューについては、憲法裁判所の弾劾可否をめぐって保守対左派の対立がますます激化(最近は保守のデモが左派のデモ数を上回っている)する中、2月に山場を迎える弾劾裁判審査を前にして大統領が反撃に出たのではないかとの見方もある。
その背景には、JTBCをはじめとするメディア報道のデマと誤報が次々と明らかにされていることや、収賄容疑の核心と言える李在鎔(イ・ジェヨン)サムソン副会長の逮捕が見送られたことなどで、朴大統領の「失政」が弾劾に値するものではないとする世論の広がりがあるようだ。
事実1月26日の慶尚北道・大邱(テグ)における弾劾棄却デモでは、主催者の予想をはるかに上回る数万人が集まった。大邱での世論調査でも朴大統領弾劾に対する賛否は五分五分にまで変化している。その底流には、このままでは韓国が親北・従北朝鮮勢力に支配されるのではないかとする保守勢力の危機感がある。
このインタビューの一部をとらえて、ハンギョレ新聞日本語版は、「弾劾が棄却されれば、自身を捜査して批判した検察やマスコミに対して大々的に手を加えると事実上脅迫した」(2017・1・30)などと曲解した。
インタビューの内容は以下の通り
チョン主筆 どのように過ごしていますか。
パク大統領 重い心で過ごしています。
チョン主筆 数日前、国立ソウル顕忠院に行って来られたと聞きました。
パク大統領 はい、いつも名節の前には参拝し、両親に生前のように言葉を差し上げていますが、今回は複雑で息苦しい心で行ってきたし、言葉も少し長くなりました。
チョン主筆 どのような言葉を?
パク大統領 内容はすべて申し上げることはできません
チョン主筆 何か答えを得られましたか。
パク大統領 そういう面もあります
チョン主筆 最近国会で、私はその国会議員の名前を口に出すのも嫌ですが、非常識な絵がパロディ画(大統領を風刺したヌード画)を掲示しました。どのように見ておられますか。
パク大統領 人が生きていくうえで、いくらひどくても超えてはならないラインがあると思います。ところが、何の気兼ねもなく、罪の意識もなく、簡単に超えることができるというのを見て、これが韓国政治の現住所ではないか、そんな気がしました。
チョン主筆 今日の午前のは、ユ・ジンリョン元文化体育観光部長官が、憲法裁判所で暴露話をしたそうです。どんな気持ちがしましたか。部下の長官として仕事をした人ですがどう思いますか。
パク大統領 長官を務めていたときの言葉と、退任した後の言葉が変わるのは、嘆かわしいことです。
チョン主筆 では質問をいたします。いま多くの国民、弾劾を要求する「ろうそくデモの国民」は、「私たちの指導者がなぜチェ・スンシルのような人間と一緒に同じレベルで仕事をしたのか。また私たちの指導者がもしかしたら判断能力が落ちているのではないかと怒っているということです。もちろん巷間や言論報道で言いふらされた面もありますが、青瓦台で祈祷を行ったとか向精神薬の中毒になっていたという噂もあります。多くの国民が大統領に対する失望感を極大化させています。憤怒ともいえ憎悪とも言えます。このようにしてこれまで3ヶ月が過ぎました。大統領としてその中の一部は、認めることができる部分もあり、何を言っているのか話にもならないねつ造だと思っておられることもあると思われます。いかがですか。
パク大統領 向精神薬を服用したとか祈祷をしたとかその他いろいろ言われていますが、全く事実ではなく全く根拠のない話です。そのような薬物の近くに行ったこともないし、クッの祈祷をしたこともありません。全く根拠のない話です。そうした話が数限りなく作られたのですが、こうした作り話を聞きながらどういう考えをしたかというと、大統領を引きおろして弾劾させるため、これほどのひどい嘘を作り出さなければならなかったのなら、弾劾の根拠がどれほど脆弱なのか、そんなことを考えました。
チョン主筆 ところがそうしたウソ、とんでもない話が作られたのですが、このとんでもない話が大統領の力でも統制ができませんでした。なぜそうなったのでしょうか。あえてマスコミに圧力を加えないとしても、何らかの方法で、例えば訴訟とか、訂正を求める要請とか、反論権とか、このような手順が踏めなかったのですか。
パク大統領 以前もそうしたことがあったのですが、それが一度作り上げられて風が吹けば、いくらそれは違うといって訂正報道の要請をしても、それは間違っていると記者会見で話をしても、これはこうだとの何らかの作り上げられたフレームができてしまうと、それ以外の話は一切受け付けないというそういう風潮があります。それでも今は、このように話をすることができますが、最初は何をいっても「それはすべて違う」という風潮がわが国では強いのです。
チョン主筆 一部の放送で、チェ・スンシルという人物が大統領の演説を添削した、直したと最初の暴露が出てきた時に、すぐに一部を認めました。そして記者会見をもって申し訳ないと話されましたがそれが間違いだったのですか?例えば今になって明らかになったことですが、タブレットPCがねつ造の可能性が高いとされています。所が大統領になってスタッフが揃うまで崔順実から一部助言を受けたと認めたことによって、その後に数多く出てきた話まですべてを認めたようになってしまいました。
パク大統領 その謝罪について私にこのようなアドバイスをする人がいます。「私たちの社会では謝罪をしてはならない。間違ったことをしてももちこたえて謝罪してはならない」と。私はそうは思いません。その時謝ったのは、タブレットPCでさまざまなものが出てきたとの報道がなされた時です。ありえないことなのだがと思いました。私が少し助けを受けたのは演説文の表現や広報的観点から(聴く人が)どのように受け入れるのだろうかということで、ある時期に(アドバイスを)受けただけです。どうしてあれだけ多くのデータが流出はしていたのだろうか、そこは正さなければならないと思いました。その次に、私も知らなかったことが出てきました。(チェ氏が)私益を得ていたという話ですが、これは初めて聞く話でした。しかしそれを知らなかったということは、結局は「私の不覚ではないか」と思って国民に謝罪申し上げたのです。国民に心配を掛けたことに対して謝罪しなければならない。そう考えたのです。
チョン主筆 しかし結果的には悪い方に行きました。認めたではないかということでその後ほとんどの報道は事実であるかのように拡散させました。チョンユンフェさんと密会をしましたか?面前での質問としてはあまりにも失礼な質問ですが。
パク大統領 国の品格が落ちる話です。ありえないあまりにも恥辱に満ちた話だが、最近は普通に話されています。以前ではどうしてそのような話をするのかと憚られていた話ですが、今は普通に話されています。それだけにこれは、何か間違った方に進んでいるという証拠です。口に出して叱るのも恥ずかしい話です。そんなことはありえないことです。質問されたのであえてお話ししますが、チョン氏は就任前のかなり前に離れました。他の事情で私を助けていた仕事を辞めて他の仕事をすることになったのですが、その後会ったこともありません。とんでもない嘘です。一つを見れば十が分かります。こんなに話にもならない噂が、事実に照らせばすぐにもバレ話がこのように次々と出てくることは、どれだけ多くの誤解とフィクションと嘘が山のように積まれているのかを証明していると思います。
チョン主筆 チョン氏とは異なる理由で昔に離れたといいますが、その理由を明らかにすることができますか。
パク大統領 すべて個人的なものです。人には助けたりまた離れたりすることもあり、新しい人が来ることもあります。そこに仰々しい理由をつけて説明することではないのではないですか。
チョン主筆 お聞きするのは心苦しい話ですが、チェ・スンシルとコヨンテ氏の関係は知っておられますか。
パク大統領 コヨンテという名前も存在も知りませんでした。
チョン主筆 チョン・ユラについてもいろいろな噂があります。お聞きになったと思いますが、チョン・ユラが大統領の娘だという噂もありますが。
パク大統領 どんどん品格の落ちる話ばかりですね(笑い)。本当にたちの悪い嘘もいい加減にしないと。このような低質な嘘が乱舞するこの雰囲気が健全なものなのか疑問がわきます。
チョン主筆 チョンユラを最後に見たのはいつですか。
パク大統領 幼い時に見ました。昔の話です。今回チョン・ユラと改名したと聞きましたが、私はユヨンだと聞いています。改名したのも今回知りました。またチェ・ソウォンに改名したのも今回知りました。」
チョン主筆 検察はチェ・スンシルと大統領が事実上経済的共同体だ。それでチェ・ユラに利益を与えたのは大統領に与えたのと同じだ。との論理を使っています。銀行口座を共に使っていますか。
パク大統領 そのようなことはありません。話にならないウソです。それで妙な経済共同体という言葉を作り出したのですが、それは貶めるためだとしてもあまりにもこじつけです。経済共同体という言葉があまりにもおかしいので特別検察でも撤回しました。話にもならないものです。
チョン主筆 特別検察の話は後ほどすることにして、今回の事件はチェ・スンシル国政壟断とのタイトルで呼ばれています。キム・ジョン元文教体育部次官の話もあり、また教育文化首席などを推挙したとの話もあり、チェ・スンシルが大統領の後で操縦していたのではないかという主張です。認めますか。
パク大統領 いいえ。国政壟断というのは人事介入、機密漏洩、政策関与など、大きく3つの分野に分けることができますね。政策に関与した機密を漏洩したというのは話になりません。人事の問題ですが、人事では要人は可能な限り多くの場所で推薦を受けて最適な人物を探します。公式ラインもありますし、また必要性が多い時には他の人たちも推薦することができます。推薦することは難しくはありませんが、推薦をいただいたからといってその人が決まるわけではありません。推薦を受けても手順があって、検証して、比較して、この人が専門性を持ち大きな欠点もないと判断した時に要人になれます。要人は、一、二人が推薦してなれるシステムでは全くありません。
チョン主筆 いま私が話したのは二人、言論報道では3-4人の名前が報道されました。それは文化部の所管分野ですが、他の推挙過程での人事でチェ・スンシルの介入とか影響力はありせんでしたか。
パク大統領 文化の方以外にはありません。文化分野は少しありました。しかし推薦しても検証が必要です。そのまま採用するわけではありません。
チョン主筆 チェ・スンシルが人物を推薦するとき、衣服やカバンなどを準備して直接申し上げるのですか、または人事秘書ラインを介して行われるのですか。
パク大統領 主に秘書官を介して行われます。」
チョン主筆 チェ・スンシルの国政壟断に全く同意できないなら、今回の事件は性格が完全に違ってきます。私が見る限りもともとはチョン・ユンフェ事件だったのが門番3人衆に移りました。研究機関にまで占領しました。そして消えました。ウ・ビョンウ事件がまた出てきました。しかしそれも言論機関が探りまくりましたが決定的問題は出てきませんでした。それがある瞬間からチェ・スンシル問題が炸裂しました。言論機関としてはその間何度も失敗したことになります。これらの事件が続く中で、ある瞬間に切れなければならないのですが、今考えてどの時点で切れなければならなかったと考えますか?なぜ放置されたのか、大統領として防がなければならないことをお見逃しになったのか。外から見ていると、つまり、個人の倫理の問題をあまりにも重視して、大統領が守るべきことを疎かにしていたのではないかと思わされます。
パク大統領 今回の事態を振り返ってみると、ああ、そんなこともあったのか、私はそれをきちんと見ていなかったことを感じました。私の手落ちという気がします。それまでは知りませんでした。
チョン主筆 チェ・スンシルの私生活とか私的利益を得るために作った複数の会社見ると、大統領に知られないようにすることに神経を使っていたと私は見ました。このようなことを全く知らなかったのでしょうか。
パク大統領 はい。知りませんでした。
チョン主筆 いま特検が「ブラックリスト」と関連してチョ・ユンソン元文体部長官を拘束しました。チョ・ユンソン長官についてはどう思われますか。
パク大統領 賄賂でもないのに拘束までしたというのは、個人的にはあまりにもひどいと考えます。
チョン主筆 ブラックリストは以前からあったのですか。
パク大統領 知らないことです。
チョン主筆 いわゆる4大改革対象、つまり、国会、言論、労組、検察などの4大勢力が、同盟軍になったように、大統領を包囲して沈没させています。何故こうなったと思いますか。
パク大統領 あまりにも多くの根拠のない話が独り歩きするものですから、それを事実だと信じた人もいただろうし、また推進してきた改革に反対する反対勢力もいたし、国の体制に反対する勢力も合流したんではないかと、そう見ています。
チョン主筆 万一弾劾が憲法裁判所で認められた場合、これまで進めてきた改革は忘れられるでしょう。政治圏はどうなるでしょうか。
パク大統領 あんなに努力してきた改革案が崩れたら、また改革する意欲が出るでしょうか。永遠に水の泡となるのではないでしょうか。
チョン主筆 今回の事件を見ると、誰かがマスコミに背後から材料を与えたり、誰かがストーリーを作ったのではないのか、あえて陰謀とはいわないまでも、誰かが後ろで管理しているようだという感じを吐露する人がいます。そういた勢力があると思われますか、それとも報道で飛び出して来たのでそれに追随しているだけと思われますか。
パク大統領 これまでの進行状況を追跡してみると、何だか以前から企画されたものではないか、との感じも消すことはできません」
チョン主筆 その企画者が誰なのかという心証はありますか。
パク大統領 今申し上げるのはちょっと適切ではありません。
チョン主筆 何か感じる所はおありですか?
パク大統領 何か偶発的なものではない感じがしています。
チョン主筆 大変失礼なお話ですが、万一弾劾が棄却されるかまたは承認されるかどちらかの結論が出ます。憲法裁判所の弾劾審判手続きが公正か、それとも違うかどう見ますか。結果を受け入れることができますか。
パク大統領 公正な裁判が行われることを願っています。裁判を受ける立場でそれ以上申し上げるのは困難です。
チョン主筆 憲法裁に出席しますか。特検捜査はいつ受ける予定ですか。
パク大統領 憲法裁判所への出席はまだ検討してません。特検の捜査には取り組む考えです。
チョン主筆 青瓦台でおこなわれるのですすか。
パク大統領 (時期と場所を)調整中です。
チョン主筆 ろうそくデモには、大統領の間違えた民主主義を私たちが回復するという主張もありますが、一方では、ろうそくデモは狂牛病事態(2008年に米国産牛乳の輸入問題で完全なデマで起こったデモ)の延長にすぎない。虚講の疑惑とデマによって膨れ上がったデモだとの主張があります。どうお考えですか。
パク大統領 狂牛病事態と今回の事態は、根拠が弱かったという点で似たような点があると思います。
チョン主筆 ろうそくデモに直接出かけて肉声で何かを話す計画はありませんか。
パク大統領 すべてを見ています。直接行く計画はありません。」
チョン主筆 最近では、太極旗集会参加者(弾劾棄却を訴えるデモ)が多くなって、この2週間ではろうそくデモよりも太極旗集会参加者が多くなり展開も熱くなりました。慰労をちょっと受けたりしますか。
パク大統領 ろうそくデモを2倍も超えるほど熱心に参加されていると聞いていますが、なぜその方たちが、雪のなかで、寒いのにずっと出ているのかと考えてみると、自由民主主義体制を守らなければならない、法治を守らなければならない、そうしたことのために苦労して出ていると思います。こうしたことを考えると。胸が張り裂けそうな心情です。
チョン主筆 太極旗集会にも行く考えはないのですか。
パク大統領 まだ何も決めていません。
チョン主筆 大統領在任中に、今在任中というのは少し適当でないかも知れませんが、重要な選択を多くされましたが、私のこのような選択は記憶されなければならない」と思うことには何がありますか。このような雰囲気の中で、あたかもチェ・スンシルが操って、例えば開城工業団地の閉鎖もチェ・スンシルの作品だという報道がありますが。(笑い)
パク大統領 話にもなりません。本当にあきれ返る話です。
チョン主筆 どのようなことをなさいましたか?
パク大統領 これまで私が行ったことですよね。国家のアイデンティティを守る基礎を固めるために、たくさん努力をしてきました。いくつかのことがあります。統合進歩党解散もありました。また一方では、経済分野で大きく分ければ二つ、一つは財務管理をよくして、ファンダメンタルズを適切に管理して、その部分で国家信用格付けで過去最高を記録しました。それは国際社会が認めています。国家信用等級が高いというのは私たちに有利な点が多いですね。もう一方では4次産業革命が行われていますが就任してから創造経済と文化隆盛を介して、4次産業革命が達成されるよう基盤を固めることに心血を注いできました。最近の報道を見るとブルームバーグ通信の革新指数で、韓国が4年連続1位となり、国際社会も認めてくれているのだなと、やりがいを感じています。未来を準備すること財政を管理することに多くの心血を注いできました。
チョン主筆 チェ・スンシル事件がなかったならば、今頃はどのような政策に邁進しているのに、本当に残念だ。それがなかったら今どのような政策に邁進していたのでしょうか。
パク大統領 今いろいろと推進している事項がたくさんあります。対北朝鮮関係もそうだし、そして国際社会と約束したこともあり、それから経済をはじめとして24のコア改革課題を根付かせるために引き続きチェックしながら心血を注いでいますが、その中で成果が出てきたのがいくつかあります。それらが根付いて仕上げられればどれだけよいだろうかと思います。残念です。
チョン主筆 サード(高高度ミサイル防衛システム)の問題で、中国が神経質となり韓国を脅迫している局面です。大統領は職務停止中なのでそれをただ見ていなければならない状況ですね。また一部政治家が中国に出かけておかしな行動を取っています。サード問題は中国と合意することはできませんでしたか。このまま行くのですか。
パク大統領 中国とも多くの疎通をしようと努力しました。説明もしましたし。サードは私たちが推進するしかありませんでした。北朝鮮の核とミサイルの脅威から領土と国民の生命を守るための最低限の防御システムです。これをしないと言えば、それは間違った国でしょう。
チョン主筆 現在の大統領職務中止状態が、中国の神経質な反応を強化していますか。大統領が正常な状態であればそこまではしなかったと感じますか。
パク大統領 私が手足を縛られていなければ、いろいろな力を使うことができたと思います。しかし職務が停止されていますので動けません。また国が発展するというのは、よく食べて物質的によい生活をする、そのことだけを意味するものではないと思います。もちろん、均等に豊かさを味わわなければならないでしょう。それと同時に国の主権を守るためにも努力しなければなりません。物質的に生きながらも主権を守る、そのために豊かな生活をめざして努力するのです。物質的に豊かに暮らすとしても主権を守れなければ、それは違うのではないですか。主権を守る最小限の防衛システムを備えなければ主権を持った国ではないでしょう。主権が守れなければ侮られ踏みにじられるでしょう。そうすればますます軽んじられ国を守れなくなるのではないですか。本当に重要な問題だと思います。
チョン主筆 ドナルド・トランプ米国大統領の当選をどう見られましたか。そのこともだまって見ていなければならないですね。
パク大統領 トランプ大統領の時代が開かれたのでしょう。それによって世界の経済と安全保障環境が変化する可能性があります。それにうまく対応するために、素早く努力をしなければならない時だと思います。ところが今、韓国の環境はこのような変化、東北アジアの環境が変化するのに対して、どのように対応して乗り越えていくかについての悩みや努力があまり見えないようで心配しています。
チョン主筆 大統領が政界に入られる前も当時のハンナラ党が危機を迎えていました。「チャッテギ事件(車ごと選挙資金を受けとった事件)」でテント党事務所を経験したこともありますが、最近のチェ・スンシル事件で大統領の手足が縛られている状況とはいえセヌリ党はさらに徹底的に崩れているようです。どう見られますか。
パク大統領 わが国には多くの団体があります。学校もあり会社もあります。そこでは同窓生や親友を呼ぶ時に同志とは絶対に呼びません。唯一同志の皆さん、同志と呼ぶのは政党だけです。それは大変意味のあることで、政党は同じ信念や価値観、歴史観、安保観、経済観、経済政策、こうゆうものに対して共有する人が集まってこそ作られる結社です。それがない場合は、その政党は虚弱になるしかありません。わが国だけでなく外国も同じと思いますが、外国でも理念を共にする結社がそれぞれあります。わが国も政党がそのように結社らしい理念を共にするべきです。経済に対しても、もちろん些細な個人の違いはありえますが、大きな枠組みで私の安保観はこうだと理念を共にする結社となれば力を持ちます。またその政党を支持する国民を結集することもできます。国民がその政党に信頼を寄せることでより発展し長く持続することができるのですが、そうした要件が備わらなければ長続きするのは困難です。政党がそうした目的ではなく、あの政党に行けば選挙で票を多く得て当選できる、または利害関係だとか、こうしたもので作られた政党は、力も出ないし国のために役割を果たしにくいと思います。政党が危機の時はそこに焦点を当てて、それが基本ですが、政党をどのように守り危機を見守る国民にどのように忠実に答えるべきかという基本に立ち戻れば危機を克服することができると思います。
チョン主筆 セヌリ党をどう評価しますか。
パク大統領 そこ(基本)に合わせてやるか否かにかかっています。それがセヌリの将来を決定するでしょう。
チョン主筆 そこにもって大統領候補もいないでしょう。
パク大統領 そのような結社になれば大統領候補も出てくることも可能ではないですか。基盤がしっかりとしなければ。
チョン主筆 政界は弾劾を既成事実として大統領選挙に入る雰囲気があるではないですか。多くの国民も疲労症を感じており、大統領が弾劾されるほどに間違ったことはしていないが、どうせなら早終わらせて、早く大統領選挙をして政治が静かになってほしいと話す人たちもいます。賛成しますか。
パク大統領 今それを話す立場ではないと思います。」
チョン主筆 大統領候補が多いです。今回、朴大統領は過酷で苦労していますが、候補者に一言ヒントを語るとするなら?
パク大統領 (大統領選挙候補が)それも知らずに大統領候補に出てくるでしょうか。
チョン主筆 ですが私が感じるには知らない人もいるようです。朴槿恵大統領が弾劾されているのを見ながらも、大統領職務の苦しさや複雑さや、どのように敵に包囲されているのか、または包囲されつつあることに対してなんらの考えも持たない人たちもいるようです。
大統領と意思疎通ができない。夕方に何をしておられるのか、TVドラマ見ておられるのか、もしくはチョン・ホソン氏が証言したように、大統領はワーカーホリック(仕事の虫)だ、書類を積み上げて勉強されている、とさまざまな意見がありますがその中で何が真実ですか。
パク大統領 ドラマをたくさん見ている時間はありません。そのように時間を費やしていたらこれまで多くのことをこなすことができませんでした。書類は1日で山積みになるので常に見ています。夕方の時も見ているし、必要なら週末にも見ています。またそれを持って(主席秘書官や長官に)聞いたりもして、確認することもあります。また決定を迅速に下さなければならないこともあり、早く結論を出さなければならないので考え続けながら協議をしています。そういうことが大統領の仕事の中でもかなりの比重を占めています。
チョン主筆 セウォル号7時間の執拗な疑惑提起には、一部で女性大統領に対する過度な関心だ。または女性卑下意識が潜んでいるとか。集団的な意地悪な関心だと感じますか。
パク大統領 そうだと思います。女性大統領でなければそのように卑下される理由はないでしょう。女性卑下だと考えます。わが国に残っている。就任後いろいろな国を訪問しましたが、女性大統領を輩出していない国が多いです。自分たちの国では女性大統領を選出できていないのに、考えもしていなかった儒教圏の東北アジアの韓国で女性大統領が出たので驚き評価しているとの話を多く聞きました。なのに今回大騒ぎでしよう。そういうふうに見ているではないですか。女性を卑下する今回の事態に接しつつ、外国人が韓国に対して持っていたイメージがたくさん崩壊したと思います。」
チョン主筆 例えば今回アメリカでは大変ユニークな「私が男だ」と主張する候補が女性候補のクリントンを負かしました。しかし英国ではメイ首相が仕事をよくするという評価を受けています。ドイツのメルケル首相などは言うまでもなく。そのような観点で比較されると感じたところがありますか。自らの取り組みをメルケルのリーダーシップモデルで考えてみたことがありますか。
パク大統領 すべて立派な女性指導者です。韓国という特殊なそうした国とは状況が異なる国でリーダーシップを発揮しようとすれば、自分なりのリーダーシップの努力と悩みが必要だと考えます。韓国という特殊な環境、南北が対立している国に合わせて国益に役立つように、どのようにリーダーシップを発揮するのか、それなりに悩みながら積み重ねてきました。
チョン主筆 北朝鮮が変化を示す予感はありますか。
パク大統領 北朝鮮と対話もし交流し文化や体育などを通じて平和的に同質性も回復しながら複数の民間交流しようとしましたが、それが通じませんでした。むしろ、ミサイルと核実験で返ってきました。そうした状況で私たちも核を放棄させるために戦略を変えなければなりません。圧迫と制裁を介し、北朝鮮が戦略を変えて核を放棄しなければならないとの考えを持つようにさせなければならないと考えました。また韓国だけで出来ることでもないので同盟国をはじめとした国際社会がともに力を合わせて放棄させるようにしてこそ韓半島に平和が訪れると考えて努力してきました。
チョン主筆 北朝鮮はいつ頃変化すると見ますか。
パク大統領 予感というよりは、国際社会の制裁やさまざまな措置に対して北朝鮮がかなり圧迫を受けています。途中でやめるのは何もしないことよりも劣るということわざがあるように、あと少し掘れば水が出るといっても最後のひと堀りを掘らなければ水は出ません。最後まで努力しなければならないと考えて推進してきました。それを最後まで進めて行けば韓半島に平和が訪れるのではないかと考えます。
チョン主筆 弾劾が棄却されれば、今までの誤ちは正す必要がありそうです。例えば検察権の過剰問題とか、膨らんだマスコミの報道などを。もちろん弾劾の当事者である大統領にお聞きするのは失礼だとは思いますが、正す手続きが必要であると見ますか。
パク大統領 今回の事態を経験しながら、多くの国民は韓国がこのようになっていたのかと感じたでしょう。例えば生業だけに従事しながら暮らしていたが、今回、韓国にこのような面があり、あの人がどうでこの人がこうだと広く知られて明らかになりました。そのようなコンセンサスの下で、国民は、健全に進む方向で力を合わせてこの国を発展した国にしなければなりません。指導者も必要だが、それは一人ではできません。」
チョン主筆 チェ・スンシルは大統領にとって果たしてどんな存在でしたか。
パク大統領 先ほども少しお話しましたが、長い時間をかけた知人です。私が一人で過ごしているので用事もしてくれ、そばで私を忠実に助けてくれた人です。そんな中、今回の事態で私が知らなかったことがありました。事業体をどうしたとか私益を得たとか。私が知らなかったことが不覚です。
チョン主筆 最後にこのような機会があれば国民に言いたかったことや、私が質問できなかったことでお話ししたいことがあればお話しください。
パク大統領 あまりにも多くの質問をされたので(笑い)
チョン主筆 沢山の質問に丁寧に答えていただき感謝します。最後に国民に伝えたいことがあればお話しください。
パク大統領 過去の選挙時、1500万人を超える有権者・国民のみなさんが熱心に支持してくださり、大統領職を遂行することになりました。そこにまともに報いることができず申し訳ない気持ちを持っています。それよりもあまりにも多くの根拠のない話、またその虚言が真実だとしてさらに大きなウソが積み重ねられています。それが後で明らかにされても「あ、そう。それならそれで」といって誰も責任をとらない社会となっています。そのような虚構の中で誤解を受けているのが悔しくもあり苦しくもありますが、それも自分の過ちではないかと受け入れています。こうした中でも国民が支持をしてくださり応援してくださっていることに対して、私が困難ではありますが力が湧きます。国を思うようになってから、幼い時から、どうしたら国に役立ち国益を拡大させ国民が安全で平穏に過ごせるようにとそれだけを考えて生きてきました。今後もそれだけを私の人生の目標として生きて行きたいと思っています。あまりにも重い話をしてきましたので、今名節(旧正月)の挨拶をさせていただくことが適切なのかは分かりません。しかし正月が明後日ですから、国民のみなさんが楽しい名節を送っていただくことを祈念いたします。
以上