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文政権の「南北関係第一主義」でセルコリア

コリア国際研究所所長 朴斗鎮

2018.10.29

目次
1、韓国株価、10月に入って13%強下落
2、韓国株暴落の根底に韓国経済の悪化
3、南北「非核化ショー」の賞味期限は切れつつある

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 「南北関係第一主義」を突っ走り、内外からは「金正恩の特使」と揶揄されている文在寅大統領であるが、「9月南北平壌宣言」の実施を急ぐあまり、国会の同意もなくその批准に踏み切った。第2回米朝首脳会談が来年に持ち越されるとの状況で、金正恩からの督促に応じた結果だと推測される。
 しかし文大統領は盧武鉉政権の秘書室長時代にはむしろ南北合意書の国会同意を強く主張し、昨年のTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)配置時には国会同意を口実に米国に抵抗し中国への配慮を優先した。
 文大統領は南北合意書の国会同意問題で完全に自己矛盾に陥った。この強引で辻褄が合わないゴリ押しに多くの韓国民はあきれており、野党自由韓国党も強く反発して憲法違反の嫌疑までかけている。

文大統領が23日に「板門店宣言の実現に向けた軍事合意書」を批准したことについて、野党・自由韓国党は24日「違憲だ」として憲法裁判所に権限争議の審判を、またソウル行政裁判所に効力停止の仮処分を申し立てる方針を固めた。

 文大統領が北朝鮮支援に没頭している間、国民の生活と直接つながる韓国経済は、所得主導成長政策の犠牲となり、全分野にわたって悪化を続けている。現在なんとか好調を維持している輸出分野にも赤信号が灯り始めた。貿易黒字のほとんどが対中輸出であるため、米中貿易戦争の煽りを受け間もなく減速していく状況にある。すでに3四半期の輸出成長率は、対中輸出を除けば、ほとんど0に近い。
 こうした危機的状況に韓国株価はストレートに反応している。米国株の暴落がキッカケとなり韓国株式指数KOSPI(コスピー)は10月だけで13%強も下落した。これは2011年の大暴落を大幅に上回る下落率である。

1、韓国株価、10月に入って13%強下落

 文在寅政権の経済失政が内外不安要因と重なって韓国株式市場を恐怖に陥れている。
 10月23日のKOSPI(韓国総合株価指数)は前日比55.61ポイント(2.57%)下落し、2106.10で取引を終えた。かろうじて2100ポイントラインを維持したが、24日には日本と上海株価が上昇したにも関わらず、引き続き下落し2097.08ポイントと2100ポイントを割り込み昨年2月以降1年8カ月ぶりの安値を記録した。それでも下げは止まらず、25日にはニューヨーク株式とアジア株の下落に影響されて続落、2063.30ポイントとなり、26日にはさらに2027.15まで下落した。
 10月1日(2338.88)から26日までのKOSPIの下落幅は311.73ポイントで下落率は13.33%に及んだ。KOSDAQ(コスダック)はさらに大きく19.36%も下落した。KOSPIの1月から9月までの指数下落幅が124ポイントであることを考慮すると、10月の株価下落は暴落と言っても過言ではない。
 1カ月間のKOSPI下落率のこれまでの最高値は2011年8月(11.86%)だったが、それを大幅に塗り替えたことになる。 特に目立ったのは外国人の売りだった。

離脱する外国人、強まる「セルコリア」

 コスピとコスダック合わせて昨年は10兆ウォン近く買い越していた外国人投資家が今年に入って10月18日現在5兆265億ウォンを売り越している。
 10月だけを見ると、24日までコスピ市場で3兆2524億ウォン、コスダック市場で7680億ウォンを売り越した。コスピ200先物の累積売り越し額も1兆1726億ウォンとなった。合計5兆1930億ウォンの外国人資金が逃げ出したのだ。コスピは25日にも3000億ウォン、26日には1770.9億が売り越された。もちろんコスダックも大量の売り越しとなった。これは2010年以来最大規模の売り越しである。
 中央日報が16日に実施した緊急アンケート調査で、KB証券は株式市場の見通しをしばらく保留するとして株価指数の予測値を提示しなかった。予想するのも難しい状況ということだ。
 さらに大きな問題は、この「寒い冬」がしばらく続く可能性がある点だ。世界株式市場は新興国の危機などにより明確に調整局面の兆候を見せていたが、米国株の好調で持ちこたえていた。今回の米国株式市場の急落が本格的な下落への転換を意味する場合、文政権の経済失政が重なる韓国株式市場は「厳冬」となる可能性が高い。

ウォン安の流れも加速

 為替市場でも不安定な値動きが見られる。4月以降、ウォン安ドル高が続いてきたが、10月に入ってこれが加速する様相を見せている。1月から9月まで韓国ウォンは対米ドルで42.5ウォン値下がりしただけだった。ところが10月に入ってからはすでに26.6ウォンもウォン安ドル高が進んだ(23日基準)。
 韓国と米国の金利逆転幅が拡大している点も懸念される。現在の韓国の政策金利は1.5%、米国は2.0-2.25%だ。政策金利の逆転幅は0.75%にのぼる。米国は今年、政策金利を2回も引き上げ、さらに12月の利上げを予告している。しかし韓国銀行(韓銀)は今年、政策金利を一度も引き上げていない。景気が悪いために引き上げられないのだ。
 韓米間の金利の逆転幅が拡大するにつれ債券市場でも外国人資金の流出が目立っている。8月までは流入だったが、9月に雰囲気が変わった。9月に1兆9000億ウォンが離脱し、10月に入ってからも23日までに1兆3000億ウォンが流出している。外国人が債券市場から離脱すれば市場金利が高まり、これがまた金融不安を増幅させるという悪循環をもたらすことになる。

2、韓国株式暴落の根底に韓国経済の悪化

 韓国における金融不安の根低には、外的要因もあるが韓国経済の景気悪化がある。今年上半期の経済成長率は2.8%(目標値は3%)と集計された。ところが下半期に入って景気はさらに失速している。韓国中央銀行は下半期、成長率を2.7%に下方修正した。来年の成長率予測値も2%台半ばに低めている。

1)韓国製造業、第4四半期にはさらに悪化…順調だったIT・家電・精油も低迷

 大韓商工会議所によると(10月14日)、今年の第4四半期における製造業の景気展望指数(BSI・Business Survey Index)は75となり、前四半期より12ポイント下落したことが分かった。BSIが100以上あればこの四半期の景気感触が前四半期より肯定的と判断する企業が多いということだが、この指数が100を下回れば景気を否定的に捉える会社が多いという意味だ。BSIが80以下に落ちたのは昨年第1四半期以降初めてだ。
 業種別では化粧品(108)・医療精密機器(102)など韓流産業を導く業種を除けば、いずれも体感景気が悪化した。自動車・部品(66)、機械(69)、鉄鋼(70)、造船・部品(70)など既存の脆弱業種はもちろん、相対的に景気が良いと評価された情報技術(IT)・家電(73)、精油・石油化学(74)などにも否定的な雰囲気が優勢だった。
 問題は、国内企業10社のうち7社以上(72.5%)が、韓国経済の中・長期的な下降を予測していることだ。このままであれば、民間企業の投資や雇用拡大を期待することが難しくなる (中央日報日本語版2018/10/15)。

現代自動車ショック、76%の減益

 韓国経済の大黒柱・現代自動車が揺らいでいる。
 韓国の現代自動車が25日発表した2018年7~9月期連結決算は、営業利益が2889億ウォン(約284億円)と前年同期に比べて76%減少した。米国でのリコール費用がかさんだほか、エンジンの安全性を高める新技術の開発費用を一括計上したため。トルコやロシアなど新興国で為替がウォン高に触れたことも響いた。
 この数字はアジア金融危機の最中だった1998年(4.2%)より低く20年前の水準に戻ったことになる。

2)原油高、金利高で輸出にも陰り

 エネルギー経済研究院によると、韓国が輸入する原油の85%を占めるドバイ原油は2015年の1バレルあたり45ドル台から17日現在では80ドル前後となっている。韓国の原油輸入量(年間10億バレル)を勘案すると、1年間に油類費追加負担だけで例年より350億ドル(40兆ウォン)増えると予想される。エネルギーを全量輸入する構造上、原油価格が上がれば原材料単価が上がり、企業の輸出競争力が落ちる」とし「貿易黒字が減り、貿易収支が悪化することになる。
 より大きな負担はこうした原油高が今後も続く点だ。米国のイラン制裁のため来月から原油の供給が減少すると予想される。さらに新しい米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)妥結で石油の需要が増えるという期待感もある。
 米国発利上げも韓国の輸出にマイナスだ。最近、韓国貿易協会は「米国の相次ぐ利上げは新興国の金融市場を不安定にし、デフレ発生など実物経済にマイナスの影響を与える」とし「韓国の輸出にも負担となる可能性が高い」と分析した。
 韓米間の金利差が広がり、外貨資金流出の懸念が強まると、国内でも「利上げすべき」という意見が出ている。問題は利上げが及ぼす影響だ。韓国銀行(韓銀)は「金利ジレンマに陥っている」と述べた。
 ウォン安に誘導しで輸出を促進することも困難な状況だ。不景気の上に物価高までもたらすからだ。そうなれば文在寅政権は持ちこたえられなくなる。不況の中の物価高(スタグフレーション)というシナリオは絶対避けなければならないのだ。

3)雇用は依然として深刻

 月別雇用率は長期間下り坂となっている。先月の雇用率は61.2%となった。1年前の同月より0.2%ポイント落ちた。前年同月に比べて2月から8カ月連続で減少した。やはり金融危機による影響があった2008年1月から2010年3月まで下落傾向を続いて以降最も長い下降線だ。経済協力開発機構(OECD)の比較基準である15~64歳の雇用率も先月66.8%から1年前より0.1%ポイント下落した。4カ月連続で減少した。
 毎月30万人前後だった就業者数の伸びが8月には3000人にまで減少した。税金54兆ウォンを投じてこの結果だ。9月にはマイナスに落ち込む危険性があったので、統計庁の責任者まで交代させ統計数字を好転させようとしている。事実上の統計操作であり、政府の対策とは言い難いお粗末さだ。
 慌てた韓国政府は、政府系企業、公共機関などを総動員し、短期の雇用約3万人分を創り出す方針だという。政府の傘下機関、政府系企業、さまざまな協会、外局などに期間2カ月から1年の臨時職、インターン、アルバイトなどを募集させる内容だ。企画財政部(省に相当)の主導で雇用労働部、国土交通部などオール政府で取り組み、傘下機関に採用実績を機関トップの評価に反映すると公文書で圧力をかけている。既に韓国土地住宅公社(LH)、韓国鉄道公社(KORAIL)、韓国農漁村公社などが「賃貸住宅探し補助員」「体験型インターン」といった名目で数千人規模のアルバイト採用を始めた。
 「見せかけ雇用」には、巨額の税金がつぎ込まれている。韓国政府は昨年、追加補正予算11兆ウォンを投じ、6万7000人分の雇用を創出したというが、その半数が60代のアルバイトだった。保育施設での奉仕活動や一人暮らしの高齢者の安否確認、ごみ拾いなどで日当を受け取る期間数カ月の雇用に税金を数兆ウォンをばら撒いた。
 ソウル市が今年上半期に創出したという5000人の雇用も禁煙区域監視といった日当4万5000ウォンの「高齢者バイト」が大半だった。政府の評価を受ける公共機関はアルバイト募集競争を展開している。韓国南東発電は5万人、山林庁は2万人の雇用を創出すると言っている。支援が途切れれば消えてしまう見せかけの雇用創出競争だ。
 雇用は税金ではなく、新たなビジネスが生み出すものである。しかし韓国政府は正攻法を捨て、税金ばらまきという誤った処方を続けている。最低賃金を急激に引き上げて結局若者が仕事を追われる結果を生んだ。そればかりではない非正規職員を正規職員に転換させる愚策で新規採用を減少させただけでなく、労働組合の横暴を許し、ソウル地下鉄のように雇用の世襲化まで許す結果をもたらしている。
 韓国統計庁によると(10月14日)、今年第3四半期の15歳以上雇用率は61.1%となった。1年前の同期間より0.3%ポイント下落した。金融危機による影響があった2010年第1四半期(0.5%ポイント下落)以降最も大きく落ちた。
 失業者数は減る兆しが見えない。今年第3四半期の失業者数は106万5000人だ。第3四半期を基準として1999年以降最も多い。月別失業者は先月まで9カ月連続で100万人を上回った。

3、南北「非核化ショー」の賞味期限は切れつつある

 文在寅大統領は最近青瓦台でかんしゃくを連発しているという。経済悪化もさることながら金正恩の「非核化ショー」が終わりつつあるからだ。核兵器の申告もせず「終戦宣言」勝ち取り、制裁緩和を手にして一気に米国を追い込もうとした金正恩の作戦は見破られつつある。
 「板門店宣言」と「米朝シンガポール首脳会談」で順回転していた「文・金共同作戦」は、いま逆回転しつつある。それは「平壌首脳会談」後文大統領の北朝鮮に与する「前のめり」があまりにも露骨なためだ。
 「非核化ショー」を材料にトランプ大統領を引き込み、窮地に陥った独裁者金正恩のイメージチェンジを図り、「平和ショー」で韓国国民をたぶらかして北朝鮮に大々的経済支援を与え、一気に「南北連邦制」へと進もうとした「金正恩の男」文在寅の「野望」は潰えつつある。
 トランプ大統領も文在寅大統領の「前のめり」に警戒感を強め始めており、金正恩に対する期待と興味も冷めつつある。明らかに6月の興奮状態とは異なる。金正恩のトランプ大統領に示した「北朝鮮の利権」というニンジンも、中国問題、ロシア問題、中東問題の台頭で効果が減殺されつつあるようだ。ヨーロッパ歴訪での「対北制裁緩和」要請が各国首脳からことごとくはねつけられたことも文政権に大きな打撃となった。
 文在寅の焦りはいま様々な逆風を呼び起している。あまりにも韓国憲法と法を無視して北朝鮮に与するからだ。ついには市民団体(文在寅与敵罪共同告発国民運動本部)から「与敵罪」(韓国刑法93条)で告発される有様だ。
 この文在寅政権にとどめを刺すのはいま進行中の韓国経済の危機であろう。韓国経済がこのまま奈落の底に落ちていけば、文政権のかかげる「平和と繁栄政策」は欺瞞であったことが暴露される。国民をいつまでもだまし続けることはできない。その兆候はすでに保守系の「ユーチューブ放送」視聴者が急拡大している所に表れている。
 韓国の世論調査会社リアルメーターが15~19日に調査し10月22日に発表した文在寅大統領の支持率は前週より1.5ポイント低い60.4%で、3週連続の下落となった。不支持率は1.6ポイント上昇の33.0%。
 23日から25日に調査され26日に発表され韓国ギャラップの調査では支持率は58%まで下落した。平壌首脳会談後の支持率上昇分は1カ月で消えつつある。

以上

 
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